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脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

セカンドオピニオン

2008年03月26日 | 動脈瘤
下記のようなコメントをいただきました。
このような相談がいただけるのは大変うれしいことです。このブログも少しはみなさんのお役に立てているのかと思います。
勝手ながら下記に引用させていただきます。
...........................................................................
はじめまして。お忙しい中このようなブログを作って頂き とても嬉しいです。何故なら 私は現在45歳女性です 2年前脳ドックで未破裂脳動脈瘤3ミリが見つかり 手術の話が 出ていました。その後3D-CT検査の結果 ロート状拡張 の診断が出て担当医からは80%大丈夫だろうと、、言われました 安心しておりましたが 2年経って主治医が退職し担当医が変わりました。『見識の相違としか言いようがありませんが、動脈瘤に間違いないと思います、、。』
年齢が若いので 余命までの破裂率が高いこと 出来た場所が 後交通動脈 とのことで 再び手術を勧められています
そんな馬鹿な、、、っと、再び奈落の底へ突き落とされた気持ちでいっぱいです
脳外科の先生によって 見識とはそんなに代わってしまうものなのでしょうか
また、本当に3ミリ 後交通動脈 年齢 で手術が必要なのでしょうか 経過観察 ではだめなのでしょうか この2年間 無事過ごせていただけに 即手術の必要性が理解できません ご助言頂けたら 幸いです
このようなブログに出会えた事 嬉しくもあり 心の支えになっております
益々のご活躍願っております
...........................................................................
私はこの方の検査結果を直接見ていませんが、良いアドバイスができます。
このような場合に最も良い方法は「別の医師の見解を求めること」です。「第二の意見」、英語で「セカンドオピニオン」を受けることが最善の策と考えます。
実際、医者によって見立てがずいぶん違うことがあります。
私は研修医時代に「前医の意見を患者さんの前では尊重しなさい」と教えられました。後の医者には、その後の経過も分かるし検査などの情報も多いため有利だから、というのがその理由であったと覚えています。
大変貴重な教えでしたが、一歩間違えると患者さんに不利益をもたらしかねない言葉でもあると感じています。
最近では私自身の専門分野に関しては、患者さんのために前医の意見をくつがえすことがあります。
このお医者さんがそのような「善意」から前医の判断をくつがえしたのか、手術適応の違いからなのかは不明です。
このようなときにはぜひとも信頼できる第2の意見を求めることです。
セカンドオピニオン外来はそのためにあります。
勇気を持って相談することです。今後の人生に関わる重要な選択なのですから遠慮することはありませんよ!
がんばってください!
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未破裂動脈瘤の治療法選択ー血管内手術(基本編)

2008年03月21日 | 動脈瘤
<動脈瘤にマイクロカテーテルを留置してコイルを入れているところ>

さて今度は血管内手術についてお話しします。
この治療法は、脳血管撮影で紹介したように、足の付け根の大腿動脈(だいたいどうみゃく)から管を入れて行います。
その管の中にマイクロカテーテルというさらに細い管を通して、動脈瘤の中まで入れるのです(上の図)。
そしてコイルを入れていけば、動脈瘤はつまってしまい、出血しなくなります。

動脈瘤の入り口の部分をネックといいます。
ネクタイのネックと同じで、「くび」という意味です。
医学的には「頚」とか「頸」という字を使い、「頚部(けいぶ)」などと言ったりします。
以前に「ネックが狭い動脈瘤はコイルによる塞栓術に適している」と紹介しましたね。
ネックが狭ければ、上の図のように動脈瘤の中に入れたコイルがはみ出てくることがなく、安全につめられるからです。
うまく行くと30分もかからずに局所麻酔で治療が終わります。

自分が大学院生の頃、もう10年以上前ですが、手術の難しい脳底動脈瘤の塞栓術を依頼されて30分で終わった時、「ネックの狭い動脈瘤のほとんどが血管内手術で治療されるようになる...」と予感しました。
術中も術後も患者さんは普通に会話が出来る状態で、その日の夜から新聞を読んだりできます。
ネックが狭い場合には、「脳に触れずに治療が出来る」この治療法の方が良いのです。
ただし、ネックの広さだけでなく、動脈瘤にいたるまでの血管の動脈硬化や蛇行なども大事な条件です。
信頼できるドクターとよく相談してください。



