愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題377 源氏物語(桐壺) 限りとて 別るる道の 紫式部

2023-11-20 09:48:11 | 漢詩を読む

[要旨]

桐壺の更衣は、御所の中でも東北の隅にある桐壺の局(ツボネ)に住まっていることから 桐壺の更衣と呼ばれている。更衣とは、後宮に侍する高位の女官ではあるが、その位は、皇后(天皇の正妻)-中宮(皇后と同格)-女御(ニョウゴ、主に摂関の娘)-更衣の順に低く、最下位に位置する。

桐壺の更衣は、父は大納言であったが、すでに故人で、未亡人の母親と暮らしていた。親の地位が、後ろ盾として娘の羽振りに非常に大きな力となっていた時代、父親が亡くなっていたことは、更衣にとっては非常に生き辛い状況にあった。

しかし桐壺の更衣は、帝の寵愛を一身に受けていた。そのことが他の女御や更衣の妬み・嫉妬を誘い、時には意地悪な仕打ちに遭い、体調を崩して、体は日に日に弱っていきます。そのことがまた帝の思し召しを深くしていく。

桐壺の更衣に美しい皇子が誕生します。右大臣の娘である弘徽殿(コキデンノ)女御にすでに第1皇子が誕生していましたが、第2皇子に対する帝の可愛がりようは尋常でなく、3歳時の袴着(ハカマギ)の式も、第1皇子に劣らず華やかに行われました。女御の妬みはさらに増し、疑心暗鬼を生ずるほどであった。

桐壺の更衣は、周りの女御、更衣たちの心無い仕打ちに会い、体は弱り、病気がちとなり、実家に帰ることを願い出ます。しかし帝は、「死の旅にも同時に出るのが私たち二人である とあなたも約束したのだから、私を置いて家に行ってしまうことはできないはずだ」と言って赦してくれません。

病状が勝れず、療養のため帝と別れて、已む無く実家に帰ろうとする折に、桐壺の更衣が詠った歌です。

 

限りとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり

     (桐壺の更衣) 

 

本帖の歌と漢詩 

oooooooooo  

 限りとて  別るる道の  悲しきに いかまほしきは 命なりけり 

    [註] 〇いかまほしきは:生きたがっているのは。

 (大意) 今生の限りにあって 死に出の道にいる私は悲しいのです、いつまでも生きていたいこの命なのですが。

xxxxxxxxxxxxxxx 

<漢詩> 

   不如意性命           不如意(ママナラ)ない性命(イノチ)  

                    [下平声一先韻] 

定数嗟嗟生有限, 定数(サダメ)なのだ 嗟嗟生には限り有り, 

悲傷悢悢赴黃泉。 悲傷(カナシミ) 悢悢たり 黃泉に赴く。

依依心乱何以敘, 依依として心乱れ 何を以てか敘べん、

惟願長久性命全。惟に願う長久に 性命を全うせん。 

<現代語訳> 

 儘ならぬ命 

ああ 定めなのだ 生命には限りがある、悲しみに堪えないが、私は貴方と別れ、冥途に赴こうとしている。私は後ろ髪を引かれる想いでいるが 伝える言葉がない、只に 私の思いと違い、私を死に出の道に追い遣ろうとしているのは命なのだ。

<簡体字およびピンイン> 

  不如意性命       Bùrúyì xìngmìng 

定数嗟嗟生有限, Dìngshù jiē jiē shēng yǒu xiàn,     

悲伤悢悢赴黄泉。 bēishāng liàng liàng fù huángquán.  

依依心乱何以叙, Yīyī xīn luàn héyǐ xù,  

只是跟随性命权。 zhǐ shì gēnsuí xìngmìng quán.  

ooooooooooooo   

悲しい歌から始まります。『源氏物語』中、初っ端に出て来る歌でした。

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