ことの葉散歩道(7) (2015.4.8)
声なき詩
わたしはわたしのじんせいをどうどうといきる 堀江菜穂子 |
朝日新聞4月6日朝刊は、次のように伝える。
寝たきりのベッドで詩を書き続ける女性がいる。
堀江菜穂子さん(20)。
脳性マヒのため手足はほとんど動かない。
わずかに動かせる手で紡いだ詩は約1200編。と、リード記事は紹介している。
大坂発達総合療育センター長・鈴木恒彦氏は
「重度の脳性まひで話ができなくても、言葉は理解している人が少なくない」と話す。
詩を作るようになったきっかけは、高等部のころ周囲の人の会話の端々から、
自分が何も考えていないように思われていると感じた。
だから詩を書くことが「心をかいほうするためのしゅだんだった」という。
「せかいのなかで」という詩を紹介しよう。
このひろいせかいのなかで わたしはたったひとり
たくさんの人のなかで
わたしとおなじ人げんはひとりもいない
わたしはわたしだけ それがどんなにふじゆうだとしても
わたしのかわりはだれもいないのだから
わたしはわたしのじんせいをどうどうといきる
作者の心のおおらかさと、かけがいのないたった一人の命を詠う。
この詩を前にして「生きるとは」とか「死とは」などという議論は何の役にも立たない。
「じんせいをどうどうといきる」。
言葉の重みが伝わってくる。次は「ありがとうのし」から。
いつもいっぱいありがとう
なかなかいえないけれど いつもこころにあふれている
いつもいえないありがとう いきばをうしなってたまっている
いいたくてもいえないありがとうのかたまりが
めにみえない力になって
あなたのしあわせになったらいいのにな
彼女にとって、「ありがとう」は生きている証なのだ。
まわりのひとに「ありがとう」、そして自分に「ありがとう」。