「殺虫スプレーだけでは、どもならんやろなあ」
薬局のおばちゃんは、首にかけたタオルで汗を拭きながら言った。
商店街の薬局は冷房が効いていない。半分開け放したドアのせいか、エアコンそのものの効きが悪いのか、その両方のせいなのかは分からない。
薬局のおばちゃんは、首にかけたタオルで汗を拭きながら言った。
商店街の薬局は冷房が効いていない。半分開け放したドアのせいか、エアコンそのものの効きが悪いのか、その両方のせいなのかは分からない。
「ちょっと、見せてみい」
調剤室に居たおっちゃんが、体のあちこちをボリボリ掻いている須磨と千歳に言う。
庶民的な空堀商店街の薬局ではあるが、部室ではない。いちばん被害の多いマタグラや胸などを見せるわけにはいかないので、腕の裏側を見せた。
「あ~~~これは虱とダニの混成部隊にやられとるなあ……あんたは3か所、こっちのお嬢ちゃんは4か所……腕でこれだけやから、服で隠れてるとこはもっとやろなあ」
おっちゃんの一言で、ムヒでおさまっていたあちこちの痒みが蘇ってくる。
「ああ、カユカユ……」
痒みは広がって、2人は頭まで掻き始めた。
「ちょっと、頭かしてみい」
2人は、おっちゃんおばちゃんにヌソーっと頭を差し出す。
「毛虱やなあ……ほれ」
おばちゃんは、櫛ですくったそれを見せた。
「「ギョエー!!」」
赤い芥子粒のようなのを見て、2人は店の外まで逃げ出した。
調剤室に居たおっちゃんが、体のあちこちをボリボリ掻いている須磨と千歳に言う。
庶民的な空堀商店街の薬局ではあるが、部室ではない。いちばん被害の多いマタグラや胸などを見せるわけにはいかないので、腕の裏側を見せた。
「あ~~~これは虱とダニの混成部隊にやられとるなあ……あんたは3か所、こっちのお嬢ちゃんは4か所……腕でこれだけやから、服で隠れてるとこはもっとやろなあ」
おっちゃんの一言で、ムヒでおさまっていたあちこちの痒みが蘇ってくる。
「ああ、カユカユ……」
痒みは広がって、2人は頭まで掻き始めた。
「ちょっと、頭かしてみい」
2人は、おっちゃんおばちゃんにヌソーっと頭を差し出す。
「毛虱やなあ……ほれ」
おばちゃんは、櫛ですくったそれを見せた。
「「ギョエー!!」」
赤い芥子粒のようなのを見て、2人は店の外まで逃げ出した。
「まあ、とりあえず、これだけのもんがあったらええやろ!」
おばちゃんが渡してくれたレジ袋には12畳用のバルサン2個、そしてアタマジラミ専用のシャンプーにアタマジラミ専用の梳き櫛まで入っていた。そして、ダニ・虱駆除のダンドリもていねいに教えてもらい、学校に帰った。
「来週、事務所と技能員さんが入って調査してくれるて」
部室に帰ると、学校に掛け合ってくれた啓介が戻ってきて報告してくれた。
「来週まで待ってたら、血を吸いつくされちゃうわよ」
演劇部の3人は、即応対処組と学校掛け合い組に分かれて対応していた。どちらかが無駄でも効果が出るように心掛けたのだ。カイカイ被害が出てから30分のことである。状況判断力と行動力が高いといえるのだけれど、まだ3人に自覚は無い。
「よーし、もう部室に残したもんはないなあ!?」
敵陣地に爆薬を仕掛けるヒーローのように啓介が台詞をきめた。
「ラジャー!」
ダニ用シャンプーで髪を洗い、ジャージ姿でスタンバイしている須磨と千歳が返事する。なぜジャージ姿かというと、制服にもダニが付いている可能性があるので、脱いで部室の中に置いてある。
「ほんならいくぞ!」
啓介は、規定量の水を入れた専用の外缶に薬剤の入った内缶をセット、直ぐに煙が噴き出した。
「退避! 退避!」
3人は、直ぐに部室を出て、ドアを閉めた。
「スゴイ煙だねえ!」
窓から見える室内を見て感嘆の声が上がる。
「これで、ミッションコンプリートやなあ……」
自分の後ろをエンドロールが流れていくような気がした啓介。
しかし、演劇部ダイハードは終わっていなかった。
「啓介せんぱい……なんで制服のままなんですか?」
「え?」
「やだ、制服もバルサンするって言ったじゃない!」
「いや、ついウッカリ……」
「もう、ダメじゃん! 千歳、いくわよ!」
「ええ、須磨ちゃん先輩!」
「「いっけー!!」」
「うわー、やめろって! 押すんやない!!」
2人は、声を揃えて啓介を部室に放り込み、鍵をかけた上でドアをパックテープで目張りした。
10秒たらずの早業であった。
おばちゃんが渡してくれたレジ袋には12畳用のバルサン2個、そしてアタマジラミ専用のシャンプーにアタマジラミ専用の梳き櫛まで入っていた。そして、ダニ・虱駆除のダンドリもていねいに教えてもらい、学校に帰った。
「来週、事務所と技能員さんが入って調査してくれるて」
部室に帰ると、学校に掛け合ってくれた啓介が戻ってきて報告してくれた。
「来週まで待ってたら、血を吸いつくされちゃうわよ」
演劇部の3人は、即応対処組と学校掛け合い組に分かれて対応していた。どちらかが無駄でも効果が出るように心掛けたのだ。カイカイ被害が出てから30分のことである。状況判断力と行動力が高いといえるのだけれど、まだ3人に自覚は無い。
「よーし、もう部室に残したもんはないなあ!?」
敵陣地に爆薬を仕掛けるヒーローのように啓介が台詞をきめた。
「ラジャー!」
ダニ用シャンプーで髪を洗い、ジャージ姿でスタンバイしている須磨と千歳が返事する。なぜジャージ姿かというと、制服にもダニが付いている可能性があるので、脱いで部室の中に置いてある。
「ほんならいくぞ!」
啓介は、規定量の水を入れた専用の外缶に薬剤の入った内缶をセット、直ぐに煙が噴き出した。
「退避! 退避!」
3人は、直ぐに部室を出て、ドアを閉めた。
「スゴイ煙だねえ!」
窓から見える室内を見て感嘆の声が上がる。
「これで、ミッションコンプリートやなあ……」
自分の後ろをエンドロールが流れていくような気がした啓介。
しかし、演劇部ダイハードは終わっていなかった。
「啓介せんぱい……なんで制服のままなんですか?」
「え?」
「やだ、制服もバルサンするって言ったじゃない!」
「いや、ついウッカリ……」
「もう、ダメじゃん! 千歳、いくわよ!」
「ええ、須磨ちゃん先輩!」
「「いっけー!!」」
「うわー、やめろって! 押すんやない!!」
2人は、声を揃えて啓介を部室に放り込み、鍵をかけた上でドアをパックテープで目張りした。
10秒たらずの早業であった。