あすかのマンダラ池奮戦記・後半
イケスミ 下手をして師走にもつれこむと、鬼が出始めるぞ。
フチスミ いや、もう出始めている。時々地震もおこらないのに、土が崩れるような音がするだろう?(彼方で音)ほら……水没したとはいえ、ここはトヨアシハラミズホノオオガミさまの住まわれる聖地、しかも留守とあっては禍つ神どもにとって、鍵の開いた金庫も同然。あの音は結界に禍つ神が触れる音。
イケスミ 結界が破られているのか?
フチスミ 今のところは無事、でも、時間の問題、北と南に集まり始めている。一人で二正面の戦いは苦しかった。
イケスミ あたし……でもどりが親のスネカジリにもどってきたつもりなんだけど……
フチスミ それはないでしょ!?
イケスミ だってね……
フチスミ だってもへちまもないわよ。いいこと、このミズホノサトを奪われたら、わたしたち住むところないのよ。イケスミさん、あなた、東京の万代池もほっぽらかしてきたんでしょ!?
イケスミ だって、あそこはもう埋め立てられっちまうんだよ! 池の神が池を失ったら、もう存在理由ないでしょ? アイデンテイテイ、レーゾンデートルの問題よ。
フチスミ だからがんばるのよ! わたしなんか依代の方が元気で、どっちがとりつかれてんのか……
あすか ね、あそこ、学校があったんじゃない?
イケスミ え?(話を中断されたようで、少し機嫌が悪い)
フチスミ よくわかったわね。ポールが突き出ているだけなのに。
あすか あのポール、卒業記念に、中学に残してきたやつといっしょみたいだから。あたしが選んだんだよ。生徒会の役員やってたから。
フチスミ へえ、あすかちゃんて偉いんだ。
イケスミ 東京の中学の生徒会役員なんて、手ェあげたらだれでもなれんの。
あすか もう、ちゃんと対立候補を大差でやぶって当選したんだかんね。
フチスミ 村立伴部小中学校、この依代の子が通っていた学校。この子も卒業記念品の選定委員やってたんだよ。
あすか そうなんだ! あのポール、特注品で高いんだよね頭のところに校章がついていて、夜になると、太陽電池の明かりが照らすようにできてんの。校章とポールの間に発光ダイオードとか入ってて……
フチスミ 日によって色が変わるんだよね。
あすか うん、うちは月曜が赤「ファイトオッ一発がんばるぞ!」ってんで、ヘヘ、学校にゴマスリのハッタリだけどね。
フチスミ ここは田舎だから、日めくりの色どおりに日曜が赤、あとはアンケートとって多い順。
あすか あら民主的……うちは、あたし一人で全部きめちゃった。
フチスミ すごいのね……
イケスミ 誰も興味ないんだよ、あすかの学校じゃそういうことにはさ。
あすか そういうこと言う?
イケスミ でも、そうなんだろ?
あすか ……そりゃ、そうだけどさ。
フチスミ あのポールの校章、今でも光るんだよ……フフフ、今日はオレンジ。給食にミカンのつく日だったから、一番に決まったの。
イケスミ あなた……名前はなんて言うの?
フチスミ え?
あすか ?(不思議そうに二人の顔を見る)
イケスミ 依代、あんたのことよ。普通神さまがとりつくと、依代の意識は眠っちまうんだ。な、そうだろあすか、ここへ来るまでのことちっとも憶えてないだろ?
あすか ……うん、「ミッションスタート!」でとぎれて……
イケスミ スカートめくって太ももあらわにして、長距離トラックのりついだことなんか憶えてないよな?
あすか え……そんなことしたの!?
フチスミ フフフ、そうよ、この子の意識は起きている。だから、スカートめくってヒッチハイクなんて、とてもやらせてはもらえないけど。
イケスミ で、名前は? 依代をしながら意識が醒めているなんて、ただ者じゃないわ。
フチスミ 桔梗、天児桔梗(あまがつききょう)
イケスミ 天児……!
あすか アマ、アマガツ……?
イケスミ 天国の天に鹿児島の児と書くんだ。伴部村の神社の子だね?
フチスミ 社は二十年前の台風で倒れて、それっきりだけど、この子のお父さんが、映画のセットみたいな代用品を建てて細々とやっていたんだけどね……そのお父さんの神主さんも、今度の地震で……
あすか 他に家族は……?
イケスミ 天涯孤独……一人ぼっちって意味さ。
あすか どうして、イケスミさんにわかるの?
イケスミ その桔梗って子、身を投げにきたんだね、フチスミさんの花ケ淵に……
フチスミ よくわかったわね、二人だけの秘密だったのに。
イケスミ イケスミだよあたしは。意識が起きてさえいりゃあ、なんだってお見通し。依代になりながら起きているなんて、天児の子とは言え、本当は強くて賢い子なんだね。
フチスミ ……繊細で賢い子。だから、新しい町や学校にもなじまず、死のうと思った。
あすか あの……繊細で賢い子だと、どうして、なじめずに死のうと思っちゃったりするわけ?
イケスミ だって、あんたはなじんでるでしょ、町にも学校にも?
あすか うん、あたしは バカでガサツで弱虫なわりにお調子者で……
イケスミ でしょ。万代池が無くなるのに死のうなんて思わないしさ……
あすか ちょ、ちょっと!
イケスミ ごめん、ちょっとひがんでみただけ……
フチスミ 桔梗は、このあたりでただ一人わたしの依代になれる素質を持った子だった。
あすか ソフトとハードの関係だね。あたしとイカスミさんみたいに。
イケスミ イケスミだっつーの。
フチスミ その桔梗が、廃村の二日後、たった一人でわたしのところへやってきた。これは運命だと思った。この子もね……二人でそう感じた時、わたしは溺れているこの子にのり移っていた……その時……
あすか その時?
フチスミ かすかにオオガミさまの声が聞こえたような気がした……
イケスミ はるか出雲から、オオガミさまの声が……
フチスミ 見とどけよ……とおっしゃった。
イケスミ 何を見とどけよと?
フチスミ おもどりになるまでのこと、それしかないわ。
あすか でも、もう十一月も末だよ。
イケスミ どういう意味だ?
あすか ……もう帰ってこないんじゃ……だって何もかも水の中に沈んでしまって、変な不良の神さまたちもここをねらってるみたいだし……(彼方で崩れる音)
イケスミ 神さまは嘘は言わない。
あすか でも、もどってくるとは言ってないんでしょ。出雲に行ってくるとだけ、そしてかすかに、見とどけよと、そう言っただけでしょ?
イケスミ 神無月を過ぎて、神々がもどられなかったことなどない!
あすか だって、まだもどってこないじゃないか!
イケスミ ……
あすか 先生だって、トイレにたったきり職員会議にもどらない人がいる。生徒の大事な進路を決める職員会議にだよ!
イケスミ 学校の教師ごときと神さまをいっしょにするな! 神さまを信じろ!
あすか だって、イカスミさんだって、マンダラ池を見捨てたじゃないか、二度ともどってきやしないんじゃないか!
イケスミ 勝手なことを申すな!!