一方、ネックが広くても血管内手術を選択する場合もあります。
それは開頭手術が難しい場合です。
次回はそのテクニックについて紹介します。
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脳血管内手術ーアメリカ見聞録 その1

2008年03月19日 | 閑話休題
<ルーズベルト病院で Berenstein先生と>

去年の9月にニューヨークにあるルーズベルト病院を訪問しました。
夏休みを使って、一週間、勉強に行ったのです!
我ながらえらいよなー!(と自分でいわないと遊んできたと思われている...)




なぜ、アメリカまで行ったか?目的は二つありました。
一つは「うれしいことがありました!」で紹介した脊髄動静脈奇形の治療を見ることです。世界でもっとも多く治療をしている病院なのです。もう一つは、日本でまだ認可されていない脳血管内治療の機材の使い方を知ることです。
医学に関していえば、すべて日本の中の情報で事足りる、ということはありません。
それぞれの国でそれぞれの医療事情があり、日本より優れた部分がいっぱいあります。
とくにアメリカやヨーロッパには世界のトップクラスの医師がいます。
その人たちの考え方、医療のやり方を見ることは大変刺激になります。



日本は医療先進国です。
また日本の保険制度は平等で手厚く、大変すばらしいものだと思います。
しかし日本が遅れている部分もあります。その代表は新しい治療の認可です。
抗癌剤の認可が遅いことがマスコミを賑わせましたね!脳の領域も同じです。
例えば新しいコイルやステントの認可は日本では非常に時間がかかり、世界でも最後の方になってしまいます。
現在、新規医療器材の認可はヨーロッパやアメリカはおろか、中国や韓国などよりもずっと認可が遅いのです。
日本は新しい機材がなかなか使えない国なのです。知っていましたか?
しかし認可機構の人たちや学会の努力で、これが最近、少し変わりつつあります。
これから新しい機材が続々と認可され、世界のトップに追いつくことを願っています。



さて、アメリカでは今回の訪問で、自分が見たことのない機材や治療をたくさん見ることが出来ました。
帰ってから早速やってみる...というわけに行かないのが残念ですが、やはり実際に見ることは大切ですね!
ルーズベルト病院にはBerenstein先生という有名な先生と、私の尊敬する新見先生がおられてたくさんの情報を提供して頂けました。心から感謝しています!
今年もがんばって勉強に行くぞ!
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未破裂脳動脈瘤の治療法選択ー手術(応用編)「クリッピング困難例、その2」

2008年03月16日 | 動脈瘤
 通常のクリッピングが困難でかつ根本の血管も止められないものもあります。
 それは動脈瘤の付近から重要な細かい枝が出ている場合です。
 脳底動脈(のうていどうみゃく)先端部動脈瘤がその代表で、もっともクリッピングが困難な動脈瘤として知られています。クリッピングができないわけではなく、クリッピングによる合併症が多く、かつ重症であるということです。
 まずこの部位は読んで字のごとく、脳の底に位置するため、深く狭い術野で手術を行わなければなりません。しかもこの部位からは視床(ししょう)という重要な部分に細かい枝が出ています。深く狭い術野でなんとかクリップをかけても、この枝の流れが悪くなると術後に意識が戻らないのです。自分は研修医の頃、この動脈瘤の手術後遺症で寝たきりになる人を何人も見てきました。いくら難しい動脈瘤と分かってはいても、自分の主治医の患者さんが手術で悪くなるのは非常にショックでした。意識なく横たわった患者さんを処置しながら、「先週まで会話ができたのにどうして...」と悲しく思っていました。あれから20年が経過しようとしていますが、現在でもこの場所の大型動脈瘤はクリッピング術が最も困難なものの一つです。
 一方、この20年間で大幅な進歩がありました。それは脳血管内手術の開発です。この部位の動脈瘤はコイル塞栓術によりかなりうまく治療することができるのです。特に動脈瘤のネック(入り口の部分)がせまければ、いとも簡単に治療ができます。ですから脳底動脈瘤と診断された場合には、必ず血管内治療の指導医・専門医にも一度相談してみることをおすすめします。

