先日、いつか観たいと思っていた映画の方を先に観て、素晴らしい作品だと感動したので、今さらですが「原作」に立ち戻ってみました。
小説なのでストーリーには触れませんが、こちらも良かったですね。
内容は、リリー・フランキーさんの自叙伝ともいうべき小説で、たとえば、こんな自虐的?なフレーズにも(甚だ失礼ながら)納得感があります。
(p232より引用) 東京には、街を歩いていると何度も踏みつけてしまうくらいに、自由が落ちている。
落ち葉のように、空き缶みたいに、どこにでも転がっている。
故郷を煩わしく思い、親の監視の眼を逃れて、その自由という素晴らしいはずのものを求めてやってくるけれど、あまりにも簡単に見つかる自由のひとつひとつに拍子抜けして、それを弄ぶようになる。
自らを戒めることのできない者の持つ、程度の低い自由は、思考と感情を麻痺させて、その者を身体ごと道路脇のドブに導く。
ぬるく濁って、ゆっくりと流され、少しずつ沈殿してゆきながら、確実に下水処理場へと近づいてゆく。
確かに東京はそういうところですね。特に地方から来たものにとっては。
ともかく、この小説、リリーさんの素直な心情を吐露したものなので、エピソードに雑味がまったくありません。登場するリリーさん所縁の人たちも“類は友を呼ぶ”の典型でとても魅力的です。
もちろん、その中でも“オカン”は別格。リリーさんがどう感じられたのかは分かりませんが、映画で樹木希林さんの演じた“オカン”の姿は、小説で描かれた“オカン”を見事に眼前に映し出してくれた気がします。
映画を先に観てから小説を読んでも、改めて全く違和感なく“オカンとボク”の世界に入っていくことができますね。
どちらも、100%、全編 “オカンへの愛情物語” です。