両手をつかって気をとばすイケスミ、数メートルふっとび、地面に体を打ちつけられるあすか。
あすか ……イカスミ……
イケスミ あたしの名はイケスミだ、二度とまちがえるな。
フチスミ この子は恐ろしいんだ、いろんなことが……もうもどしてやった方がいい。そんな顔してると禍つ神になってしまうわよ。
イケスミ ……そうだ、そうだったな。ここまで連れてくるだけの約束を、ついひっぱり過ぎたな。すまんあすか……ほら、約束の成績票。
あすか あ、ありがとう……!?
フチスミ どうかした?
あすか オ、オール五だ……あたし、こんなには賢くないよ。
イケスミ あすかの頭も、それにあわせてよくなっている。
あすか ほんと?
イケスミ フチスミさん、なんか問題言ってやって。
フチスミ うーん……じゃ、微分方程式ってなーんだ?
あすか 未知関数の導関数を含んだ方程式。未知関数が一変数のとき、常微分方程式といい、多変数のとき偏微分方程式という……え?
フチスミ 和文英訳「日本語のおはようは、英語のグッドモーニングと同じです」くりかえそうか?
あすか ううん「オハヨウ イズ ジャパニーズイクォリティー トウ ジイングリッシュグッドモーニング」……おお!?
フチスミ 古文法、推量の「ら」を用いた著名な和歌は?
あすか 春すぎて、夏きたるらし白妙の、衣干したり、天の香具山……万葉集巻一、持統天皇の御製。ちなみに持統天皇、名はタマノハラノヒメ、またはウノノサララ、天智天皇の第二皇女で天武天皇の皇后、草壁皇子没後即位、第四十一代の女帝。ちなみに神田うのの「うの」は、このウノノサララからきている……すっげえ!
イケスミ な、賢くなったろう。
あすか ありがとう、頭の中に百万個電気がついたみたい。
フチスミ ちょっと甘すぎない?
イケスミ 同じ学校受けられる水準にはしといてやらないとな、真田ってイケメンと。
あすか ああ、それないしょ、ないしょ!
フチスミ あははは……そうだったわね。
あすか え……?
イケスミ 神さまに内緒はつうじないからな。
フチスミ がんばってね。
あすか もう……!
イケスミ それから、その成績票、破いたり傷つけたりするなよ。
あすか うん!
イケスミ 元のバカにもどっちまうからな。
フチスミ 元のあすかちゃんも悪くないわよ。
あすか もう、フチスミさんたら。
フチスミ ……南東のケモノ道がまだ無事のよう。まだ日が高いから、少し教えてあげれば一時間で轟って街につく。
あすか トドロキ……
イケスミ このへんにしては大きな街だからすぐに、駅が見つかる。特急に乗れば一時間ちょっとで東京。ほれ、電車賃……バカ透かすんじゃない本物。木の葉なんかじゃないからね。
フチスミ 南の方はまだ息をひそめているけど、北の禍つ神達が雑魚のように群れはじめている。その藪の中に武器が隠してある。間に合わないときは、それで始めといて。さ行こうあすか、こっちよ。
あすか うん、ありがとう、じゃ、イケスミさんも、どうぞ無事でね! 死んじゃやだよ……!
あすか、フチスミにいざなわれ上手に退場、イケスミ一人残る。
イケスミ 心配すんな、まかしとけ!……あいつ初めて正しくイケスミって言ったな……神さまは死なねえよ……ただ変にひねくれちまって(北の方角をにらむ)ああいう禍つ神になっちまう奴がいるけどな……(北の彼方で禍つ神達の気配。イケスミ、そこに一瞥をくれると藪を探る)なるほど、さすがフチスミ、どう見ても竹や、枝の切れ端だけど、みんな鋭い殺気がこもっている。ロケット弾、重機関銃並のものまであるじゃないか……このへんが手ごろ……(ふりむきざまに、手ごろな小枝をとり意外に近くの北の空をめがけて撃つ。機関銃のような音と手応え。奇声を発して、鳥のように禍つ神の落ちる音)けっ……意外に近くにやってきている……(続いて撃ちまくる)
フチスミが、上手から転がり出るように駆けもどり、たった一人の戦闘に加わる。手ごろな武器を持ち二人で撃ちまくる。
フチスミ 以外に近くに来ているようね!
イケスミ あすかは無事に!?
フチスミ ええ、無事に道を見つけた。向こうはまだ安全だった!
イケスミ それはよかった。でも、その分、こっちに集中しまくってるみたいよ!
フチスミ 数が多い……
イケスミ でも、よく用意しといてくれたよ。これだけの禍つ神にいちいち手づくりの気を飛ばしていたら、体がもたないよ!
フチスミ 鬼岩に封じ込めてあった鬼の気を、枝や竹の切れ端にこめておいたの!
イケスミ それで鬼岩の気が弱くなっていたのか!
フチスミ その奇数番号の太い竹を撃ってみて。オートの百連発だから……!
イケスミ よっしゃ!
三番のオートを撃ちまくるイケスミ、花火大会のクライマックスのように盛大に盛り上がり、急速に静寂がおとずれる。二人とも、ざんばら髪に制服姿も痛々しげに乱れている。やがて、イケスミが腰を抑えてくずおれる。
フチスミ なんとか、やっつけたみたいね……
イケスミ でも、この百連発は腰にくるよ……
フチスミ うん、だからイケスミさんにまかせたの。
イケスミ あのなあ……
フチスミ わたしの華奢な体じゃ、扱えないもの。
イケスミ だって、依代についてんでしょ。多少の無理は……
フチスミ 桔梗に負担はかけたくないの。
イケスミ あたしたちはね、そのために依代についてんのよ。依代につくから、このサトから出ることもできるし、サト中じゃ依代につくことで何十倍もの力を発揮できるんだよ。
フチスミ でも、依代にも負担がかかるんだよ。
イケスミ だから、そこはギブアンドテイク。だからあすかだって……
フチスミ 桔梗は、今度の地震で、お父さんを亡くして天涯孤独の身なのよ。ダメージあたえたくない……それに桔梗って、おとなしそうに見えて、けっこう戦闘的な子なの、そんなの持たせたら、どこまでやるかわからない。奇数番号のオート持てるだけ持って自爆さえしかねない子よ。ほら、もうわたしの支配から離れて、勝手に動こうとしている……だめよ桔梗、全てをわたしにゆだねなければ(桔梗を封じ込めるように身もだえする)
イケスミ あすかの半分も要領かませればねえ、もっと気楽に世の中渡っていけるのにねえ……
フチスミ わたし、桔梗も好きだけど。あすかって子のハッキリしたところも好きよ。
イケスミ ハハ、イケメンコーチと同じ大学うけられてルンルンだろうね。でも、頭はともかく、あの器量だから、いずれふられちゃうだろうけどね。でも、あすかはそうやって成長……(何気なく自分の手を見て愕然とする)
フチスミ ……どうしたの?
イケスミ 手が……体が透けてきた。結界がほころび始めているんだ。今日一日もたない……二、三時間で消えてしまうかもしれない……!
フチスミ 気を強くもって!
イケスミ もう少し……
フチスミ もう少し?
イケスミ もう少し、あすかを足止めしておくべきだった、依代さえいれば……そうだ、ふんぱつして惚れ薬で彼氏の心をとりこにするぐらいのことを……
フチスミ バカ!(イケスミをはりたおす)
イケスミ ……なにすんのよ!?
