脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
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家庭画報

2023年09月30日 | 報道・出版関係

先日、米倉涼子さんと対談させていただいた記事が家庭画報に掲載されました。

「ドクターX」の強いイメージが印象的だったのですが、実際にはとても優しくて、柔らかな雰囲気の方でした。

医学に関して色々なお話をさせて頂いて、米倉さんの並々ならぬ興味の深さを知ることができました。

また対談では、脳血管内治療が大きな批判を浴びた時期があったことなども含めて、じっくりとお話させて頂きました。

米倉さんも早速インスタグラムにアップされていますよ(https://www.instagram.com/p/CxxRBq-y-EE/

家庭画報は本当に写真が綺麗で、ハイクラスな感じのする雑誌です。ぜひ御覧ください(https://www.kateigaho.com/)。

また、米倉さんの新しいドラマ「エンジェル・フライト」。本当に面白いですよ。こちらもぜひ観てくださいね。

取材は3月末でしたので、半年ほどの間に素晴らしい記事にしていただけました。本対談に際してお世話になった小松庸子さんをはじめ、関係者の皆さんに心から御礼申し上げます。

 

 

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脳動脈瘤についてのQ&A その6 お酒を飲んでいいか?

2023年09月26日 | 動脈瘤

未破裂脳動脈瘤患者さんに「アルコールを飲んでも良いですか?」と良く質問されます。今回はこの質問にお答えしたいと思います。

アルコール摂取と脳卒中との関連性については1989年に報告がなされています(Stroke  1989;20:741-746)。この論文の中で、「過度のアルコール摂取はくも膜下出血を増やす」ことが報告されています。

では「過度」とはどの程度を指すのでしょうか?

この研究では、アルコールの摂取量によって、1)非飲酒者、2)過去の飲酒者、3)1本/日未満、4)1−2本/日、5)3本以上/日に分けています。お酒の種類は多岐にわたっており、ウイスキー, ジン, ラム, カクテル, ブランデー, ウォッカ, etcでした。この論文では、「過度の飲酒」を「5)3本以上/日」としています。

解析の結果、5)3本以上/日の飲酒者は非飲酒者に比べ出血性脳卒中が3.64倍多いという結果でした(RR=3.64,95% confidence interval [CI] = 1.11-11.92)。また血圧での補正をしないとさらに増えていました(3.85倍)。飲酒者に多い高血圧という要素を除いても大量の飲酒(3本以上/日)は出血性脳卒中を増やすことが示されました。

出血性脳卒中には脳出血とくも膜下出血が含まれています。このため、それぞれを分けた解析も行われています。その結果、過度の飲酒者は脳出血が6.82倍多く(RR=6.82 and 95% CI= 1.48-31.44.)、くも膜下出血が1.6倍多いという結果でした(RR=1.62 and 95% CI=0.22- 11.82)。

以上の結果から過度の飲酒は主に脳出血を増やし、くも膜下出血も増やすということになります。

過度のアルコール摂取は血管の壁を弱くするとする報告があり、これが動脈瘤の形成や破裂に寄与しているのかもしれません。

しかし、適度なアルコール摂取はあまりリスクはないようで、この研究では2)3)4)のグループでは脳卒中が増えていませんでした。

以上が米国のガイドラインで過度の飲酒がくも膜下出血を増やす、と記載されているデータになります。

しかし、この研究は未破裂脳動脈瘤を持つ人の破裂率が上がるかどうかを解析したものではありません。また、飲むアルコールの種類が規定されておらず、ワインやウォッカとビールなどが同等に扱われています。確かに1日ワインをボトル3本以上飲むということは「過度」と思いますが、ビール350ml3本であれば随分違う印象です。

またこの研究からすでに35年が経過しており、ライフスタイルや他の危険因子の管理もずいぶん変わってきています。このことから、未破裂脳動脈瘤のある方の飲酒については、厳格な制限をするほどの質の高いデータはなく、常識的に適量と言える程度なら許容可能かもしれません。

ちなみに厚生労働省が示す指標では、適度な飲酒は「1日平均純アルコール20g程度」とされています。具体的には、ビール 中ビン1本、日本酒 1合、チューハイ(7%)350ml缶 1本などです。

ただし、飲酒者は血圧が上がりやすいため、その管理は極めて重要です。

次回は飲酒についてもう少しお話ししたいと思います。

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脳動脈瘤についてのQ&A その5 運動していいか?

2023年09月20日 | 動脈瘤

未破裂脳動脈瘤患者さんからよく「スポーツはして良いですか?」と質問を受けます。今回はこの点についてお話しします。

 

未破裂脳動脈瘤患者さんにおけるスポーツや運動をどうすべきかについては日本のガイドラインには記載がありません。一方、ヨーロッパのガイドラインには、「制限なし」と記載されています(https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/23969873221099736)。

このような理由から、私はスポーツなどのアクティビティを基本的には禁止していません。

しかし、論文によっては高強度の運動が動脈瘤の破裂リスクを上昇させる可能性があると報告していますので紹介します。

 

  1. 高強度の運動
    • 一部の研究では、高強度の運動は運動中に心拍数や血圧を急上昇させ、動脈瘤にかかる圧力が増加することで、破裂の危険性が高まる可能性があると報告しています(J Clin Hypertens. 2022;24:861–869.)。ウェイトトレーニングや全力疾走などの激しい運動などが該当します。
  2. 軽度から中程度の運動
    • 軽度から中程度の運動は血圧コントロールやストレス緩和などの利点があり、心血管を健康に保つ作用があるとされており、脳動脈瘤の破裂リスクを低減する要因の一つと考えられています。ウォーキング、軽いジョギング、水泳、ヨガ、ピラティスなどが該当します。
  3. 個別的な考慮
    • 脳動脈瘤の大きさ、形、位置、増大の有無などは破裂率に影響することが知られており、破裂率が非常に高いと想定される場合には運動制限を提案される場合があります。また、患者さんの健康状態に応じて、運動の種類や強度を調整する必要もあります。

 

私自身は前述のように「基本的に運動制限は必要ない」とする立場ですが、非常に破裂率が高いと想定される患者さんには、脳動脈瘤の治療前に運動制限を提案することもあります。

このように個人によってリスクは大きく異なるため、どこまで運動すべきか迷う場合には、専門医と相談することをお勧めします。

 

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脳動脈瘤についてのQ&A その4 喫煙と脳動脈瘤破裂の関係

2023年09月10日 | 動脈瘤

今回は脳動脈瘤の破裂と喫煙の関係についてお話します。

喫煙が体に悪いことは多くの方が知っていると思います。それでは脳動脈瘤の破裂との関係はどうなっているのでしょうか?

実は以前から喫煙が脳動脈瘤の破裂率を高めることが知られています。今回は喫煙と脳動脈瘤破裂に関する論文を2つ紹介します。

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まず喫煙の程度と期間、そして禁煙との関係についての論文です。

Can A. et al. Neurology. 2017;89:1408-1415.

Association of intracranial aneurysm rupture with smoking duration, intensity, and cessation

 

1990年から2016年までの期間に米国のブリガム・アンド・ウイミンズ病院とマサチューセッツ総合病院(私が留学していた病院です。懐かしい!)で診断された4,701例、6,411動脈瘤が対象となっています。

喫煙の経験がない人に比べ、喫煙者は2.21倍、以前の喫煙者は1.56倍、破裂が多いという結果でした。喫煙本数については1パック(20本)増えると1.46倍破裂が増えるという結果でした(図1)。また喫煙年数とともに破裂が増え(図2)、禁煙からの期間が経つほどへっていました(図3)。

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もう一つは能動・受動喫煙とくも膜下出血との関係についての論文です。

Anderson CS, et al. Stroke. 2004;35:633-637.

Active and Passive Smoking and the Risk of Subarachnoid Hemorrhage - An International Population-Based Case-Control Study

この論文は本日までカナダの学会で一緒になった有名なオーストラリアのAnderson先生が書かれた論文です。

1995年から1998年の432人のくも膜下出血患者さんと、473名の健常人とを比較しています。

喫煙の経験がない人に比べ、喫煙者は5.0倍、以前の喫煙者は1.2倍、受動喫煙者(自宅)は0.9倍、くも膜下出血が認められました。また、喫煙本数x年数でグラフを作成すると右肩上がりになっています(図4)。この傾向は女性でより顕著でした。

また禁煙後はすぐにリスクが低下することも示されています。

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以上2つの論文で、喫煙と動脈瘤破裂(くも膜下出血)との関係が明確に示されています。

喫煙中の方はぜひ頑張って禁煙してくださいね!

 

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ご質問について

2023年09月08日 | 動脈瘤

ご質問をいただきましたのでお答えいたします。

まず基本的に、脂質異常症に対しては食事療法と運動療法を行い、それで効果がない場合に内服薬を処方をするようにしています。

①スタチンの処方基準について伺います。LDLコレステロール、HDLコレステロール、およびTGの基準値を超えた場合のみ処方を検討するのですか?

→ そうです。脂質異常症という診断がついた場合だけ処方しています。

②HDLコレステロールだけが基準値を外れ低い場合でも、スタチンが処方されることがあるのでしょうか?それとも、この場合には異なる薬剤が検討されるのでしょうか?

→ HDLのみ低い場合にはスタチン以外の薬(フィブラート系やニコチン酸誘導体製剤)を処方することがあります。

③スタチンを服薬して基準値内に収まった後も、服薬を続けることで脳卒中や心筋梗塞のリスクを減少させる効果が期待されるのですか?

→ 休薬しても基準値内に入っていれば中止できますが、休薬後に異常値になるようであれば継続します。

④スタチンの服薬を中止する判断基準はどのようなものが考えられるのでしょうか?

→ 採血で数値が下がってきた場合ですが、動脈瘤のある方の場合には、前回の情報を加味して相談して決めています。

⑤アスピリン以外のNSAIDsが脳動脈瘤の破裂に影響を与える理由は何ですか?

→ そこはまだわかりません。

⑥スタチンやカルシウム拮抗薬、アンギオテンシン受容体阻害薬を内服する際に注意すべきことや副作用はありますか?

→ それぞれの薬に副作用がありますので、担当医と薬剤師さんによく確認してから内服を行ってください。

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