高速増殖原型炉「もんじゅ」
何かと話題に事欠かない「もんじゅ」がまたしても大きなミスを侵した。
12月6日付け朝日新聞は次のように伝える。
原子力規制委員会は5日、日本原子力開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)で必要な手続きをしないまま
約1万点の機器の点検時期を延長させる管理不備があったとして、保安規定違反にあたると認定した。
原発の危険性を再認識し、「脱原発」へ大きく舵を切ろうとしているこの時期に、
何という自覚に欠けた体質を露見した一件ではないか。
機器の点検時期を延長する場合、安全性を評価したうえで点検計画を変更する必要がある。
しかし、2010年7月以降、点検対象の機器約4万点のうち9679点で変更手続きを怠っていた。
(太字は朝日新聞からの引用)
2011.3.11の放射能拡散事故が起きたにもかかわらず、
点検の不備の改善を怠っていた無神経さに、恐ろしいものを感じる。
高速増殖炉はプルトニウムを燃料にし、運転しながら燃料を増殖させる原発。
原発の使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを高速増殖炉で燃やして
利用する計画を「核燃料サイクル」という。
「原発ゼロ」をめざすなら、核燃料サイクル計画は必要ない。
かっては核燃料サイクルの実現を目指して研究、開発していたが、技術的な難しさ、
高いコスト、核拡散の問題を理由に、欧米はすでに撤退している。
(写真・高速増殖炉「もんじゅ」)
高速増殖炉「もんじゅ」の計画も遅々として進まない。
1970年代にはその実用化を「1995年~2005年ごろ」と目標設定していたが、
現在では「2050ごろまでに」実用化を目指すとしている。
「もんじゅ」は発電からまもない1995年12月に冷却材のナトリウム事故を起こした後、稼働していない。
現在までに9千億以上の資金が投入されたにもかかわらず、実用化の目途さえどんどん遠ざかっていく。
しかも、停止中にもかかわらず1日5500万円の維持管理費を費やしている。
「もんじゅ」は原型炉であるから、研究・開発が進めば、実証炉、実用炉と進めなければならず、
ますます実用化から遠ざかっていくことは必然である。
軽水炉の原発が外国から丸ごと輸入されたのに対して、「もんじゅ」は国産開発のシンボルだったから、
「政府も原子力ムラ」の専門家たちも、必死になって自分たちの城にしがみついたといわれても仕方ないだろう。
「もんじゅ」で冷却材に使用されるナトリウムは水と爆発的な反応をするため、
制御が難しく、事故が起きた時の危険性は極めて高い、と専門家は指摘する。
「脱原発」から「自然エネルギー」の活用へと、エネルギー政策の大転換をしなければならないときに、
「核燃料サイクル」は上記の流れに逆行する流れではないか。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す
再処理事業も根本的に見直さなければならない。
脱原発を本気で考えるなら、「核燃サイクル」問題は避けて通ることはできない。
即時「廃炉」とは言わないが、「原発」はいらない。
未来は「原発」を必要としていない。