フチスミ あなたに欠けているのは信じる心よ。必ずオオガミさまはおもどりになる! けして、この里をトヨアシハラミズホノサトをお見すてになったりしない!
イケスミ だって……
フチスミ 霜月を過ぎて、まだたったの三週間あまり……きっとおもどりになる。あなたもさっきそう言ってたじゃない。だから、あの禍つ神達も恐れてる。一気に力攻めにはしてこない、ゲリラのように小攻めに……
イケスミ 今のが小攻め?
フチスミ ……中攻め、威力偵察ね。ちょっと強めにあたって、相手の強さを知る。
イケスミ 思い知っただろうね、ほぼ全滅にしてやったから。
フチスミ だから、しばらくは攻めてこないわ。
イケスミ そうだね。そして今度攻めてこられたら、今度はこっちが思い知る番ね(自分の透け始めた体を見て)わるいけど、やっぱニ三時間……良くて四五時間だな……
この時、上手の藪から、あすかが飛び出してくる。手には件のメモリーカードとコントローラーを握って。
あすか 言ったじゃないか、神を信じろって!
イケスミ あすか!?
フチスミ あすかさん!?
あすか 今の攻撃は威力偵察なんかじゃない。本格的な攻撃の陽動作戦に過ぎない。主力は南よ! 南に何か途方もなく禍々しい化け物が潜んでここを狙っている。南東の獣道を通っても、ひしひしと感じた!
イケスミ ほんとうか!?
フチスミ 言うとおりよ。北に気をとられすぎていた……南に化け物が……今、動き始めた!
あすか 話は聞いた。消えかかっているんでしょ、イケスミさん。もっかいやろうよ。ほら、コントローラーとメモリーカード!
イケスミ いいのあすか? 今度は命にかかわるぞ……?
あすか あたし賢くなったの。二人を見殺しにしても、あの南の化け物は、あたしを認識している。ここをあっさりかたずけたあと、きっとあたしを殺しに来る。知りすぎてしまったかから。そのためには、もっかい依代になって戦ったほうが生き残れる可能性が高い。そう計算できるほどにね……って理屈つけたら納得してくれる?
フチスミ アスカさん……
あすか さあ、コントローラーを持って! あたしはメモリーカードを……え!?
イケスミ どうかしたのか?
あすか これ、ドラクエⅧ「空と海と呪われし姫君」のメモリーカード……鞄の中でごちゃになったんだ……これは、ラチェットアンドクランクⅢ……ファイナルファンタジー……メタルギアソリッドスリー
……おっかしいなあ……
イケスミ おまえ、度はずれたゲーマーだな……
フチスミ だめ、もう、間に合わない!
ゴジラの咆哮のような禍つ神の叫び声が聞こえる。
あすか あれ、あいつよ南側に潜んでいた奴!
フチスミ 並みの禍つ神ではない……いずれの荒ぶる神か?
イケスミ ……あれ、轟八幡だよ。ほら、あの頭の鳥居。
フチスミ え、この国の二ノ宮の……(神の咆哮)なんとあさましいお姿に……
イケスミ 人間が、よってたかっておもちゃにしちまったんだ。駐車場の経営から、貸しビル、株の売買にスーパーの経営、観光会社に、このごろじゃ専門学校から塾の経営まで手を出しているって話だよ。
あすか あ、お母さんの言ってた轟塾!?
イケスミ この国の人間は、思いやるって心を失ってしまったんだ。人に対しても、神さまに対しても、自然や、何に対しても……祖先から受け継いだ夢も誇りも恐れも忘れ果てた、アホンダラに!
フチスミ 感想言ってる場合じゃないわよ。
あすか ね、あたしにも何かやらせて! こう持つの?(百連発の大筒を両脇に抱える)
フチスミ だめ、普通の人間が持っていたって、ただの竹筒……
あすか そんなのやってみなきゃ……(引き金を引いた気持ちになる。両脇から百発ずつの鬼の殺気のミサイルが飛び出す。反動でニ回転半ほどひっくりかえる)
イケスミ あすか……おまえって……
フチスミ 動きが止まった……
イケスミ ちょっと驚いただけさ、じきに……ほら動き出した(神の咆哮と地響き)
あすか くそ!
フチスミ 撃つしかないわ、最後まで!
イケスミ 撃て撃て撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!
三人しばらく撃ちまくる、地響きしだいに近くなる
イケスミ 弾が少なくなってきた……
フチスミ そろそろ桔梗とあすかちゃんを解放してあげたほうが……
あすか やだ! ここで逃げんのはやだ!
イケスミ あたしたちは踏まれても死なないけど、あんたたちは死ぬんだよ!
フチスミ 桔梗も離れようとしない!
あすか やだ! もうわけわかんないけど、やだ!!
この時、大きな白い矢がとんできて、轟八幡の胸板を射抜く(音と演技だけで表現)大音響とともに轟八幡が倒れる気配。
フチスミ オオガミさまだ! オオガミさまがもどられた!
あすか まぶしい!
イケスミ 笠松山の向こうから矢を射られたんだ!
あすか まぶしくて……
フチスミ 間もなく、笠松山を越えられる。それまでに、とどめをさそう!
イケスミ ああ、残った雑魚の禍つ神どももな。
フチスミ いくよ!
イケスミ おお!
あすか あ、ちょっと待って、あたしも……!
舞台前まで乗りだして、掃蕩戦にいどむ三人。笠松山からのオオガミを暗示する光などが戦斗音を残してフェードアウト(戦闘を表す歌とダンスになってもいい)やがて、戦斗音が土木機械の音に置き換わって明るくなる。もとのマンダラ池のほとり。手前にあすか、奥に桔梗が倒れている。
あすか ……ん……マンダラ池……埋立て工事が始まってる……夢おち?(桔梗に気づく)フチスミさん!? フチスミさん、しっかりしてフチスミさん!
桔梗 ん……あすかさん……ここは?
あすか マンダラ池、正式名称万代池、イケスミさんが住んでいたところ。大丈夫? 大丈夫だよね、神さまなんだからフチスミさんは。
桔梗 わたし、桔梗だよ。
あすか 桔梗さん? どうして?
ガードマンのオバサンの姿をしたイケスミが、軽くホイッスルをふきながら上手からくる。
イケスミ ダンプは北から、そうむこうね! ユンボこっち。土ゆるいからそこで停めといて。(二人に)そこあぶないから、こっちの方で話してくれる。ごめんなさいね。今日から工事始まっちゃうから……
桔梗 すみません。
あすか ども……
舞台中央で、ガードマンのイケスミと二人、交差。二人はイケスミに気づかない。
桔梗 オオガミさまももどられたし、フチスミさん、あそこを離れられないと思うの……
あすか そうか。ミズホノサトは廃村というか……沈んだまんまだし。桔梗さん、あそこに住むわけにもいかないんだ。
桔梗 万代池も、ひどいことになってしまってるのね……
あすか 時代の流れというのかね。あたしも長年……と言っても十数年だけど、万代池だなんて由来知らなかったからさ、マンダラ池だと思って、昨日なんか、ウンコふんづけちゃって、靴洗ってたりしてたんだ。
桔梗 靴洗っちゃたの、神さまの池で!?
