OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

知財マネジメント (技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか(妹尾堅一郎))

2009-12-19 18:48:56 | 本と雑誌

 妹尾氏が提唱している「三位一体」型経営戦略ですが、その中で特徴的なコンセプトが「知財マネジメント」です。

 本書では、「知財マネジメント」の実例がいくつも具体的に紹介されています。
 そのうちの一つ、「防護柵」としての特許の活かし方です。

 
(p164より引用) 自社実施はしなくても、他社が粗悪品で市場に参入しないように「防護柵特許」で防ぐのです。このような知財マネジメントもあるのです。よく「自社実施をしない特許はムダだ」とか「他社の迂回技術の開発を止めてしまうことによって全体として技術開発に悪影響を及ぼす」といった議論を聞きますが、単に他社の進路妨害をするだけでなく、粗悪品防止の意味を持つ場合もあることを知って欲しいと思います。

 
 「知財マネジメント」において、「オープン」という言葉の使い方には注意が必要です。
 単なる「無条件公開」ではありません。むしろ「囲い込む」ための「オープン」です。

 
(p168より引用) 囲い込むとなるとすべてを囲い込みたくなりやすいのですが、それは「労多くして功少なし」かもしれません。基幹部分をしっかり押さえれば、周辺隣接関連他社を囲い込むことになります。また、普及を他社に任せれば、全体としてはエンドユーザーを効率的に囲い込むことにつながるかもしれません。このパラドクス(逆説)をしっかり理解しないと、かえってクローズで囲い込みに失敗することになるのです。

 
 すなわち、こういう「開発から普及までを見通した高等戦略」なのです。

 
(p177より引用) オープン戦略の基本は、技術を他に使わせて仲間づくりをし、収益の段階になると別の仕掛けでその仲間を一網打尽にするというやり方なのです。

 
 この戦略は、インテル(インテル・インサイド)やアップル(アップル・アウトサイド)が優れて活用しています。「準完成品」を提供して、そのまわりに関連製品・サービスをビルトインすることにより様々な「完成品」をつくりあげ、ひろくユーザを獲得していくというやり方です。

 
(p204より引用) インテルとアップルの違いは、基幹部品と完成品の違いではありません。実は両方とも「準完成品」なのです。・・・「準完成品」として見ることがコツなのです。そして、それを感性させるために、どうやって他とつなげるのかを検討すべきなのです。そのためにインテルのように、同一レイヤーにおける部品間(正確には準完成品間)のインターオペラビリティ(相互接続性)をどう確保するのか?あるいは〈iPhone〉のように、上下のレイヤーとの間でどのようにインターオペラビリティを確保するのか?同一レイヤー上の仕掛けとレイヤー間の仕掛けを「準完成品」というコンセプトで検討することが、実は、極めて重要になります。

 
  ビルトインパーツを提供する企業がユーザを拡大してくれ、その収益は、最終的には「核」を提供しているインテルやアップルに還元されるというモデルです。
 このような「ディフュージョンのフェーズでの戦略的オープン化」が今後の知財マネジメントの要諦となるのです。
 
 

技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由 技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2009-07-31

 
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い
 
TREview
TREviewブログランキング
 
人気ブログランキングへ

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イノベーションとインプルー... | トップ | 古寺をゆく1 興福寺 (「古寺... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事