初期のベンチャー起業家の代表的人物である西和彦さんの著作です。
ご自身が語る「反省記(半世記)」ということで興味を持ったので手に取ってみました。
読んでみて感じるところですが、こういった自叙伝的な著作にありがちの「過度な自己礼賛」はまったくありませんね。もちろん成功譚も紹介されていますが決して華美な虚飾ではなく、その時々の西さんのありのままの姿や気持ちが書き連ねられています。まさに期待どおり、エネルギッシュでドラマチックな西さんの半生(反省?)を彩る様々なエピソードが満載です。
それらの中から私が気になったところです。
数々の型破りなエピソードも興味深いものがありましたが、その中で時折見せる西さんの“謙虚な姿”や“オーソドックスな考え方”も大いに勉強になりました。
(p140より引用) 大物経営者に限らず、仕事で人と会うときはいつも緊張していた。毎回毎回が真剣勝負だと思っていた。大事だと思うのは、相手のことを尊敬して謙虚にぶつかっていくという姿勢だ。貴重な時間を割いて会ってくださるんだから、感謝の気持ちを忘れたらいけないと思う。
ただ、緊張してたら交渉なんてできない。だから、「失敗したらどうしよう」なんて思わないようにする。というか、そんな心配が消えるまで準備する。自分がプレゼンする内容を考えるときに、「相手はどう思うか?」「何を疑問に思うか?」という想定問答を何時間もかけて徹底的にやっていた。されると予想できる質問の答えを100通りは考えた。その答えを全部用意してから、訪問していたのだ。
リアルな場面が浮かんできますね、とても大切な考え方だと思います。
そしてもうひとつ、まるでジェットコースターに乗り続けていたような激動の半生を経た西さんが考え続けてきたこと、「幸せとは?」
西さんが至った答えはこうでした。
(p455より引用) 感謝している時が「幸せ」なのだ――。
この気づきこそが、これまでさんざん経験をしてきた失敗から学んだ最大の知恵だと思う。
確かにそうですね。これだけの波乱万丈の人生を経ての結論には心底深く重いものがあると思います。
本書には、西さんと深い関わりがあった人物が数々登場します。その関わり様はさまざまですが、結局のところ最後はそういった方々への“感謝の気持ち”に行き着いたようです。
その中でも、西さんの生き方に特に大きな影響を与えたのがCSKの創業者大川功さんと「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ銀行家中山素平さんでした。このお二人に対する西さんの感謝の念は言葉では言い尽くせないものがありました。
確かに、西さんに接したこのお二人の姿はとても魅力的ですね。機会を見つけて、今度はこの方々を描いた本を読んでみましょう。