あすか 知らなかったんだもん……でも、それでひらき直っちゃいけないんだよね。ごめんなさいって気持ち……持ってたんだけどね、ちゃんとあやまったんだよ……言っちゃあなんだけど、やっぱイケスミさんて、すねた神さまだったよね、それで、あたしをひっかけて依代にしちゃうんだから……今ごろはオオガミさまのスネしゃぶりつくしてんだろうね。ま、いいか、頭もよくしてもらったことだし……
桔梗 どっちもどっち、二人ともたくましい都会の神さまと人間。
あすか 桔梗さん。しばらくあたしの家にいなよ。三LDKだけど、三人家族だからもぐりこめるよ。
桔梗 そんなの悪いよ。わたしも子供じゃないんだから……
あすか そうしなって、ここへそろって送ってこられたのも、そういうおぼしめしだと思うの。
桔梗 だって……
イケスミ だってもあさってもなーい!
二人 え……!?
イケスミ まだ気がつかない?
二人 ……?
イケスミ あ・た・し(ヘルメットとタオルをとる)
あすか イケスミさん!
桔梗 どうかしたんですか!?
あすか てっきりスネかじってると思ってたのに……その姿?
桔梗 神さま廃業ですか?
あすか だったらお父さんに頼んでもっと時給のいいパート紹介してもらったのに。
桔梗 おいたわしい……
イケスミ 勝手にしゃべるな!
桔梗 だって……
あすか その姿……
イケスミ これは、池の最後を見届けるための方便だよ。
あすか ホーベン?
桔梗 ということは、まだ神さまでいらっしゃるんですね。
イケスミ あれから、オオガミさまに叱られてな。
あすか キャッチセールスみたいなことするからだろ?
イケスミ それもあるけど、ここを見捨てたことな……あすかもいってただろ?
あすか あれ、売り言葉に買い言葉。気にしないでくれる?
イケスミ 池があろうとなかろうと、そこに人が住んでいるかぎり逃げてきちゃいけないって。
あすか でも、人がいたって信者がいなきゃ。
イケスミ いるよ。あすかが信者一号、桔梗が信者二号だ、よろしくな。
桔梗 アハハ……でもフチスミさんは……
イケスミ あたしが兼任、元をたどればオオガミさまにたどりつくんだから、どっちの信者になっても同じさ。フチスミさんは、しばらくはオオガミさまと地元の復興……それから、あんたたちも、たどっていけば同じ一族なんだよ。
あすか え、親類!? あたしたちが!?
イケスミ あすかの元宮というのは、元宮司って意味で、天児一族の分家、三百年前にあたしといっしょにやってきた家系さ。
桔梗 でも、一族とは思いませんでした。
イケスミ さすがの桔梗にもわからなかったか?
あすか でも、親類だと思うとなんか嬉しいね。
桔梗 はい……でもお世話になるのは……
あすか 硬いこと言うなよ。
イケスミ あんたたちは双子の姉妹、二卵性の。そういうことにしといた。
二人 ええ!?
イケスミ 役所の書類もそうしといたし、親も友だちも、みんなそういうふうに思ってる。
あすか ええ、そんな……
イケスミ ミズホノサトは必ず人がもどってくる。水も少しずつひいて、もとの生活がね……でも、それには何十年もかかるだろう。それまで桔梗を天涯孤独の身の上にしておくのはかわいそうだ……これはオオガミさまのおぼしめしでもある……それとも、桔梗が姉妹じゃ、何か不足でもあるのかい?
あすか ないない。ねえ?
桔梗 え、ええ。
イケスミ そうときまれば、やることは一つだけ。
あすか え、なんかすんの?
イケスミ 双子でも、姉と妹の区別がいる。
あすか そりゃ、誕生日の早いほうが……
イケスミ バカ、双子の誕生日はいっしょにきまってるじゃないか。
桔梗 何をするんですか?
イケスミ ここから、自分の家まで、ヨーイドンで走る。先についた方が姉だ。いいね。
あすか ようし、足には自信が……
桔梗 わたしだって!
イケスミ それじゃ……(競技用のピストルを出す)ヨーイ……
あすか っと、その前に一つ聞いていい?
イケスミ なんだい、ずっこけちまうじゃないか!
あすか オオガミさまたちの出雲会議がさ……あんなに長引いた理由ってのは? よっぽど大事な議題なんでしょ?
イケスミ ああ、人と自然の将来に関わる大切な話をされていたのさ、ずいぶんもめたみたいだけどね。
あすか で、結論は?
桔梗 それは……
イケスミ こうして、あんたたちとわたしがいる。それが結論……と、いうことで納得しろ。
あすか こうして、あたしたちがいることが……
イケスミ それじゃいくよ、ヨーイ……っとその前に。
あすか なによ、ずっこけてしまうじゃないよ!?
桔梗 アハハハ……
あすか なによ!?
イケスミ 実は、あのオール五の成績票ね。
あすか そうそう、ごほうびの……(ポケットに手をやる)ない……ポケットのどこにもない!?
イケスミ 戦いの最中に、おっことしたんだよ。
あすか え?
イケスミ フチスミさんが拾ってくれた。そうだよね?
桔梗 え、ええ。
イケスミ それをあずかったのがこれ……
あすか ありが……とうに破れてるじゃん!?
イケスミ 戦いの最中だもん……
あすか じゃ、もとのあたしにもどったってわけ!? せっかく真田コーチと同じ学校いけると思ったのに……
桔梗 いいじゃない、受験までにはまだ間がある。今度は自分の力で。わたしも応援するから。
イケスミ じゃ、今度こそいくぞ。待ったなし……ヨーイ……ドン(本物の競技用がいい)
花道(通路)を本気で駆ける二人、見送るイケスミ。
イケスミ ……どっちが勝つにしろ、着いたころには、本当の姉妹と思い込んでいるはず、そういう魔法がかけてあるんだから……さあ、おまたせ、埋め立てるよ、ユンボはむこうから、ブルドーザーこっち、ダンプも前に進んで……(観客に)じっと観てないで拍手! おしまいだから幕はおろして……
イケスミ、まるで現場監督のようにホイッスルを吹き、埋め立ての指揮をとるうちに幕。(余裕があれば、キャスト、スタッフが出てきて、鳴り物入りでフィナーレにしてもいい。ラストのイケスミの台詞「じっと観てないで拍手」のあたりで)
作者の言葉
キザなようですが、現代日本人が失ってしまった何かを、コミカルファンタジーにして。考えるのではなく。感じてみるお芝居にしてみたつもりです。道具はあったほうがいいですが、クラブや劇団の状況にあわせて、無対象でもできるようにしてあります。イケスミは、言葉をちょっと変えると男でもやれます。劇団でやる場合、ボリュームに欠けるかもしれません。その時は、自分たちに合わせて脚色してもらってけっこうです。ただ、この芝居に限りませんが、必ず上演許可をとるようにお願いします。
【作者情報】《作者名》大橋むつお《住所》〒581-0866 大阪府八尾市東山本新町6-5-2《電算通信》oh-kyoko@mercury.sannet.ne.jp
上演されるときは、ご連絡ください
イケスミ 下手をして師走にもつれこむと、鬼が出始めるぞ。
フチスミ いや、もう出始めている。時々地震もおこらないのに、土が崩れるような音がするだろう?(彼方で音)ほら……水没したとはいえ、ここはトヨアシハラミズホノオオガミさまの住まわれる聖地、しかも留守とあっては禍つ神どもにとって、鍵の開いた金庫も同然。あの音は結界に禍つ神が触れる音。
イケスミ 結界が破られているのか?