     

 しかし脳底動脈瘤の中にも、ネックが非常に広くてコイル塞栓術すら難しいケースがあります。このような動脈瘤にはステント併用の塞栓術が有効です。ステントとは心臓で良く用いられる金属の筒状の網です。アメリカではすでに脳動脈瘤専用のステントが開発されており、コイルと併用されています。私自身は難しい症例に対して、これまで心臓用ステントを併用した動脈瘤治療を行ってきました。しかしとうとうこの1-2年で脳動脈瘤専用のステントが日本でも使えるようになりそうです。これについては後述しますが、脳動脈瘤治療を一変させる可能性を秘める画期的な機材と言えます。乞うご期待!
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がんばれ、医師のタマゴ達!

2008年03月13日 | 閑話休題
昨日は一日、うちの大学の医学部後期日程の試験監督をしていました。
また試験監督...  最近、多いなあ。
ぼやきはさておき、ちょっとどんな感じか紹介しますね。
定員35名のところに3000人!信じられないような倍率です。自分の頃はもっと楽だったけどなー!
計算すると1クラスに1人受からないような状態です。
ってことは隣の人をカンニングしてもだめですよね。
試験監督、いらないね。あ、問題配らないとだめかあ。

     

さて、昨日の試験問題を見ていて、物理や化学はまったく解けませんでした。
もう医学部に入れない...(笑)。自分は運が良かったなあ、と思いました。


     

でも少し不安もあります。こんな試験問題で適正が分かるのか...と。
小論文や面接があるということで、少しはいいのかなとも思いますが、ペーパーテストと臨床現場はおよそ異なる世界です。
臨床現場は厳しいですよ!完璧が求められます。最近は、手術が終わるとほっとします。
「患者さんにベストの治療を行いたい」と誰もが思っていますが、現実には副作用、合併症、医療ミスも起こります。
自分はリスクをさけるために手術室や病棟でアンテナをはりめぐらせています。
ムダな投薬や治療はしない、安全確認をとことんやる。脳外科の仕事はリスクが高いので毎日大変ですよ。

でも、
もう助からないと思った患者さんが退院して、自分の前にスーツで現れた時、
歩けなかった女子高生が同級生と談笑しながらバスに乗るのを見たとき、
私はいつも、ぐっときて、そのあと、「いい仕事をしたな」とひとりニンマリするのです。
それが自分の生きがいです。
もちろんつらいこともあります。でも医者は素晴らしい仕事です。
いつも自分なんかが医者になれたことに感謝するのです。
昨日の受験生達が晴れて合格し、仲間となってくれるのが楽しみです。
っていっても、3000人も入れんかー...


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未破裂脳動脈瘤の治療法選択-手術(応用編)「クリッピング困難例、その1」

2008年03月12日 | 動脈瘤
 一方、通常の手術、つまりクリッピング術が困難な症例もあります。そのうちの一つが、巨大動脈瘤等の大型動脈瘤です。
 巨大動脈瘤はクリッピングも難しいのですが、コイリング(コイル塞栓術)でも完全には治せないというやっかいなしろものです。
 例えば上の動脈瘤は以前にクモ膜下出血を起こしコイルで塞栓されています。その後元気で退院されたのですが、だんだん目が見にくくなり、検査すると動脈瘤が大きくなって巨大化していました。
 こういう症例でもクリップが出来る!というドクターはいます。しかし動脈瘤の周辺の血管や目に関係する神経が損傷される可能性がきわめて高いため、一般的には別の治療の方がいいとされています。
 その方法は、根もとの血管ごと止めてしまう...という方法です。医学的には「親動脈閉塞(おやどうみゃくへいそく)術」と言います。
 「え?脳にいく血管を止めてしまっても大丈夫なの?」という声が聞こえてきそうです。そのとおり、だめな人もいます。でも止めてもまったく大丈夫な人もいます。どんな人は大丈夫なのでしょうか?
 それを判定するのが、バルーン閉塞テストという検査です。風船で目的の血管を止めてみて症状が出るかどうか調べる方法です。風船をふくらませて血流を止めるのですが、すぐに症状が出るようなら太いバイパスがいります。症状は出ないけど、検査の数値が下がっている人は細いバイパスで大丈夫です。全く異常が出ない人はそのまま止めてしまってもいいのです。
 もちろん、治療合併症が出ないと言っているのではありません。でも巨大動脈瘤は破裂率が極めて高い(年間10%以上)ので命に関わる状態なのです。それに対して、このバイパス+親動脈閉塞術は比較的安全で有効な方法と言えます。
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未破裂脳動脈瘤の治療法選択-手術(基本編)「自分がオペを受けるとしたら?」

