シトシトと絹糸のような春の雨が尾をひいています。静かです。
柔らかな風が木の葉を揺らしています。でも少しさむい。
この雨で雪も解けることでしょう・・・。
小さな小さな花たちは固く眼を閉じたまま・・・
あれ!何時しか雨が止み薄日が洩れてきました。でも小さな小さな花たちは俯いたきり顔をあげようとしません。
突然何の脈絡もなく、メルヘンの世界を覗いてみたくなりました。きっとわたしの頭が壊れかかってきたのでしょう・・・
森のなかのお菓子のおうち
その年の飢饉は凄まじいものだった。
日照りが続き、作物は育たず、人も家畜も誰しもが飢えていた。 いつの時代も同じように、飢饉の最初の犠牲者は老人と、子供達だった。体力のない老人はバタバタとまっ先に倒れ、ミルクのあてがいのない赤ん坊は母親の腕の中で、泣き声もあげずに死んでいった。
街は飢えた浮浪児で溢れ、親元にいる子供達も、両親から口減らしのために"間引き"されることも珍しい事ではなかった。
とある村の、森のはずれに住むきこりの一家にも飢饉は等しく襲いかかっていた。
戸棚にはひとつぶの麦もなく、猫の額ほどの自家農園に来年蒔くはずの種イモや種麦ですら食べ尽くしていた。一家は森に入り、山菜や木の実を取って生活をしのいでいたが、それとて一家四人...きこりの亭主とおかみさん、ヘンゼルとグレーテルの兄妹二人...の口を満たすには十分ではなかった。
「あんた、もうそろそろ潮時なんじゃないのかい。これ以上あの子達を喰わせる事は出来ない。かわいそうだけれど、今度森に入った時に、子供達は置いていこう」
ある夜、子供達が寝静まった後におかみさんが、森で採取した枯れ草で糸を紡ぎながら亭主に話しかけた。「このままだと一家心中になっちまうよ」
このおかみさんはまだ若く、きこりの亭主の前の妻が亡くなったあとに嫁いできた、後妻だった。子供達は前妻の残した"忘れ形見"であったが、亭主は彼女にとても惚れていたし、彼女に逆らうのも怖かった。
「そ、そうだな...、じゃぁ今度森に入った時に、子供達は置いてこよう。森は深いし、夜になれば狼が子供達を喰ってしまうだろう」
伏目がちに、ぼそぼそと亭主がつぶやいた。
ヘンゼルは薄く開けられた扉ごしに、夫婦の会話を盗み聞いていた。
なんと恐ろしいこと!ヘンゼルは身がすくみ、ガクガクと足が震えるのを感じた。なんとかしなくては。
しばらくじっと考えたあと、ヘンゼルは夫婦に気付かれないように裏口の扉をあけて外へ出て、手ごろな大きさの白い石をポケットいっぱいにかき集めた。
ポケットがずっしりと石で重くなると、ヘンゼルは満足して部屋に戻り、すやすやと寝息をたてている妹グレーテルの眠るベットに潜り込んだ。
お馴染みグリム童話で「ヘンゼルとグレーテル」のお話です。
現代でもありそうな残酷な話です。この子供たちは、いろいろ恐ろしいめにあいましたが、二人で力を合わせて、帰って
来る事が出来ました。
話はまだまだ続きますがきょうはお終い・・・。