スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ヒールスタイル&禁欲

2013-04-22 18:41:46 | NOAH
 国際血盟軍の結成は,鶴見五郎にとっては不本意なものでした。その理由に関しては鶴見自身がインタビューの中で明かしています。一言でいえば,それは鶴見にとって,やりたいプロレスではなかったのです。
 鶴見がやりたかった,あるいは見せたかったのは,本当のヒールスタイルであったと鶴見は述べています。ベビーフェイスとヒールという枠組みだけでいうなら,国際血盟軍というのはヒールに属するとはいえます。しかし鶴見の認識においては,それはあくまでも二分した場合のヒールであって,本当のヒールではないということなのでしょう。いい換えれば,国際血盟軍というのは,ベビーフェイスである馬場に敵対するという意味でヒールなのであって,これは相対的なものです。鶴見が本当のヒールスタイルということばで意味しているのは,おそらくそのような相対的な意味におけるヒールなのではなく,絶対的な意味でのヒールであったのだろうと思います。インドの狂虎上田馬之助と組んでいればそういうスタイルを見せることはできるけれども,国際血盟軍という枠組みの中では,そこまで大きなインパクトをファンに対して残すことができないと鶴見は考えていて,それが国際血盟軍の結成が鶴見にとって不本意なものであったことの大きな理由になっていたようです。
 さらにもうひとつ,鶴見は本当のヒールスタイルというものを見せていた時代は,シンや上田とだけ組んでいたわけではなく,ほかの外国人レスラーをパートナーに試合をするということもありました。そもそもシンはすべてのシリーズに参戦するわけではありませんが,鶴見はフリーとしてもっと多くの試合に参戦していたのですから,これは当然といえば当然です。しかし,国際血盟軍という日本人だけのチームを結成してしまうと,そういうことは不可能になります。このことも鶴見にとっては不本意であったようです。
 国際血盟軍は本当のヒールではなく,ラッシャー・木村を盛り立てるグループだったと鶴見は回顧しています。自身の役回りを理解し,それに則ったプロレススタイルに徹して仕事を続けた鶴見は,本当の意味でのプロであったといえるかもしれません。

 第一部定理二六証明への疑問に関しては,僕には解答を与えることができません。ただしそれは,答えが分からないということではありません。むしろ今回の考察の主旨から考えてみた場合に,解答を与えるということ自体に禁欲的であるべきではないかと思われるからです。そこで,ここで改めて今回の考察の主旨というのを,より詳しく説明しておきましょう。
 すでに書いてきたように,今回の最終的な目標となるのは,スピノザの哲学,とくに『エチカ』において,ある事物が積極的であると表現されるときに,その積極的ということがどういう内容を有していると理解するべきであるのかということを明らかにすることです。その際,第一部定理二六証明における訴訟過程で,スピノザが積極的ということばを用いているということを着眼点とすることで,その目標を果たそうとしているのです。
 しかし,この証明には,それ自体のうちに疑問を呈することが可能であるというのが僕の考え方ではあります。ですから,目標を達成するためには,その疑問を先に除去しなければならないのが本当のところであるといえるでしょう。ところが,この疑問の内容というのをよく吟味してみますと,この疑問への解答自体が,最終的な目標の達成に大きく影響を及ぼしてしまうように思えるのです。
 この疑問のうち,③に対する疑問というのは,①に対する疑問と②に対する疑問,このふたつの疑問に関してはふたつでセットとも理解することが可能ですが,いずれにしてもそれらに対する疑問への解答が与えられていないならば,解答すること自体が不可能になっているといえます。これに関してはとくに詳しい説明は必要ないでしょう。
 しかるに,①の疑問というのは,事物が積極的であるといわれる場合とほぼ直接的に関係してくるような疑問であるといえます。したがってもしも本来の手順通り,先にこちらの問いに答えれば,そこから積極的であるということの意味が与えられてくることになります。いい換えれば,僕はこの問いに対して任意に解答を与えることによって,積極的であるということが有する内容に関して,操作することが可能であることになります。これは考察の公平性に関係するような観点から疑惑を招きかねません。よって僕はこのことには禁欲的であるべきだと考えるのです。
コメント
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