縄文最古の人骨が語るもの
この人骨から種々のことが判明した。
栃木県宇都宮市の大谷寺(大谷観音)
写真でお分かりのように、
大谷石凝灰岩(吸湿性に富み、柔らかく加工しやすいために蔵の外壁や屋敷を囲む塀などに利用される)が、
風化し浸食してできた洞窟内に建てられた洞窟寺院である。
凝灰岩の岸壁に掘られた4.5メートルの千手観音が本尊であるところから大谷観音とも称される。
伝承であるが、この磨崖仏の千手観音は、
平安時代初期の弘仁元年(810年)弘法大師の作と伝えられています。
千手観音を含む、伝釈迦三尊像、伝薬師三尊像、伝阿弥陀三尊像の10体は学術的にも貴重なものといわれ、
国の特別史跡と重要文化財に指定され、日本最初の二重指定を受けています。
最初は、岩の面に直接彫刻した表面に赤い朱を塗り、粘土で細かな化粧を施し、
更に漆を塗り、一番表には金箔が押され金色に輝いていたが、長い年月を経て風化し、
現在は写真のように当時の光り輝く神々しさは失われている。
最新の研究では、バ―ミヤン石仏との共通点が見られることから、
実際はアフガニスタンの僧侶が彫刻した、日本のシルクロ―ドと考えられています。(大谷寺・ホームページより抜粋)
これらの石仏群のある洞窟は、古代人の住居だったようです。
新聞記事を紹介しましょう。
読売新聞1998(平成10)年5月29日の新聞記事で、33年前に出土の人骨としてあるので、
1955年に発見、今から64年前の発見ということになります。
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大谷寺岩陰遺跡刻まれた先に紹介した磨崖仏10体が刻まれる遥か昔にこの岩窟に、
縄文人の生活の場があったという。
人骨の発見は、磨崖仏の保存工事の過程で発見された。
なんと、感慨深いことか。
「磨崖仏のお導き?」などと、古の昔に思いを馳せ、想像力を広げるのも楽しい。
縄文草創期から人間を襲う感染症があった。
大谷寺洞穴遺跡 病んだ人骨の語るもの。
2000年3月。
栃木県立博物館が次のような研究結果を発表した。
1998年に出土した17000年前の草創期に属する二十歳前後の男性の骨に、
本来対称性である上肢骨と鎖骨に非対称性病変があり、
末梢神経損傷、脊髄性小児麻痺(ポリオ)等の筋疾患が考えられるというのだ。
この遺跡では縄文前期(縄文草創期・男性人骨が生きていた時代の次の時代)の成人女性の人骨も
出土している。
しかも、この女性の下肢骨にも同様の病変のあることが分かった。
脊髄性小児麻痺(ポリオ)はウィルスの伝染によって、
全身性感染を起こす病気で、身体の一部に麻痺を残す。
死亡率も高い。
これらの病気がポリオだとすれば、
この地域では長い間にわたって生命を脅かす感染症に悩まされていたことになる。
縄文人を悩ませた病気に虫歯があり、地域によっては抜歯の風習も確認されているが、
この習慣は虫歯予防の呪術的な意味もあったのかもしれないですね。
脊髄性小児麻痺(ポリオ)に罹り、運動能力の著しい低下を招いた縄文最古の成人男性は
手厚く葬られていたことに古代人の死者に対する思いやりが感じられます。
大谷寺の屈葬された縄文最古の人骨は、同寺の資料館の片隅で
17000年の時を今も眠り続けている。
参考資料: 大谷寺パンフレット
列島の考古学 縄文時代 能登 健著 河出書房新社2011刊
ポリオ ポリオウィルスによる感染症で、脊髄神経の灰白質が侵され、
夏かぜのような症状が現れたのち、急に足や腕が麻痺し動かなくなる
疾患・指定伝染病(ニッポニカより要約)
(2019.10.23記) (つれづれに…心もよう№94)
メモ№1362
小平次です
素敵な記事をありがとうございました
縄文時代の人骨の中で、明らかに他からの力により傷を負った、受傷人骨の研究によれば、ほぼ縄文時代全期を通じ、集団対集団による戦闘の痕跡が見られないそうです
1万年以上もの間、おおむね平和な時代が続いていたと考えられるそうです
考えてみれば、日本の歴史の大半はこの時代なのですよね!
ありがとうございました
ずっと昔に読んだ縄文関係の本の中に、受傷人骨の写真が載っていました。
集団対集団のための傷ではないが、後頭部への陥没骨折でした。解説では穴などに落ちた際の傷なのか、誰かからの卑怯な一撃にあってできた傷なのか定かではないと。縄文への思いは古代のミステリーとなって、小生の心を虜にしてしまうのです。
東の磨崖仏といわれるだけあって西の臼杵磨崖仏にひけをとらぬ見事さでした。^^
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/07711e4ecd2fa9cc150b4394bb75ca9d
大谷寺の記事をアップする時、
臼杵の磨崖仏がとても気になっていました。
あらためて、もののはじめさんのブログで拝見させていただきました。
どの石仏にもそれぞれの趣があり、59体が国宝であることを知らされ驚きました。
ありがとうございました。