2008年03月11日 | 動脈瘤
 未破裂脳動脈瘤の治療法として最も有名なもの、それはこのクリッピング術です。
 この方法は歴史があり、長期の成績も安定していることが知られています。
 具体的には、全身麻酔で頭の皮膚と頭蓋骨の一部を空けて、脳と脳のすきまを少しずつ剥離(はくり)し、動脈瘤の根元を「クリップ」ではさむ方法です。
 こう聞くと、まず「おそろしい!」と思ってしまいますよね。私も医者になりたての時にはそう思いました。テレビで手術の場面を見るのも怖いという方が多いと思います。
 しかし「頭をあけるのは怖い!」という直感的なことだけで、手術法を選択してはいけないのです。脳の重要な動脈にできたこぶです。もしあやまって動脈自体がつまってしまったりしたら、キズぐらいでは済みません。一生、手足の麻痺や言語障害などに苦しむことになるのです。また最近では小さなキズから手術をする「カギ穴手術」や「脳血管内手術」がよく行われ、テレビや雑誌に出ています。脳血管内手術と普通の手術、さらにはカギ穴手術、のどれが一番良いのでしょうか?

     

 答えは、実は一つではありません。それぞれの動脈瘤の位置やサイズ、形、患者さんの年齢などによりベストチョイスは変わります。しかしここで重要なことがあります。決して一つの方法(クリッピングのみ、または、血管内手術のみ)でしか治療していない施設で治療法選択をしないでください。どうしてもそのドクターが得意とする治療法に偏ってしまいます。ドクターにも悪気はないのです。患者さんを、目の前にいるあなたを助けてあげたいのです。しかしそれぞれの方法をバランスよく行うのが最も良い成績につながることが知られています。最初の選択が偏っていては、良い結果が得られないかもしれません。

     

 さてここで本音トークとして面白いのは、もし私自身に動脈瘤があったらどういう治療法を受けるかということです。正直に言いましょう。まず血管内手術が安全にできる「ネックのせまい」動脈瘤であったら、迷わず血管内手術を行います。「行います」と書いたのは、よほど難しくなければ局所麻酔で自分自身でやりたいと考えているからです。血管内手術では自分自身を最も信頼しているということかもしれませんし、自分自身ならあきらめもつくということかもしれません!(笑)
 しかし、もしネックが広い、手術の比較的安全な動脈瘤だったら...?その時は開頭手術を受けます。そして正直なことをいえば、どうせ手術をするのならカギ穴手術ではなく通常の手術を選びます。広い術野で多方向から動脈瘤とその周囲血管を確認し、MEPというモニター(後で説明します)を使って術中に麻痺が出ているかどうか確認をしながら進める手術を受けたいと思います。皮切は髪の毛がはえているところで行うため、どうせキズは見えません。とにかく開頭する以上、キズのことよりも脳に対して一番やさしく安全な方法を選ぶと思います。また、クリッピング術の経験が多く、治療成績がいいドクターを選びます。何でもそうですが、慣れていることは大切ですし、それまでの治療成績がいいことは「無理をしない」、「引き際が良い」、「腕が良い」ことを連想させます。今回は「基本編」ですので、これは基本的な動脈瘤手術についての見解です。難しい動脈瘤はそれほど単純ではありません。また改めてお話しします。

     

