東京国立近代美術館で5月15日まで開催の安田靫彦展にお出かけになられたお客様よりカタログをお送り頂きました。
私達も山種美術館の奥村土牛展と合わせて是非伺いたい展覧会ですが、
また会期ぎりぎりになってしまいそうですので、ここで皆さまにご紹介させて頂こうと思います。
ご存知のとおり靫彦は歴史画、特に歴史人物画に定評がある画家です。
「品位は芸術の生命である」という画家の言葉のとおり
より完成された美を求め、画業に励んだ靫彦の作品はどれも格調高く、
ともすると古くなっていってしまう歴史画に作家なりの解釈を加え、
新しい生命を通わせました。
「美しさ」は「画品」
と定めた画家の志の深さを、描かれる人物からもひしひしと感じることができます。
例えば歴史画などという難しいことを言わず、靫彦の描く花を見るとき、
この作家の生き生きとした心に触れる思いがし、私は大変新鮮で楽しい気持ちになります。
品のあるリズムというのでしょうか?
小倉遊亀さんの跳ねるようなリズムでなく、古径さんの緊張のあるリズムでなく
土牛さんの微笑むようなリズムでもなく。。
野の花を摘んで楽しむような、良寛の文字を見るような、小さく美しい香合を集めるような・・・そんな静かで美しいリズムが靫彦の静物画からは感じられるのです。
「蘭」は昭和38年、画家79歳の作品。
志野でしょうか?花瓶に蘭の葉、茎、花。
蘭の花をじっとながめ、解釈し、そして何よりも愛で、新しい靫彦の「蘭」を描く。
まるで歴史画に登場するような人物たちが眺めている花のように、孤独で、しかし強く、可憐な美。
79歳でこの世界にたどり着けるのなら、喜んでしわもシミも受け入れましょう!!
そんな気持ちになります。
実際の作品を見せて頂くのを楽しみにしています。