雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内 「コラプティオ」

2014-06-15 16:30:00 | 読書案内

           

 読書案内「コラプティオ」       

真山 真 著   文芸春秋刊   

 本書は、「別冊文芸春秋」に連載されたものであるが、

連載最終回3日前に東日本大震災が発生した。

そのため、その震災と原発事故を踏まえて、大幅に加筆修正をしたものである。

 その内容が、あまりにも現実の政権の姿に似ていて、愕然とする。

小説に特定のモデルがあるわけではなく、

扱っている問題が、普遍的、現実的だということなのでしょう。

 震災後に現れたカリスマ総理・宮藤は、

原発事故を経験し、克服した日本だけが世界に安心を届けることができると、

海外への新規原発建設の受注交渉に舵を切る。

 これを支える若き内閣調査官・白石望は総理の信頼も厚い。

政治という巨大権力に立ち向かい、原子力政策にまつわる「疑惑」を暴こうとする新聞記者・神林裕太。

 「原子力政策の推進」に舵を切った時から、多くの利権が絡み合い、権謀術数の世界が繰り広げられる。

決して本音では語れない、

駆け引きと、力のバランスをどのようにとっていくかが政治手腕であり、結果の良し悪しを左右する。

政策の推進のためには、総理を支える側近さえも更迭してはばからない政治の世界。

神林の著名記事の、政治家の在り方言及した個所が印象的である。

「政治家とは自らの言動行動に責任を持ち、無心の心で国民に尽くすものをいう。

巨大な権力を掌握できるだけに、その世界に身を置くための覚悟が試されるのだ」と。

 タイトルの「コラプティオ」とは、ラテン語で「汚職・腐敗」という意味だそうですが、

権力の独占は、政治的混乱の源であり、「汚職・腐敗」に繋がっていくのか。

 原発の利権争いに各国の動きは、いかにして権利を獲得するか、

そのためにはなりふり構わず、相手国を叩き潰す。

水面下の駆け引きと、原発導入国が展開する、「いかに安く、良い条件」で原発を手に入れるか。

莫大な汚れた資金が動く。それでも、現実は利権を手中に収めた者(国)が生き残っていくのか。

 こうした闇を追求し、暴いていくメディアの真価が問われるところである。

                  評価 ★★★★☆          (2014.6.15)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする