脳卒中をやっつけろ!

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オミクロン株へのワクチン有効率と新規BA.2株について

2022年02月21日 | その他
我が国でのオミクロン株へのワクチン有効率についての情報が国立感染症研究所から報告されています。
次の図に示すように、ワクチン接種後は非常に高い有効性を示しますが、徐々に低下し50%前後となります。しかし3回目の摂取後は再び80%程度まで上昇しています。



国立感染症研究所「新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第三報)

一方で、オミクロン株は、これまでの変異株より重症化が少ない傾向にあることが報告されています。
このため「かかっても大丈夫」と考えられるかもしれませんが、ワクチン未接種者の入院率(=重症化)は3回接種者の23倍高いと報告されています(https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7105e1.htm?s_cid=mm7105e1_w)。
つまり、ワクチン接種後にオミクロン株に感染してしまっても、症状が出る確率は低く、しかも重症化を減らす効果は依然として高いということです。
入院患者さんが増えると当然、病床圧迫につながります。実際、当院の周辺の病院のいくつかがほぼ満床状態となっており、通常医療が制限されています。
しかも、ごく最近の情報で、日本でも“ステルスオミクロン”と呼ばれるオミクロン株の亜種「BA.2」が増加しつつあるという報告があります。BA.2の感染力はBA.1より約33%高いとの研究もあり、また、BA.2が重症化を引き起こす能力はデルタ株など従来株と同等の可能性があります。また、BA.2は抗体医薬品(ソトロビマブなど)に対して耐性を持つ可能性もあり、感染者数がピークアウトしつつある状況でも予断を許しません。
オミクロン「BA.2」派生株、重症化率高い兆候

ですから3回目のワクチン接種が可能なのであれば受けたいところです。3回目接種希望の人にとっての関心事は「ファイザーかモデルナか?」ということかもしれません。これに関してはファイザー2回接種の方に関しては、モデルナの方が若干感染予防効果が高く、持続期間も長いとされています(下図)。




ファイザー製2回接種後の感染予防効果:英国健康安全保障庁の結果より引用・日本語に改変

オミクロン株へのワクチン有効率、そしてオミクロン株の亜種「BA.2」についての情報の一部をまとめました。
詳しくはそれぞれのサイトを参照してください。
以上、参考となれば幸いです。
コメント (3)
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世界一安い脳血管内治療の教科書を出版しました!

2022年02月19日 | 報道・出版関係
先日も紹介したように、脳血管の病気に対するカテーテル治療(脳血管内治療)の有効性が続々と報告されています。
脳梗塞の急性期はもちろん、日本では脳動脈瘤治療においても過半数が血管内治療となっています。
このような流れの中で、「この技術を学びたい」という若手医師が世界中から私たちの教室へ留学してくれています。これまで多くのメンバーが来てくれましたが、その際に「良い英語の教科書がない」というのが悩みでした。世界には非常に分厚い高価な教科書(1−2万円)は多くありますが、入門編の良いものがないのです。値段も彼らにとっては重荷になりますし、このところコロナ禍で日本に来ることもできなくなっています。

そこで、これまで当科に来てくれた留学生たちと協力して教科書を作りました。
上に示すように入門者向けの「ビギナーズガイド」です。
中身はとても充実していて、解説図や画像、そしてアニメーションへのリンクを用いてできるだけわかりやすくするように工夫を重ねました。
米国、ニュージーランドのエキスパートに監修してもらい、先日ついに完成して、Amazonで出版しました。
A Beginner’s Guide to Neuroendovascular Therapy (English Edition) Kindle版

e-bookなら米国のAmazonでは0.67ドル、日本のAmazonで110円です。
(印刷版は日本だけの販売で6,600円です)

この出版は、主に発展途上国で脳血管内治療を学ぶ若手医師や放射線技師さん、看護師さんなどの知識を深めることを目的としています。
執筆には30名以上の医師、総編集は当科の金城典人先生が頑張ってやってくれました(挿絵のかなりの部分は先生の自作です)。
構想から3年以上、想定よりかなり時間がかかってしまいましたが、その分良いものができたと思っています。
関わった全ての人に感謝すると共に、世界中でこの本が読まれ、一人でも多くの患者さんが救われることを願っています。




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学会ページとメディカルトリビューン誌に掲載されました

2022年02月18日 | 報道・出版関係
今回のランダム化比較試験の報告が学会のページに掲載されました。

International Stroke Conference Coverage

また、メディカルトリビューン誌にも掲載されています。
血管内治療で広範囲脳梗塞の身体機能が改善 RESCUE-Japan LIMIT

お時間があればご覧ください。

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ISC interview

2022年02月11日 | 学会/研究会
今回のISC 2022ではLate breaking sessionという最も権威あるセッションで発表させていただきました。
本当は大会場で発表したかったのですが、コロナ禍のため現地参加できず残念でした。
ただ情報が広く伝われば良いわけですので、医学雑誌だけでなくさまざまなメディアで発信していきたいと思っています。
すでに海外からも多くのメッセージが来ていますが、その中で私たちへのインタビューがYou tubeに掲載されているというものがありました。
拙い英語が恥ずかしいのですが、もしよろしければご笑覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=RpJnZ0pmOWo

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ISC2022発表とNew England Journal of Medicine掲載のお知らせ

2022年02月10日 | 学会/研究会
本日朝に学会発表が終わりました。
発表後、国内外の先生方から多くのご連絡をいただきました。
今回のランダム化比較試験の結果を一言でまとめれば、「脳梗塞が大きい状態でも血管内治療が有効」ということです。
日本から世界に向けてこのように重要な研究結果を発表できて感無量です。
ご指導、ご協力いただいた皆様に心から御礼申し上げます。
特に共同主任研究者の坂井信幸先生と山上 宏先生には研究に関するアドバイスを、森本 剛先生には研究の計画と解析、及び論文化を、さらに各委員の先生方にも本当に大きなご指導をいただきました。
また、何よりもコロナ禍で脳梗塞患者さんに救急対応をしながら登録するこの研究に、実際にご尽力いただいた参加施設の先生方、当科のスタッフたちに心より感謝いたします。
なお、この研究結果はNew England Journal of Medicineに同時出版されました。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2118191
この研究結果をもとに一人でも多くの脳梗塞患者さんが血管内治療を受け、良くなられることを期待しています。

コメント (2)
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