エボラ出血熱(6) ―消えた陸自派遣―
このニュースは2/18付朝日新聞の夕刊で報じられた。防衛省幹部の話として掲載。
陸自の輸送部隊が現地(シエラレオネ)で医師や物資の輸送を担うほか、海上自衛隊の輸送艦と補給艦も西アフリカ沖に展開して陸自隊員の拠点とする計画で、派遣隊員は、400人規模となる見通し。
政府のエボラ出血熱対策ではこれまでに防御服50万着の供与を国連で発表、最初の2万着は民間機がこれを輸送した。
昨年12月自衛隊機も輸送等に参加し、医療関係者が使う防御服関連物資を西アフリカ・ガーナに運んだ。国際緊急援助法に基づくエボラ出血熱対応で自衛隊が初めて海外派遣された例だ。
今回の陸自派遣検討については、防衛省は防御服等を提供するだけでは貢献が足りないと、自衛隊員が現地に入り、医師や物資の輸送あたり、援助活動の内容をより充実したものにし、現地の実情に合った支援の展開を想定、派遣の検討に入った。
英連邦加盟国であるシエラレオネに対し、英国はこれまで軍部隊を派遣して、感染対策に尽力してきた。その英国が一時撤収することになり、不在期間の部隊派遣を各国に要請したのを受けて、冒頭の陸自派遣計画の検討となった。だがその7日後の23日、陸自派遣の見送りを発表した。
安倍政権が進める「積極的平和主義」の理念にかない、自衛隊の実績づくりにもなる。しかし、部隊派遣には艦船で約50日かかり、緊急の派遣には時間がなさすぎる。加えて、西アフリカで猛威を振るったエボラ熱も、大幅に減少している。一時2800人の兵士を派遣していた米国も4月末までに、約100人を残し撤収する方針を公表している。
隊員の感染リスクがあるなか、「他国が撤退する中でなぜ行くのか」という慎重論もあり、陸自派遣の計画は、たった7日間で幻の計画になってしまった。
艦船配備の日数も、米英の派遣部隊撤収のことも全て派遣検討以前にわかっていたことではないか。国家の安全を担う防衛省の計画にしては、お粗末すぎるのではないか。陸自派遣など毛頭する気もないのに、国際社会に向けてのパホーマンスではなかったのか。憤りを覚える。
2015.3.1 (昨日の風 今日の風№20)