黄昏時を生きる ①
小説「恍惚の人」は
目の前に起こりつつある高齢者社会への警鐘でもあった。
高齢社会について:
高齢化社会とは……65歳以上の人口が、全人口に対して7%を超えた社会のこと。
高齢社会とは ……65歳以上の人口が、全人口に対して14%を超えた社会のこと。
超高齢社会とは……65歳以上の人口が、全人口に対して21%を超える社会のこと。
さて、日本の高齢社会はどのような経緯をたどってきたのでしょうか。
1970年代に高齢化社会に、その後25年足らずの1994年には高齢社会に突入、
その約半分の13年後には14%を超える超高齢社会が訪れました。
2025年には30%、2060年には約40%に達するであろうと、
統計グラフ(公益財団法人・長寿科学振興財団)は容易ならざる未来を暗示しています。
グラフには少子高齢化の現実を如実に物語っています。
高齢化の高い国には、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカなどが知られていますが、
これらの国の高齢化率は長い時間を(50~100年)かけて到来した人口現象です。
日本のように30年ぐらいで高齢化を迎えた社会は世界に例を見ないといわれています。
社会学の世界では高齢社会の到来をかなり早い段階から予測し、
警鐘を鳴らしていた。
だが、
政治の社会では見えない近未来の社会についてはなかなか手を打つことができない。
どうしても、現実に抱えている問題に追われ、
それさえも完全に対応することはできない。
国民の希望も、「今そこにある現実」の改善を望む傾向にある。
少子高齢に伴う問題は、
社会保障や労働問題など多くの構造的、複合的社会問題を含んでいる。
1970(昭和45)年、65歳の高齢者の全人口に占める割合が7%を超えた。
高齢化社会の到来である。
だが、この時点で将来に不安を抱いた人は少なかった。
有吉佐和子は時代の流れを敏感に感じ取り、2~3年の時間を費やし、
当時新潮社が力を入れていた「純文学書下ろし作品」の一冊として
「恍惚の人」を世に出し、高齢化社会に警鐘を鳴らした。
まだ、アルツハイマーとか、認知症などという言葉が、社会の中で
使われていなかった時代の時だった。
「恍惚の人」はやがて当時の流行語にもなっていき、
果たして、長生きすることがいいことなのか?
誰もが一度は直面しなければならない老いの問題に
一石を投じた「警鐘と問題提起」の書だったように思います。
1972年(昭和47)発刊。有吉佐和子著 新潮社
(画像は1982年発行の新潮文庫)
著者の言葉: 数年前から私は自分の肉体と精神に飴色に芽吹き始めた老化に気づき、
同時に作家としてこれは最後まで直視しようと決意していた。外国へ
出かけると老人の施設を隈なく見学し現代にあっておいて生きるのは
自殺するより遥かに痛苦のことであると悟った。科学の進歩は人間の
寿命を延ばしたが、それによって派生した事態は深刻である。
今から48年前の初版本に書かれた言葉です。
(黄昏時を生きる№1) (2020.2.24記)
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