 ということで、自分に通常の動脈瘤があって治療を受けるなら、1)ネックが狭いものなら血管内手術、2)ネックが広く手術が比較的安全な場所ならMEPモニター下での通常の手術、を選ぶということです。実は以前、小さな開頭や眉毛の近くの小さなキズから手術をするカギ穴手術も経験しましたが、動脈瘤の場合には観察する方向性が限られることが、どうしても安全性の低下につながってしまうと感じました。カギ穴手術によるクリッピング手術をたくさん行っている先生、ごめんなさい... m(_ _;)m

 さて、先程述べたMEPですが、これは手術中に麻痺が出ているかどうかを知ることが出来る優れたモニターです。術野では一見うまく行っているように見えても、実は裏側で細い血管をつまんでしまっているということもあります。その血管があまり重要でなければいいのですが、手足の動きに関係する血管だったりすると手術が終わってから麻痺に気付く...!、という恐ろしいことになります。そうなるともう修正不可能です。手術中に麻痺の有無がわかるMEPモニター。私ならこれがある施設で信頼できるドクターに通常のクリッピング手術を受けます。実はこの方法で広い術野で手術するようになってこの数年間、私自身は未破裂脳動脈瘤クリッピング術において永久合併症を起こしていません。何よりの証明だと思います。

 以上、基本的な脳動脈瘤クリッピング術について、私見を交えてお話ししました。参考になりましたでしょうか?ご意見があればぜひコメントを入れてくださいね。 
     
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専門医試験:パート2

2008年03月09日 | 閑話休題
今週、もう一つうれしいことがありました。
以前お伝えした脳血管内治療の専門医試験、自分がこれまで指導した3名、全員合格しました!!!
合格率60%未満という難しい試験ですが、見事全員一発で合格してくれました。
これは本当にうれしかったですね。みんな、すごいぞ!おめでとう!!

私は昨年、200例ほどの脳血管内治療に携わりました。クリッピング術やバイパス術などの外科的手術もよくやりますので、結構忙しい毎日です。
しかもここ岐阜県は結構な広さがあり、例えば岐阜市から高山市内まで行こうとすると高速道路、電車、いずれも2時間以上かかってしまいます。
当病院は4年前に移転新築され、屋上にヘリポートを備えていますので、治療が難しいケースはヘリ搬送してもらっています。ヘリは速いです。片道30分で送られてきます。
でも悪天候の時や夜間はヘリ搬送できません。半日以上待ってもらったり、こちらが出張することになります。数年前までは全例、車で出張して治療をしていました。できるだけ連絡をもらったその日に治療に駆けつけるようにしてはいましたが、どうしても治療に行けなくて待ってもらうこともありました。待ってもらっているうちに患者さんが悪くなったこともあります。それで無理をして雪の中を高山に向かって、途中豪雪に遭い、動けなくなってしまったこともありました。
でも今はそんなことはなくなりました。なぜなら高山には後輩の専門医がいるからです!
人間一人で出来ることなんてせいぜい限界があります。でも仲間が増えれば...可能性は無限に広がります。
これまでの経験からすると、今回合格した3人が普通に診療をするだけで、治療の数は増えます。その分だけ患者さんたちがこの治療の恩恵を被ることになるのです。また彼らが専門知識をもって診断・診療すること自体が、その病院とその地区の脳卒中診療の質を上げます。
「1+3」は4でなく、すぐに5にも6にもなるのです。すばらしいと思いませんか?
日本ではまだコイルによる動脈瘤治療が低調です。いろいろと理由はありますが、その一つが専門医不足とされています。
専門医が増えて体にやさしいこの治療法がもっと普及するといいですねー (^-^)
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未破裂脳動脈瘤の治療法選択:経過観察

