脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

多発性ラクナ梗塞における予防

2009年12月31日 | 脳梗塞
Oさんから「多発陳旧性ラクナ梗塞と診断されたがどうしたらよいか」とご質問がありました。
このブログでも、2009年7月25日の「脳梗塞慢性期の病態について ラクナ梗塞ってなに?」、2009年8月28日の「脳梗塞慢性期の治療 はじめに」と、2009年9月06日の「脳梗塞慢性期の治療 基本的アプローチ」でラクナ梗塞について説明しましたが、再度まとめて説明します。

ラクナ梗塞とは「小さな脳梗塞」という意味です。主に脳の血管のうちでも細い栄養血管(穿通枝)が変性を起こしてつまる(閉塞する)ことによっておこります。脳の深い部分にできて、そのサイズは直径1.5cm以下とされます。
一般的には症状は軽度で、脳梗塞と反対側の半身麻痺やしびれ、ろれつのまわりにくさ(構音障害)が主です。意識まで悪くなることはほとんどありません。
もちろん、時には大きめ(直径2cm以上)の梗塞となって、比較的重度のマヒや感覚障害、視野障害を起こすことはありますが、一旦症状が出てもいずれ消失し、慢性期には無症状となることが多い病気です。
ただ、何度も再発すると血管性痴呆やパーキンソン症候群という病状を来しやすいといわれています。

原因としては「動脈硬化」が主ですから、血圧の管理や喫煙、コレステロールや糖尿病の管理など、危険因子の管理が中心となります。
では薬は有効なものがあるのでしょうか?
他のタイプの脳梗塞は再発予防のため内服薬が必須ですが、このラクナ梗塞に関しては上記の危険因子管理だけで様子をみるとする考えと、内服薬、とくにシロスタゾール(商品名プレタール)を使うという考えがあります。
いくつかある脳梗塞の薬の中でも、このシロスタゾールのみがラクナ梗塞の再発予防に効果を持つことが報告されているからです。脳卒中ガイドラインでも推奨されています。

以上、お役に立てたでしょうか?
もしさらにご質問があればメールを頂ければ幸いです。
stroke_buster@mail.goo.ne.jp
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CASの長期成績は? サファイア研究より

2009年12月28日 | 脳梗塞
久しぶりに本論です。
頚動脈内膜はくり術(CEA)と違って頚動脈ステント留置術(CAS)を行った場合、プラークは取り去られるのではなく押し広げられているだけです(上図)。
ですから治療後の長期成績が気にかかります。
心臓ではバルーンを使って血管を広げた後に再狭窄がおこることが知られているからです。
ステントを使うと再狭窄は減りますが、それでもその確率は比較的高く、薬剤溶出ステントを使用する等の工夫が行われています(これについてはまた説明します)。
頚動脈はどうなのでしょうか?

頚動脈の場合には再狭窄がそれほど起きないことが経験的に知られていましたが、サファイア研究の長期成績が最近報告され、よく引用されています。
上の図に示されているように、治療後3年間の観察で、CASで治療を行っても長期にわたって問題がないことが分かります。
特に、「対象血管の再治療」はさすがにCASで多いと思っていましたが、これも差がありませんでした。

「CEAのリスクが高い患者さんに対しては、CASはCEAと同じような結果が出せる。」
このことがこのサファイア研究で実証されたのです。
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クリスマス

2009年12月21日 | 閑話休題
もうすぐクリスマスですねー
病院の中にもこんなかわいい飾り付けがしてありましたよ!
皆さんのまわりはどうですか?
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紡錘状動脈瘤について

2009年12月19日 | 動脈瘤
紡錘状(ぼうすいじょう)動脈瘤について質問がありましたのでお答えします。
脳動脈瘤は一般にその形状から2つに分けられます。
嚢状(のうじょう)動脈瘤と紡錘状(ぼうすいじょう)動脈瘤です。
難しい名前ですが、まず嚢状動脈瘤は上図の左のように、普通血管の分かれ目にできることが多く、本幹から部分的に出っぱった形をしています。英語ではsaccular aneurysmといい、破裂してくも膜下出血を起こすものの多くはこのタイプです。
一方、紡錘状(ぼうすいじょう)動脈瘤というものもあり、上の図の右のように血管全体がふくらんだ形をしています。英語ではfusiform aneurysmといいます。この紡錘状動脈瘤には血管の壁が裂けてできる解離性動脈瘤と普通の動脈瘤があると言われています。

動脈瘤
1) 嚢状(のうじょう)動脈瘤 
2) 紡錘状(ぼうすいじょう)動脈瘤
   2)-1 解離性動脈瘤
   2)-2 非解離性動脈瘤

解離性動脈瘤の場合には解離直後にくも膜下出血や脳梗塞を起こすことがあり、短期に重症化することがあるので急性期の治療が必要です。しかし偶然に見つかった紡錘状動脈瘤は非解離性か、解離してから時間が経過してることが多く、破裂・再破裂する可能性が少ないため、よほど大きくなければ経過をみることになります。中には徐々に大きくなって脳の圧迫症状を出す場合もあります。
では徐々に大きくなった場合にはどうしたらいいのでしょうか?
嚢状動脈瘤と違い、紡錘状動脈瘤では通常のクリッピングやコイリングが不可能です。
このため以前「治療困難な動脈瘤」で説明したように、治療する場合には血管ごと閉塞してバイパス手術を加えることが多いのです。大掛かりな治療となることが多いので、将来的には徐々にステントが使われるようになると思います。

解離性動脈瘤は上に述べたこと以外にも色々と特徴があります。
例えば、若年者に多い、外傷性の場合がある、発症から2週間程度経過すると悪化する可能性が低くなる、などです。
解離性動脈瘤については
http://www.fuchu-hp.fuchu.tokyo.jp/sub/nouge/nou_kairi.html
にくわしく解説されているのでご覧になってください。

参考となれば幸いです。
コメント (1)
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富山の薬

2009年12月15日 | 閑話休題
富山で頭痛薬を買おうとしたらとても面白いものがありました。
コンビニやホテルの中の普通の売店に、見たことのない薬がいっぱい。
どうも地元の薬のようです。「越中富山の薬売り」と言いますもんね。
ちょっとレトロな感じで面白くて、写真を撮らせてもらいました。
でも、実際には普通の薬を買ってしまいました。
勇気ないなあ...

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北陸脳血管内治療ハンズオンセミナー

2009年12月13日 | 学会/研究会
昨日、また富山に行ってきました。
この血管内治療の領域ではハンズオンセミナーというのが盛んです。
実際の治療器具(デバイス)をテーブルの上に並べて、その使用法を練習する講習会のことです。

血管内治療には非常に多くの器具を用いますし、しかもそれぞれが毎年のように改良されています。
ですからこれらの器具の正確な知識を持つことは重要で、使えるデバイスが多ければ治療の選択肢を広げますし、治療結果にも影響します。
デバイスの使い方やコツを知らないと、治療ができなかったり、トラブルのリカバリーができないことさえあります。

しかし、この血管内治療は学会の専門医や指導医がいる施設でしか本格的に行うことができません。
このためそれ以外の施設の先生方はどうしても慣れる機会が少なくなってしまいます。
また専門医試験を受けるために、まとまって器具の知識を整理したい先生もいます。

こういった理由でハンズオンセミナーが全国で開かれているのです。
この北陸ハンズオンは富山大学の桑山先生が主催されていますが、写真の済生会富山病院の久保先生、川崎幸病院の津村先生をはじめ多くの先生方の協力で運営されています。
城山病院 村尾健一先生、虎ノ門病院 松丸祐司先生とともに私も3年連続で講師をさせて頂いています。
定員以上の応募があったようで、会場は熱気に包まれていました。
参加された先生方の活躍を期待したいです。
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橋本君、がんばれ!

2009年12月08日 | 人物紹介
ファイザー製薬の超優秀MR、橋本真明さんを紹介します。
彼は、同社のリピトールというコレステロールを下げる薬を担当していました。
私は当時不勉強でこういった薬の知識を持ち合わせていませんでしたが、彼のおかげで徐々に詳しくなり、講演までするようになりました。
その極めつけは臨床研究です(上図)。
当科の山田清文先生が行っていた頚動脈エコー検査に目を付けた彼は、
「どうですか先生?この薬を飲めば頚動脈のプラークも安定化しないですかねー。清文先生のエコーなら分かるんでは?」とささやいたのでした。
すっかりその気にさせられた私は、彼の言葉どおりに前向きランダム化研究を組み、倫理委員会を通して清文先生に研究させることに!
そしてその結果は見事にポジティブ!!!
リピトール20mgを毎日内服すると、狭窄度30-60%の頚動脈プラークが半年間でみごとに安定化していました。
この研究の結果はこの度、Cerebrovascular Diseaseという海外の専門誌に掲載されました。
早くも全国の先生方から、この論文のファイルの引き合いがあります。(欲しい方がおられたら連絡を下さい!)

私一人ではとても発案できなかったこの研究。
論文に名前はないけれど、橋本君なくしてこの研究はできませんでした。
本当にすごいヤツです。心から感謝!
しかし何と!彼も転勤してしまうのです。私はとても悲しい(;;)
でもこれから彼が担当するのは東京大学とのこと。
優秀な彼なら、きっと東大でもいい仕事をすることでしょう。がんばれ!

橋本君、色々有り難う。これからの君の活躍を心から応援しています。

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広島にて

2009年12月07日 | 学会/研究会
先週、広島に呼んで頂きました。
今回は先日の富山での学会で発表した全国アンケートの結果を加えて、急性期脳梗塞治療についての講演をしました。
広島でも多くの先生方が血管内治療を行っておられることを知りましたし、講演後、たくさんの質問や激励のコメントを頂き、感激しました。
会が終わってからはおいしい牡蠣をいただきましたよ!
楽しい会に呼んで頂いて有り難うございました。
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造影剤アレルギーについて

2009年12月02日 | 動脈瘤
造影剤アレルギーについてMasayoshiさんからコメントを頂きました。
冠動脈は専門外ですが、調べた範囲でお返事致します。

造影剤アレルギーについては「最近は造影剤の改良でほとんどなくなっている」との記載も見受けますが、実際以前このサイトで紹介した患者さんやMasayoshiさんのように最新の非イオン性造影剤でもショック状態になる方がおられます。
日本医放会誌によれば、非イオン性血管内投与造影剤による重度副作用の頻度は、2.5万例に1例、死亡例は40万例に1例と報告されており、非常に稀です(しかし当院の説明文書ではきっちりとその確率が記載されています)。
ただ、すでに造影剤アレルギーの既往がある方が再度投与を受けた場合には、アレルギー発作はほぼ必発と考えた方が良いと思います。

インターネット上に造影剤アレルギーに関する記述のあるサイトは多くあります。例えば
http://www.fujita-hu.ac.jp/~sfujii/satuei/satuei06.html には
「ヨード系造影剤の副作用をヨード過敏症といい、経口用の造影剤ではほとんど発生しないが、注射用で発現する確率が高い。軽度のものは、くしゃみ、悪心、蕁麻疹等が現れ、重症な場合は顔面蒼白、呼吸困難、血圧低下、チアノーゼ、さらに重篤な時は虚脱、心臓停止を起こす。」とあります。
また 
http://intmed.exblog.jp/4390439/ には
造影剤ショック予防対策を行っても、その有用性が少ないことが記載されています。
以上をまとめると、「造影剤アレルギーの予知のためのテストはリスクがあるため最近行われず、しかもアレルギーの予防治療もあまり有効なものがない」ということになります。このため実際の医療現場では、過去の既往についての問診を行うことと、投与後早期に十分な患者さんの観察を行うことが重要とされています。

したがってMasayoshiさんのように過去に造影剤アレルギー症状が明らかにあった方はできるだけ同じ造影剤の投与を避けるのが良いとされており、どこの医療機関も造影剤を使った検査は勧めないと思います。
それでは冠動脈を一生検査できないのか?ということになりますが、そうでもありません。

血管造影に代わる検査法としてCTやMRIを使った方法があります。
これは以前このサイトでも、脳の血管の検査のところで説明しました。
冠動脈でもこれらの検査が可能になってきました。CTでは血管造影と同じ造影剤を使うので、造影剤アレルギーの方には行えませんが、MRIを使ったMRAという検査法は、造影剤を用いず血管の構造をある程度調べることができます。
下記のサイトを参考になさってください。
http://www.jc-angiology.org/journal/meeting/abstract.php?mc=48&p=SY-4&no=6
http://rdsv.medic.mie-u.ac.jp/rad-home/sh-1a.htm
http://tohoku-b.umin.ac.jp/data/17bukaizassi/17_page096.pdf
などです。

ただしMRAは冠動脈造影やCTAよりも画質が劣るのが欠点です。その診断能力に否定的な見解もあります。
www.onh.go.jp/seisaku/circulation/qa305.html

このため少しでも画質が良く(1.5テスラ以上)で、こういった検査の経験の多い施設で相談されてはどうかと考えます。
以上、参考となれば幸いです。

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