フチスミ 今のところは無事、でも、時間の問題、北と南に集まり始めている。一人で二正面の戦いは苦しかった。
イケスミ あたし……でもどりが親のスネカジリにもどってきたつもりなんだけど……
フチスミ それはないでしょ!?
イケスミ だってね……
フチスミ だってもへちまもないわよ。いいこと、このミズホノサトを奪われたら、わたしたち住むところないのよ。イケスミさん、あなた、東京の万代池もほっぽらかしてきたんでしょ!?
イケスミ だって、あそこはもう埋め立てられっちまうんだよ! 池の神が池を失ったら、もう存在理由ないでしょ? アイデンテイテイ、レーゾンデートルの問題よ。
フチスミ だからがんばるのよ! わたしなんか依代の方が元気で、どっちがとりつかれてんのか……
あすか ね、あそこ、学校があったんじゃない?
イケスミ え?(話を中断されたようで、少し機嫌が悪い)
フチスミ よくわかったわね。ポールが突き出ているだけなのに。
あすか あのポール、卒業記念に、中学に残してきたやつといっしょみたいだから。あたしが選んだんだよ。生徒会の役員やってたから。
フチスミ へえ、あすかちゃんて偉いんだ。
イケスミ 東京の中学の生徒会役員なんて、手ェあげたらだれでもなれんの。
あすか もう、ちゃんと対立候補を大差でやぶって当選したんだかんね。
フチスミ 村立伴部小中学校、この依代の子が通っていた学校。この子も卒業記念品の選定委員やってたんだよ。
あすか そうなんだ! あのポール、特注品で高いんだよね頭のところに校章がついていて、夜になると、太陽電池の明かりが照らすようにできてんの。校章とポールの間に発光ダイオードとか入ってて……
フチスミ 日によって色が変わるんだよね。
あすか うん、うちは月曜が赤「ファイトオッ一発がんばるぞ!」ってんで、ヘヘ、学校にゴマスリのハッタリだけどね。
フチスミ ここは田舎だから、日めくりの色どおりに日曜が赤、あとはアンケートとって多い順。
あすか あら民主的……うちは、あたし一人で全部きめちゃった。
フチスミ すごいのね……
イケスミ 誰も興味ないんだよ、あすかの学校じゃそういうことにはさ。
あすか そういうこと言う?
イケスミ でも、そうなんだろ?
あすか ……そりゃ、そうだけどさ。
フチスミ あのポールの校章、今でも光るんだよ……フフフ、今日はオレンジ。給食にミカンのつく日だったから、一番に決まったの。
イケスミ あなた……名前はなんて言うの?
フチスミ え?
あすか ?(不思議そうに二人の顔を見る)
イケスミ 依代、あんたのことよ。普通神さまがとりつくと、依代の意識は眠っちまうんだ。な、そうだろあすか、ここへ来るまでのことちっとも憶えてないだろ?
あすか ……うん、「ミッションスタート!」でとぎれて……
イケスミ スカートめくって太ももあらわにして、長距離トラックのりついだことなんか憶えてないよな?
あすか え……そんなことしたの!?
フチスミ フフフ、そうよ、この子の意識は起きている。だから、スカートめくってヒッチハイクなんて、とてもやらせてはもらえないけど。
イケスミ で、名前は? 依代をしながら意識が醒めているなんて、ただ者じゃないわ。
フチスミ 桔梗、天児桔梗(あまがつききょう)
イケスミ 天児……!
あすか アマ、アマガツ……?
イケスミ 天国の天に鹿児島の児と書くんだ。伴部村の神社の子だね?
フチスミ 社は二十年前の台風で倒れて、それっきりだけど、この子のお父さんが、映画のセットみたいな代用品を建てて細々とやっていたんだけどね……そのお父さんの神主さんも、今度の地震で……
あすか 他に家族は……?
イケスミ 天涯孤独……一人ぼっちって意味さ。
あすか どうして、イケスミさんにわかるの?
イケスミ その桔梗って子、身を投げにきたんだね、フチスミさんの花ケ淵に……
フチスミ よくわかったわね、二人だけの秘密だったのに。
イケスミ イケスミだよあたしは。意識が起きてさえいりゃあ、なんだってお見通し。依代になりながら起きているなんて、天児の子とは言え、本当は強くて賢い子なんだね。
フチスミ ……繊細で賢い子。だから、新しい町や学校にもなじまず、死のうと思った。
あすか あの……繊細で賢い子だと、どうして、なじめずに死のうと思っちゃったりするわけ?
イケスミ だって、あんたはなじんでるでしょ、町にも学校にも?
あすか うん、あたしは バカでガサツで弱虫なわりにお調子者で……
イケスミ でしょ。万代池が無くなるのに死のうなんて思わないしさ……
あすか ちょ、ちょっと!
イケスミ ごめん、ちょっとひがんでみただけ……
フチスミ 桔梗は、このあたりでただ一人わたしの依代になれる素質を持った子だった。
あすか ソフトとハードの関係だね。あたしとイカスミさんみたいに。
イケスミ イケスミだっつーの。
フチスミ その桔梗が、廃村の二日後、たった一人でわたしのところへやってきた。これは運命だと思った。この子もね……二人でそう感じた時、わたしは溺れているこの子にのり移っていた……その時……
あすか その時?
フチスミ かすかにオオガミさまの声が聞こえたような気がした……
イケスミ はるか出雲から、オオガミさまの声が……
フチスミ 見とどけよ……とおっしゃった。
イケスミ 何を見とどけよと?
フチスミ おもどりになるまでのこと、それしかないわ。
あすか でも、もう十一月も末だよ。
イケスミ どういう意味だ?
あすか ……もう帰ってこないんじゃ……だって何もかも水の中に沈んでしまって、変な不良の神さまたちもここをねらってるみたいだし……(彼方で崩れる音)
イケスミ 神さまは嘘は言わない。
あすか でも、もどってくるとは言ってないんでしょ。出雲に行ってくるとだけ、そしてかすかに、見とどけよと、そう言っただけでしょ?
イケスミ 神無月を過ぎて、神々がもどられなかったことなどない!
あすか だって、まだもどってこないじゃないか!
イケスミ ……
あすか 先生だって、トイレにたったきり職員会議にもどらない人がいる。生徒の大事な進路を決める職員会議にだよ!
イケスミ 学校の教師ごときと神さまをいっしょにするな! 神さまを信じろ!
あすか だって、イカスミさんだって、マンダラ池を見捨てたじゃないか、二度ともどってきやしないんじゃないか!
イケスミ 勝手なことを申すな!!
