読書案内「鹿島臨海殺人秘曲」草野唯雄著
本の購入には次のような基準を持っている。
① 作家によって選ぶ。好きな作家が主体となるので失敗はあまりない。
② タイトルに魅かれて選ぶ。失敗が多い。例えばご当地本など、私にとってゆかりのある土地が舞台になってい る小説。「鹿島臨海…」もその一つだ。
③ 本の装丁によって選ぶ。失敗が多い。表紙に綺麗な絵が描いてある本等。
④ 映画やドラマ化した本を選ぶ。原作と映像化された内容を比較し、それぞれの作者の視点の違いによって原作をより深く理解することができる。
②③は失敗の確率が高いが、道楽趣味(コレクション)なので仕方がない。以上の基準に照らし合わせれば、今回の「鹿島臨海…」は②③に該当する。従って失敗。
徳間新書 1994.7刊 絶版
ご当地小説と言っても、なぜ鹿島臨海なのか必然性がない(ご当地小説に多いパターン)。
茨城県・水戸駅を始発とする鹿島臨海鉄道大洗鹿島線があり、その4番目の駅に大洗駅がある。
主なる舞台がこの大洗になる。
地方の小さな漁港と、夏には海水浴で賑わう小さな町だ。
殺人現場は東京・渋谷だが、容疑者と思われる父親殺しの実の娘が、
母の実家のある水戸に逃げてきたという経緯だけが「鹿島臨海・大洗」との接点だ。
第二の殺人が起こり、最初の事件とどんな関係があるのか。
取って付けたような第二の殺人だ。誰が殺したのか。簡単に割れてしまう犯人。
倒除法で書かれたミステリーだから最初から犯人や犯罪動機など解っている。
ネタばれの犯人をいかにして追いつめて、解決に導いていくかが倒除法の特徴だ。
作家に力量がないと駄作になってしまう。21年前に書かれた小説で現在絶版。著者も他界。
倒除法のミステリーには、松本清張の「黒い福音」がある。長い小説だが一気読みができる。
評価: ☆☆