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脳動脈瘤 その11 脳動脈瘤をできにくくする薬剤はあるのか?

2020年03月23日 | 動脈瘤
さて、前回の続きです。
脳動脈瘤ができにくくする薬はあるのでしょうか?
結論から言うと、まだ見つかっていません。
ただし、いくつかの候補があります。その中でも血管の炎症を抑える薬が注目されています。
これは脳動脈瘤が形成される原因の1つに血管壁の炎症が関与することが知られているからです。
もし慢性的な血管壁の炎症が動脈瘤形成の主原因の1つであるのなら、炎症を抑える薬を継続して内服すれば、動脈瘤の形成を抑えられるはずです。

抗炎症薬の代表的なものには
1)ステロイド(副腎皮質ホルモン)
2)アスピリン(体内で炎症などを引きおこすプロスタグランジンの生成を抑える)
3)スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬. 血液中のコレステロール値を低下させる薬で抗炎症作用もある)
4)その他
があります。1)ステロイドは強力な抗炎症作用を有しますが、長期投与での副作用が多いことが知られています。
このため2)アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs: NSAID)が注目されています。
また3)スタチンはコレステロールを下げる薬として有名ですが、上述のように抗炎症作用も有しており、副作用が少ないため有望です。これについては現在わが国で臨床試験が行われています。

いずれも理論的、また動物実験では脳動脈瘤の発生を減らすのに有望視されていますが、また人での効果が証明されたものはありません。
今後の研究の進行が期待されます。



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脳動脈瘤 その10 脳動脈瘤と薬剤(ピル)について

2020年03月22日 | 動脈瘤
みなさんこんにちは。コロナウイルスの蔓延で家から出られない人が多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?
先ほど、抗加齢医学会のWEB講習の録画のため、大阪梅田に出かけてきました。飲食店は空いている感じでしたが、大阪駅には多くの人がいました。
日本では外出規制などが緩やかですが、ヨーロッパやアメリカでは極めて厳格です。また、イタリアの病院での様子を見て恐ろしくなりました。それにしても、日本と何が違ったのでしょうか。
日本では比較的コロナウイルス患者が少ないとされていますが、これはPCR検査を限定してきたためとも言われています。ただ、コロナウイルスによる死亡数も1-3名/日と少ないので、現在はヨーロッパなどに比べてまだ良い状況なのでしょう。しかし感染者数は確実に増えており、油断は禁物です。私は、多くの人出で賑わう様子を見て危機感を持っています。
当面は感染のリスクを高めるとされる3つの条件、1)換気の悪い密閉空間、2)多くの人が密集しているところ、3)近距離での会話や発声、を極力避けるよう気をつけましょう。
  厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の見解」

さて、今回はコメント欄にいただいた、脳動脈瘤と低用量ピルに関する質問に答えたいと思います。
これは「低用量ピルが脳動脈瘤を増やす」というテレビ報道が以前にあったためと思います。少し詳しく解説します。

まず、脳動脈瘤は女性に多いことが知られており、女性ホルモン、特にエストロゲン(卵胞ホルモン)との関係が注目されています。
エストロゲンは、女性らしいからだ作りを助けるホルモンで、8〜9歳頃から卵巣で分泌されるようになります。そして、30歳代まで活発に分泌されますが、40歳代になると、徐々にその分泌量が減少します。そして、ちょうどその頃から脳動脈瘤の診断数が多くなります。またこのホルモンは、血管の修復にも重要であることがわかっていることから、「エストロゲン分泌が減少することが脳動脈瘤の発生と関係するのではないか」と考えられているのです。

ピルにはエストロゲンが含まれており、エストロゲンの補充療法と言えます。経口避妊薬として有名ですが、月経痛の強い方にも使用されています。

以上から、
1. エストロゲンが減ると動脈瘤が増える可能性がある
2. ピルはエストロゲンを補充する薬である
ということになるため、ピルの内服によって脳動脈瘤はむしろできにくくなるのではないか?と考えられます。
今回調べたところ、ピルを内服している人が脳動脈瘤が少ないというデータは見つかりませんでした。一定値以上にホルモン量を増やしても関係ないのかもしれません。しかし、「脳動脈瘤を有する患者さんにおいてはピルやホルモン補充療法を受けている確率が低かった」というデータが見つかりました(表, J NeuroIntervent Surg 2011;3:163-166)。
「ピルが脳動脈瘤を増やす」という報道とは逆のデータになります。このことから、少なくとも「動脈瘤の発生を増やす」危険性についてはあまり心配されなくても良いと考えます。

以上、ピルと脳動脈瘤の発生に関して調べた範囲でお答えしました。ピルは私の専門外の薬ですので、専門医と相談して使用してください。

次回は、このご質問から派生して、脳動脈瘤と薬剤についてもう少し紹介したいと考えます。

コメント (5)
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脳動脈瘤 その9 脳動脈瘤の種類(成因による分類) 細菌性動脈瘤

2020年03月10日 | 動脈瘤
特殊な動脈瘤には、細菌の感染によるものもあり、細菌性動脈瘤(mycotic aneurysm) と呼ばれています。
心臓の感染症である感染性心内膜炎に伴って発生することが多く、心内膜炎を起こした患者さんの1~5%に生じるとされています。
心内膜炎というのは心臓の内膜や弁に細菌(あるいは真菌)が付着して、炎症を起こす病気です。
これによって発熱や全身の関節痛などが起きるのですが、菌が付着した部分が膨れ上がり、いぼのようになることがあります(疣腫:ゆうしゅ)。
これがはがれて飛んでいき、脳の動脈につまると、そこで細菌性動脈炎を起こし、動脈の中膜の炎症が起きることで、動脈瘤が形成されるとされています。
特徴としては、脳の血管の太い部分(主幹部)より細い部分(末梢部)に多いこと、中大脳動脈領域に頻度が高いこと(60~70%)、約20%は多発性であることが報告されています。
また、感染性心内膜炎では脳動脈だけでなく、腸の動脈(腸間膜動脈)などにも動脈瘤が形成されることが知られています。

さて、細菌感染によってできた動脈瘤ですから、抗生物質(抗菌薬)を投与すれば治りそうなものです。
しかし実際には抗菌薬による治療を十分に行っても動脈瘤が縮小せず、破裂してしまうことがあるため、外科的治療が必要となることがあります。

細菌性動脈瘤以外にも、癌に関連した動脈瘤や薬物乱用(特にコカインの習慣的使用)による脳動脈瘤も報告されています。

以上、動脈瘤の成因について紹介しました。
次回からは、動脈瘤による症状についてお話しします。
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ONE TEAM!

2020年03月05日 | 報道・出版関係
みなさんこんにちは!
今日は出版のお知らせです。
放射線技師さん、看護師さんたちと作成した新しい教科書で、その名も「医師・技師・看護師で臨む ONE TEAM脳血管内治療」です。
各項目で、医師、技師、看護師の目線からの解説がなされています。
機会があればぜひお読みください。
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