両手をつかって気をとばすイケスミ、数メートルふっとび、地面に体を打ちつけられるあすか。
あすか ……イカスミ……
イケスミ あたしの名はイケスミだ、二度とまちがえるな。
フチスミ この子は恐ろしいんだ、いろんなことが……もうもどしてやった方がいい。そんな顔してると禍つ神になってしまうわよ。
イケスミ ……そうだ、そうだったな。ここまで連れてくるだけの約束を、ついひっぱり過ぎたな。すまんあすか……ほら、約束の成績票。
あすか あ、ありがとう……!?
フチスミ どうかした?
あすか オ、オール五だ……あたし、こんなには賢くないよ。
イケスミ あすかの頭も、それにあわせてよくなっている。
あすか ほんと?
イケスミ フチスミさん、なんか問題言ってやって。
フチスミ うーん……じゃ、微分方程式ってなーんだ?
あすか 未知関数の導関数を含んだ方程式。未知関数が一変数のとき、常微分方程式といい、多変数のとき偏微分方程式という……え?
フチスミ 和文英訳「日本語のおはようは、英語のグッドモーニングと同じです」くりかえそうか?
あすか ううん「オハヨウ イズ ジャパニーズイクォリティー トウ ジイングリッシュグッドモーニング」……おお!?
フチスミ 古文法、推量の「ら」を用いた著名な和歌は?
あすか 春すぎて、夏きたるらし白妙の、衣干したり、天の香具山……万葉集巻一、持統天皇の御製。ちなみに持統天皇、名はタマノハラノヒメ、またはウノノサララ、天智天皇の第二皇女で天武天皇の皇后、草壁皇子没後即位、第四十一代の女帝。ちなみに神田うのの「うの」は、このウノノサララからきている……すっげえ!
イケスミ な、賢くなったろう。
あすか ありがとう、頭の中に百万個電気がついたみたい。
フチスミ ちょっと甘すぎない?
イケスミ 同じ学校受けられる水準にはしといてやらないとな、真田ってイケメンと。
あすか ああ、それないしょ、ないしょ!
フチスミ あははは……そうだったわね。
あすか え……?
イケスミ 神さまに内緒はつうじないからな。
フチスミ がんばってね。
あすか もう……!
イケスミ それから、その成績票、破いたり傷つけたりするなよ。
あすか うん!
イケスミ 元のバカにもどっちまうからな。
フチスミ 元のあすかちゃんも悪くないわよ。
あすか もう、フチスミさんたら。
フチスミ ……南東のケモノ道がまだ無事のよう。まだ日が高いから、少し教えてあげれば一時間で轟って街につく。
あすか トドロキ……
イケスミ このへんにしては大きな街だからすぐに、駅が見つかる。特急に乗れば一時間ちょっとで東京。ほれ、電車賃……バカ透かすんじゃない本物。木の葉なんかじゃないからね。
フチスミ 南の方はまだ息をひそめているけど、北の禍つ神達が雑魚のように群れはじめている。その藪の中に武器が隠してある。間に合わないときは、それで始めといて。さ行こうあすか、こっちよ。
あすか うん、ありがとう、じゃ、イケスミさんも、どうぞ無事でね! 死んじゃやだよ……!
あすか、フチスミにいざなわれ上手に退場、イケスミ一人残る。
イケスミ 心配すんな、まかしとけ!……あいつ初めて正しくイケスミって言ったな……神さまは死なねえよ……ただ変にひねくれちまって(北の方角をにらむ)ああいう禍つ神になっちまう奴がいるけどな……(北の彼方で禍つ神達の気配。イケスミ、そこに一瞥をくれると藪を探る)なるほど、さすがフチスミ、どう見ても竹や、枝の切れ端だけど、みんな鋭い殺気がこもっている。ロケット弾、重機関銃並のものまであるじゃないか……このへんが手ごろ……(ふりむきざまに、手ごろな小枝をとり意外に近くの北の空をめがけて撃つ。機関銃のような音と手応え。奇声を発して、鳥のように禍つ神の落ちる音)けっ……意外に近くにやってきている……(続いて撃ちまくる)
フチスミが、上手から転がり出るように駆けもどり、たった一人の戦闘に加わる。手ごろな武器を持ち二人で撃ちまくる。
フチスミ 以外に近くに来ているようね!
イケスミ あすかは無事に!?
フチスミ ええ、無事に道を見つけた。向こうはまだ安全だった!
イケスミ それはよかった。でも、その分、こっちに集中しまくってるみたいよ!
フチスミ 数が多い……
イケスミ でも、よく用意しといてくれたよ。これだけの禍つ神にいちいち手づくりの気を飛ばしていたら、体がもたないよ!
フチスミ 鬼岩に封じ込めてあった鬼の気を、枝や竹の切れ端にこめておいたの!
イケスミ それで鬼岩の気が弱くなっていたのか!
フチスミ その奇数番号の太い竹を撃ってみて。オートの百連発だから……!
イケスミ よっしゃ!
三番のオートを撃ちまくるイケスミ、花火大会のクライマックスのように盛大に盛り上がり、急速に静寂がおとずれる。二人とも、ざんばら髪に制服姿も痛々しげに乱れている。やがて、イケスミが腰を抑えてくずおれる。
フチスミ なんとか、やっつけたみたいね……
イケスミ でも、この百連発は腰にくるよ……
フチスミ うん、だからイケスミさんにまかせたの。
イケスミ あのなあ……
フチスミ わたしの華奢な体じゃ、扱えないもの。
イケスミ だって、依代についてんでしょ。多少の無理は……
フチスミ 桔梗に負担はかけたくないの。
イケスミ あたしたちはね、そのために依代についてんのよ。依代につくから、このサトから出ることもできるし、サト中じゃ依代につくことで何十倍もの力を発揮できるんだよ。
フチスミ でも、依代にも負担がかかるんだよ。
イケスミ だから、そこはギブアンドテイク。だからあすかだって……
フチスミ 桔梗は、今度の地震で、お父さんを亡くして天涯孤独の身なのよ。ダメージあたえたくない……それに桔梗って、おとなしそうに見えて、けっこう戦闘的な子なの、そんなの持たせたら、どこまでやるかわからない。奇数番号のオート持てるだけ持って自爆さえしかねない子よ。ほら、もうわたしの支配から離れて、勝手に動こうとしている……だめよ桔梗、全てをわたしにゆだねなければ(桔梗を封じ込めるように身もだえする)
イケスミ あすかの半分も要領かませればねえ、もっと気楽に世の中渡っていけるのにねえ……
フチスミ わたし、桔梗も好きだけど。あすかって子のハッキリしたところも好きよ。
イケスミ ハハ、イケメンコーチと同じ大学うけられてルンルンだろうね。でも、頭はともかく、あの器量だから、いずれふられちゃうだろうけどね。でも、あすかはそうやって成長……(何気なく自分の手を見て愕然とする)
フチスミ ……どうしたの?
イケスミ 手が……体が透けてきた。結界がほころび始めているんだ。今日一日もたない……二、三時間で消えてしまうかもしれない……!
フチスミ 気を強くもって!
イケスミ もう少し……
フチスミ もう少し?
イケスミ もう少し、あすかを足止めしておくべきだった、依代さえいれば……そうだ、ふんぱつして惚れ薬で彼氏の心をとりこにするぐらいのことを……
フチスミ バカ!(イケスミをはりたおす)
イケスミ ……なにすんのよ!?
