読書案内「魂でもいいから、そばにいて」
3.11後の霊体験を聞く(2)
会いたいという切ない願いに託された不思議体験。
妻と1歳10ヶ月の次女を亡くした亀井さんの体験。
多くの生き残った人々が、
「なぜ助けることができなかったのか」と後悔し、
自分を責めながら生きている。
亀井さんもまた涙にくれながら、
二人の遺体を探して瓦礫の山をさまよい、
二週間後に発見された二人の遺体を火葬にした夜、
妻と娘が夢の中に現れた。
だが、
夢の筈の映像が亀井さんの脳裏に何度も鮮明に浮かんでくる。
翌年の一周忌にも同じような映像を見た亀井さんは日記に次のように書いた。
〈夢から覚めても、目を閉じると、同じ二人の姿が見える。夢ではないと!これは魂だ。「おいで、おいで……」泣きながら手を伸ばすが、遠くで手を振るだけ。苦しい……くるしいよ。二度と抱きしめられないのか!〉
亀井さんの脳裏に同じような映像が現れるたびに、
津波でさらわれた遺品が発見される。
ビデオテープ、写真、デジカメ、婚約指輪、ピカチュウ、お猿のぬいぐるみ等、
二人の魂が導いてくれたのだと亀井さんは思う。
三年後の命日3月11日にも、
土盛りした土の横の溝の中に記念の腕時計を発見する。
「こういう体験が無かったら生きられなかったかもしれません。妻と子どもと家を根こそぎ亡くしたんです。かなしい、寂しい、辛いばかりだったら身が持ちません。そういうとき、妻と娘は私に頑張れよと力をくれるんでしょうね。あの世で逢えるんだからって」
読者にとって亀井さんの次の述懐が救いとなります。
最近、
夢の中に笑顔で現れた妻は、
『どこにも行かないよ』と言っている。
かけがえのない人を喪った亀井さんが、
その愛しい人から励まされているという。
霊はあの世とこの世の境目に漂い生き残って絶望の淵にたたずみ戸惑っている人を、
生きる明日へと導いているのだと感じる亀井さんの体験です。
(『待っている』『どこにもいかないよ』亀井茂さんの体験から)
(2017.9.29記) (読書案内№111) (つづく)