風が少しずつ、秋を運んできます。
昨日は一日中寝てました。そのせいでしょうか、今日は、本当に何もなかったかな?出掛けなくてよかったかな?とおもうくらい元気。
秋のこの時期どちらかと言うと余り好きではありません。
久し振りに本をだしました。何度読んでも新鮮な気持ちになるのが不思議・・・昔の作家が好きです。
一寸疲れたところで、むかしばなし。
「猿寺」
その昔、京の都の正行院(しょうこういん)という寺に、円譽上人(えんよしょうにん)という偉い坊さんがおったそうな。
上人はたいそう心の優しい人で、かって山中で修行しておった頃には、鹿や猿、狐や鳥などの動物たちにも仏の教えを説いてやったりしてなぁ、「南無阿弥陀仏」の名号を書いた紙を、動物たちに分け与えてやるほどじゃったそうな。
やがて、上人が京に正行院を開いてから、2~30年ほどたった「元亀年間」のこと、
洛外に一人の猟師が住んでおった。
ある日のこと、山に獲物を探しに行った猟師は、一匹の猿を見つけた。
すぐさま弓に矢をつがえ、射ようと身構えると、どうじゃ、妙なことに猿は、しきりに手を合わせて命ごいをはじめるんじゃと、
「おかしな猿だな」
猟師が不思議に思って見ていると、猿は何を思うたのか、自分の首に掛けておったものをはずし、猟師に投げてよこしたそうな。
何気なく拾って中をのぞくと、小さな紙切れが出てきた。
ますます妙に思ってその紙を広げてみて、猟師は思わず息を呑んだ。
何と、その紙には、「南無阿弥陀仏」の六字がはっきりと書かれてあるではないか。
今にして、殺生を重ねてきた我が身の罪深さを、猿から教えられたような気がしたんじゃろう。
猟師は、いままでの自分の行いを深く悔いると、その日から、きっぱりと猟に出るのをやめたそうな。
その後、猿からもらったあの名号が、京で名高い正行院の「円譽」上人の筆跡だと知った猟師は、さっそく上人を訪ねた。
そして一部始終を語り、その場で弟子になったと言う。
この話は何時しか京の街の人々の口から口へと伝えられてなぁ、やがて誰言うとなく正行院は、“猿寺”と呼ばれるようになったそうな。
そして、猟師が貰ったという名号は、今でも大切に、寺に安置されておるということじゃ。
今日はお終い。