フチスミ あなたに欠けているのは信じる心よ。必ずオオガミさまはおもどりになる! けして、この里をトヨアシハラミズホノサトをお見すてになったりしない!
イケスミ だって……
フチスミ 霜月を過ぎて、まだたったの三週間あまり……きっとおもどりになる。あなたもさっきそう言ってたじゃない。だから、あの禍つ神達も恐れてる。一気に力攻めにはしてこない、ゲリラのように小攻めに……
イケスミ 今のが小攻め?
フチスミ ……中攻め、威力偵察ね。ちょっと強めにあたって、相手の強さを知る。
イケスミ 思い知っただろうね、ほぼ全滅にしてやったから。
フチスミ だから、しばらくは攻めてこないわ。
イケスミ そうだね。そして今度攻めてこられたら、今度はこっちが思い知る番ね(自分の透け始めた体を見て)わるいけど、やっぱニ三時間……良くて四五時間だな……
この時、上手の藪から、あすかが飛び出してくる。手には件のメモリーカードとコントローラーを握って。
あすか 言ったじゃないか、神を信じろって!
イケスミ あすか!?
フチスミ あすかさん!?
あすか 今の攻撃は威力偵察なんかじゃない。本格的な攻撃の陽動作戦に過ぎない。主力は南よ! 南に何か途方もなく禍々しい化け物が潜んでここを狙っている。南東の獣道を通っても、ひしひしと感じた!
イケスミ ほんとうか!?
フチスミ 言うとおりよ。北に気をとられすぎていた……南に化け物が……今、動き始めた!
あすか 話は聞いた。消えかかっているんでしょ、イケスミさん。もっかいやろうよ。ほら、コントローラーとメモリーカード!
イケスミ いいのあすか? 今度は命にかかわるぞ……?
あすか あたし賢くなったの。二人を見殺しにしても、あの南の化け物は、あたしを認識している。ここをあっさりかたずけたあと、きっとあたしを殺しに来る。知りすぎてしまったかから。そのためには、もっかい依代になって戦ったほうが生き残れる可能性が高い。そう計算できるほどにね……って理屈つけたら納得してくれる?
フチスミ アスカさん……
あすか さあ、コントローラーを持って! あたしはメモリーカードを……え!?
イケスミ どうかしたのか?
あすか これ、ドラクエⅧ「空と海と呪われし姫君」のメモリーカード……鞄の中でごちゃになったんだ……これは、ラチェットアンドクランクⅢ……ファイナルファンタジー……メタルギアソリッドスリー
……おっかしいなあ……
イケスミ おまえ、度はずれたゲーマーだな……
フチスミ だめ、もう、間に合わない!
ゴジラの咆哮のような禍つ神の叫び声が聞こえる。
あすか あれ、あいつよ南側に潜んでいた奴!
フチスミ 並みの禍つ神ではない……いずれの荒ぶる神か?
イケスミ ……あれ、轟八幡だよ。ほら、あの頭の鳥居。
フチスミ え、この国の二ノ宮の……(神の咆哮)なんとあさましいお姿に……
イケスミ 人間が、よってたかっておもちゃにしちまったんだ。駐車場の経営から、貸しビル、株の売買にスーパーの経営、観光会社に、このごろじゃ専門学校から塾の経営まで手を出しているって話だよ。
あすか あ、お母さんの言ってた轟塾!?
イケスミ この国の人間は、思いやるって心を失ってしまったんだ。人に対しても、神さまに対しても、自然や、何に対しても……祖先から受け継いだ夢も誇りも恐れも忘れ果てた、アホンダラに!
フチスミ 感想言ってる場合じゃないわよ。
あすか ね、あたしにも何かやらせて! こう持つの?(百連発の大筒を両脇に抱える)
フチスミ だめ、普通の人間が持っていたって、ただの竹筒……
あすか そんなのやってみなきゃ……(引き金を引いた気持ちになる。両脇から百発ずつの鬼の殺気のミサイルが飛び出す。反動でニ回転半ほどひっくりかえる)
イケスミ あすか……おまえって……
フチスミ 動きが止まった……
イケスミ ちょっと驚いただけさ、じきに……ほら動き出した(神の咆哮と地響き)
あすか くそ!
フチスミ 撃つしかないわ、最後まで!
イケスミ 撃て撃て撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!
三人しばらく撃ちまくる、地響きしだいに近くなる
イケスミ 弾が少なくなってきた……
フチスミ そろそろ桔梗とあすかちゃんを解放してあげたほうが……
あすか やだ! ここで逃げんのはやだ!
イケスミ あたしたちは踏まれても死なないけど、あんたたちは死ぬんだよ!
フチスミ 桔梗も離れようとしない!
あすか やだ! もうわけわかんないけど、やだ!!
この時、大きな白い矢がとんできて、轟八幡の胸板を射抜く(音と演技だけで表現)大音響とともに轟八幡が倒れる気配。
フチスミ オオガミさまだ! オオガミさまがもどられた!
あすか まぶしい!
イケスミ 笠松山の向こうから矢を射られたんだ!
あすか まぶしくて……
フチスミ 間もなく、笠松山を越えられる。それまでに、とどめをさそう!
イケスミ ああ、残った雑魚の禍つ神どももな。
フチスミ いくよ!
イケスミ おお!
あすか あ、ちょっと待って、あたしも……!
舞台前まで乗りだして、掃蕩戦にいどむ三人。笠松山からのオオガミを暗示する光などが戦斗音を残してフェードアウト(戦闘を表す歌とダンスになってもいい)やがて、戦斗音が土木機械の音に置き換わって明るくなる。もとのマンダラ池のほとり。手前にあすか、奥に桔梗が倒れている。
あすか ……ん……マンダラ池……埋立て工事が始まってる……夢おち?(桔梗に気づく)フチスミさん!? フチスミさん、しっかりしてフチスミさん!
桔梗 ん……あすかさん……ここは?
あすか マンダラ池、正式名称万代池、イケスミさんが住んでいたところ。大丈夫? 大丈夫だよね、神さまなんだからフチスミさんは。
桔梗 わたし、桔梗だよ。
あすか 桔梗さん? どうして?
ガードマンのオバサンの姿をしたイケスミが、軽くホイッスルをふきながら上手からくる。
イケスミ ダンプは北から、そうむこうね! ユンボこっち。土ゆるいからそこで停めといて。(二人に)そこあぶないから、こっちの方で話してくれる。ごめんなさいね。今日から工事始まっちゃうから……
桔梗 すみません。
あすか ども……
舞台中央で、ガードマンのイケスミと二人、交差。二人はイケスミに気づかない。
桔梗 オオガミさまももどられたし、フチスミさん、あそこを離れられないと思うの……
あすか そうか。ミズホノサトは廃村というか……沈んだまんまだし。桔梗さん、あそこに住むわけにもいかないんだ。
桔梗 万代池も、ひどいことになってしまってるのね……
あすか 時代の流れというのかね。あたしも長年……と言っても十数年だけど、万代池だなんて由来知らなかったからさ、マンダラ池だと思って、昨日なんか、ウンコふんづけちゃって、靴洗ってたりしてたんだ。
桔梗 靴洗っちゃたの、神さまの池で!?