2008年03月09日 | 動脈瘤
いよいよ脳動脈瘤の治療についてお話しします。
まずは破裂していない状態で検査で見つかった場合、つまり未破裂脳動脈瘤についてまず説明したいと思います。
家族や知り合いに脳動脈瘤が見つかった場合には、どうしたらいいのでしょうか?
自分の頭の中にあれば、なおさら心配ですよね。
よく「頭の中に爆弾がある」という説明をされたという話も聞きますが、それは患者さんの恐怖心を高めてしまう良くない説明だと思っています。まずどんな病気なのかを正確に知る必要があります。
「脳動脈瘤ってどんなもの?」で年間破裂率を説明しましたね。まとめると、年間0.5-3.0%ぐらい。大きい動脈瘤や脳の後ろの方にある動脈瘤は破裂しやすい、ということでした。もう一度この部分を読んでみてくださいね。
さて、ですから動脈瘤が見つかった場合の対応は、(1)そのまま様子を見る、(2)クリッピング手術、(3)コイル塞栓術、の3つとなります。まず今回は(1)について考えてみましょう。
「そのまま様子を見る」ことを医学用語では「経過観察」といいます。未破裂脳動脈瘤では「定期的画像検査」とほぼ同じ意味になります。一般的には、半年か一年に一度、外来でMRI, MRAを行って、動脈瘤の形が変わったり、大きくなっていないか確認することが多いようです。しかし実はそのようなことは非常に稀であり、破裂を予測することはほとんど出来ません。私は「動脈瘤が大きくなったり形が変化すること、他の動脈瘤が出来てくることは非常に稀ですので、頻繁に検査をする必要はありません」ときちんと説明しています。それでも皆さん不安ですから、患者さんたちの大多数は定期的にMRIに通ってこられます(^^;)。しかしその結果、ここ数年動脈瘤の増大を認めたケースはありません。一方、その間に破裂してしまった患者さんは何人かいます。他施設で、動脈瘤が治療を待っている間に破裂してしまい治療に駆けつけたケースもあります。
動脈瘤が破裂してしまい、患者さんが重症くも膜下出血になると、「もっと強く治療を勧めた方が良かったのではないか?」と後悔してしまいます。一方、最近はほとんどないのですが、未破裂脳動脈瘤の治療で合併症を起こすと、「本当にこの人の動脈瘤は将来破裂する運命にあったのだろうか?」と悩みます。「神のみぞ知る」世界ですが、いずれにしても患者さんが悪くなられるのは辛いものです。もっと一人一人の動脈瘤の破裂率を正確に知ることが出来れば、このような悩ましい状況が改善されるのかもしれません。
ですので動脈瘤の破裂に関する研究は非常に重要です。治療法も今後さらに改善されて合併症率が減れば、もっと多くの患者さんが安全に予防治療を受けられるようになる。早くそうなってほしいものです。
動脈瘤治療の新しい器具も徐々に承認される方向にあります(これに関してはまた後に詳しく述べたいと思います)。次回から脳動脈瘤治療についての現状と最新情報をお知らせしたいと思います。
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うれしいことがありました!

2008年03月06日 | 閑話休題
今日はうれしいことがありました。
脊髄(せきずい)の血管障害の患者さんを今週治療したのですが、足が動くようになったのです!
この患者さんの病気は脊髄硬膜動静脈瘻(せきずいこうまくどうじょうみゃくろう)というまれな病気で、足が動かなくなってすでに10ヶ月が経過していました。時間が長い程、症状の回復が悪いのです。
この患者さんはなかなかこの病気であるという診断がつきませんでした。うちの病院のいいMRIを受けてやっと診断されました。
実はこの病気は「脊髄動静脈奇形」という病気の一つで、その中でも診断が難しいやっかいな病気として有名なのです。
やっと診断がついて治療しても治らないことがあるのです。
それと、治療の合併症もあります。
自分自身もこの病気をある程度経験しましたが、治療でかえって悪くなることが報告されているので、手術中は大変緊張します。
実際の方法は、異常な血管の中にマイクロカテーテルを入れて、接着剤のような塞栓物質(ヒストアクリル)を注入して、瞬時にマイクロカテーテルを抜きさる...という瞬間芸のような治療です。慣れた人でないと危険です。
今回、この患者さんにはまず血管内手術を行いましたが、今、病棟に行ってみると、「先生、足が動き始めた!」とのこと。
正直驚きました。人体の不思議!その後、うれしくて涙が出そうでした...。でも患者さんはあっけらかんとしていましたけどね!
自分の足が動かなくなるなんて、想像したことありますか?
それが本当に起きて、原因不明と言われたら...自分なら耐えられるだろうか。
それがあきらめかけた頃に原因が分かって、治療して2日で動くようになるなんて!
今日はちょっとは人の役に立てたかなと思う日でした。やったー。
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