あすか 知らなかったんだもん……でも、それでひらき直っちゃいけないんだよね。ごめんなさいって気持ち……持ってたんだけどね、ちゃんとあやまったんだよ……言っちゃあなんだけど、やっぱイケスミさんて、すねた神さまだったよね、それで、あたしをひっかけて依代にしちゃうんだから……今ごろはオオガミさまのスネしゃぶりつくしてんだろうね。ま、いいか、頭もよくしてもらったことだし……
桔梗 どっちもどっち、二人ともたくましい都会の神さまと人間。
あすか 桔梗さん。しばらくあたしの家にいなよ。三LDKだけど、三人家族だからもぐりこめるよ。
桔梗 そんなの悪いよ。わたしも子供じゃないんだから……
あすか そうしなって、ここへそろって送ってこられたのも、そういうおぼしめしだと思うの。
桔梗 だって……
イケスミ だってもあさってもなーい!
二人 え……!?
イケスミ まだ気がつかない?
二人 ……?
イケスミ あ・た・し(ヘルメットとタオルをとる)
あすか イケスミさん!
桔梗 どうかしたんですか!?
あすか てっきりスネかじってると思ってたのに……その姿?
桔梗 神さま廃業ですか?
あすか だったらお父さんに頼んでもっと時給のいいパート紹介してもらったのに。
桔梗 おいたわしい……
イケスミ 勝手にしゃべるな!
桔梗 だって……
あすか その姿……
イケスミ これは、池の最後を見届けるための方便だよ。
あすか ホーベン?
桔梗 ということは、まだ神さまでいらっしゃるんですね。
イケスミ あれから、オオガミさまに叱られてな。
あすか キャッチセールスみたいなことするからだろ?
イケスミ それもあるけど、ここを見捨てたことな……あすかもいってただろ?
あすか あれ、売り言葉に買い言葉。気にしないでくれる?
イケスミ 池があろうとなかろうと、そこに人が住んでいるかぎり逃げてきちゃいけないって。
あすか でも、人がいたって信者がいなきゃ。
イケスミ いるよ。あすかが信者一号、桔梗が信者二号だ、よろしくな。
桔梗 アハハ……でもフチスミさんは……
イケスミ あたしが兼任、元をたどればオオガミさまにたどりつくんだから、どっちの信者になっても同じさ。フチスミさんは、しばらくはオオガミさまと地元の復興……それから、あんたたちも、たどっていけば同じ一族なんだよ。
あすか え、親類!? あたしたちが!?
イケスミ あすかの元宮というのは、元宮司って意味で、天児一族の分家、三百年前にあたしといっしょにやってきた家系さ。
桔梗 でも、一族とは思いませんでした。
イケスミ さすがの桔梗にもわからなかったか?
あすか でも、親類だと思うとなんか嬉しいね。
桔梗 はい……でもお世話になるのは……
あすか 硬いこと言うなよ。
イケスミ あんたたちは双子の姉妹、二卵性の。そういうことにしといた。
二人 ええ!?
イケスミ 役所の書類もそうしといたし、親も友だちも、みんなそういうふうに思ってる。
あすか ええ、そんな……
イケスミ ミズホノサトは必ず人がもどってくる。水も少しずつひいて、もとの生活がね……でも、それには何十年もかかるだろう。それまで桔梗を天涯孤独の身の上にしておくのはかわいそうだ……これはオオガミさまのおぼしめしでもある……それとも、桔梗が姉妹じゃ、何か不足でもあるのかい?
あすか ないない。ねえ?
桔梗 え、ええ。
イケスミ そうときまれば、やることは一つだけ。
あすか え、なんかすんの?
イケスミ 双子でも、姉と妹の区別がいる。
あすか そりゃ、誕生日の早いほうが……
イケスミ バカ、双子の誕生日はいっしょにきまってるじゃないか。
桔梗 何をするんですか?
イケスミ ここから、自分の家まで、ヨーイドンで走る。先についた方が姉だ。いいね。
あすか ようし、足には自信が……
桔梗 わたしだって!
イケスミ それじゃ……(競技用のピストルを出す)ヨーイ……
あすか っと、その前に一つ聞いていい?
イケスミ なんだい、ずっこけちまうじゃないか!
あすか オオガミさまたちの出雲会議がさ……あんなに長引いた理由ってのは? よっぽど大事な議題なんでしょ?
イケスミ ああ、人と自然の将来に関わる大切な話をされていたのさ、ずいぶんもめたみたいだけどね。
あすか で、結論は?
桔梗 それは……
イケスミ こうして、あんたたちとわたしがいる。それが結論……と、いうことで納得しろ。
あすか こうして、あたしたちがいることが……
イケスミ それじゃいくよ、ヨーイ……っとその前に。
あすか なによ、ずっこけてしまうじゃないよ!?
桔梗 アハハハ……
あすか なによ!?
イケスミ 実は、あのオール五の成績票ね。
あすか そうそう、ごほうびの……(ポケットに手をやる)ない……ポケットのどこにもない!?
イケスミ 戦いの最中に、おっことしたんだよ。
あすか え?
イケスミ フチスミさんが拾ってくれた。そうだよね?
桔梗 え、ええ。
イケスミ それをあずかったのがこれ……
あすか ありが……とうに破れてるじゃん!?
イケスミ 戦いの最中だもん……
あすか じゃ、もとのあたしにもどったってわけ!? せっかく真田コーチと同じ学校いけると思ったのに……
桔梗 いいじゃない、受験までにはまだ間がある。今度は自分の力で。わたしも応援するから。
イケスミ じゃ、今度こそいくぞ。待ったなし……ヨーイ……ドン(本物の競技用がいい)
花道(通路)を本気で駆ける二人、見送るイケスミ。
イケスミ ……どっちが勝つにしろ、着いたころには、本当の姉妹と思い込んでいるはず、そういう魔法がかけてあるんだから……さあ、おまたせ、埋め立てるよ、ユンボはむこうから、ブルドーザーこっち、ダンプも前に進んで……(観客に)じっと観てないで拍手! おしまいだから幕はおろして……
イケスミ、まるで現場監督のようにホイッスルを吹き、埋め立ての指揮をとるうちに幕。(余裕があれば、キャスト、スタッフが出てきて、鳴り物入りでフィナーレにしてもいい。ラストのイケスミの台詞「じっと観てないで拍手」のあたりで)
作者の言葉
キザなようですが、現代日本人が失ってしまった何かを、コミカルファンタジーにして。考えるのではなく。感じてみるお芝居にしてみたつもりです。道具はあったほうがいいですが、クラブや劇団の状況にあわせて、無対象でもできるようにしてあります。イケスミは、言葉をちょっと変えると男でもやれます。劇団でやる場合、ボリュームに欠けるかもしれません。その時は、自分たちに合わせて脚色してもらってけっこうです。ただ、この芝居に限りませんが、必ず上演許可をとるようにお願いします。
【作者情報】《作者名》大橋むつお《住所》〒581-0866 大阪府八尾市東山本新町6-5-2《電算通信》oh-kyoko@mercury.sannet.ne.jp
上演されるときは、ご連絡ください