下記のような質問をいただきました。私の知る範囲でお答えしたいと思います。
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先生 お忙しい中、申し訳ありません。
コロナワクチンについて質問させていただきます。
ワクチン接種後、血栓症のリスクを生じるとワクチンに反対しているドクターの方の意見を先日SNSで視聴しました。
ワクチン接種には賛否両論あるのは承知していますが吉村先生のお考えをお聞かせください。
また先生ご自身はワクチン4回目5回目はどうされてますでしょうか?
私自身5回目を接種すべきか迷っています。
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まず、質問者の方と同様、私も4回目の接種を終えており、近々5回目を摂取する予定です。
さて、これまでもワクチンの有効性と安全性についてはこのブログで紹介してきました。
ワクチン接種が始まった当時は、「ワクチンは危険である」というコメントがよくSNSで発信されていました。確かにワクチンの副作用はあり、その中に血栓症もあります。このため、ご覧になったSNSが間違いであるとは言えません。また報道でも重度の副作用の事例を見かけます。このような報道を目にすると私も胸が痛みます。
ただ、何事も重要なのはバランスです。効果と副作用を天秤にかけて、総合的に見て判断すべきだと考えます。ワクチンの感染予防、重症化予防効果が高いことはよく報道されていますが、副作用はどうなのでしょうか?これまで世界で膨大な数のワクチン接種が行われてきましたが、重度の副作用は多かったのでしょうか?病院に勤務する私たちでも重度の副作用の患者さんに遭遇することは極めて稀で、実際、当科ではワクチン接種による脳血管の血栓症は経験していません。
ただ、オミクロン株は従来よりも軽症が多いことから、「もしかかっても大丈夫」との認識が広がっており、ワクチン接種を避ける傾向も見受けられます。特にこれまでのワクチン摂取で発熱などの副作用が重度だった方にワクチン接種をやめる方が多い印象があります。
そのような中、厚生労働省はホームページで「新型コロナワクチンについて」という下記の記事を掲載しています。https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0147.html
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現在、日本ではオミクロン株の流行が続いています。
WHO(世界保健機関)、FDA(米国食品医薬品局)、EMA(欧州医薬品庁)では、オミクロン株系統の成分を新型コロナワクチンに含め、追加接種を実施するよう見解が示され、諸外国において、2022年秋のオミクロン株対応2価ワクチンによる追加接種の方針が示されています。
日本では、ファイザー社とモデルナ社のオミクロン株対応2価ワクチン(従来株/BA.1)による追加接種について、臨床試験における中和抗体価(ウイルスの感染力または毒素の活性を中和できる抗体の数値)の上昇等の有効性についてのデータ及び有害事象の発生頻度等の安全性についてのデータをもとに、令和4年9月12日に薬事承認されました。
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とあります。有効性と安全性を確認してオミクロン株対応ワクチンが承認された、ということです。
オミクロン株は軽症!という声もありますが、重症化して人工呼吸器管理となることもありますし、もう一つ、心配なのがコロナ感染後の後遺症です。私の外来にも「後遺症でにおいがなくなった」「全身がだるい」「頭がぼーっとする」いう方が来られます。そこで、コロナ感染後の後遺症はどのぐらいの確率なのかを調べたところ、最近の報告では、8人に1人が後遺症を経験すると報告されていました。https://medical.jiji.com/news/53855
また、コロナ感染後の後遺症として認知機能低下が多いとする報告があります。
Nat Med. 2022 Sep 22.(doi.org/10.1038/s41591-022-02001-z)
なぜ認知機能が低下するのでしょうか?コロナ感染後に「においが分からなくなる」後遺症はよく知られています。これはウイルスがにおいの神経(嗅覚路)を通じて、脳に入り込み炎症を起こす(脳炎)ことによるとされています。これがさらに進めば、前頭葉から脳全体に伝搬することになりますので、認知機能低下につながることが想定されます。このような事象は、高齢者に多いと報告されています。
Cell Reports. Oct 12, 2022(doi.org/10.1016/j.celrep.2022.111573)
いかがでしたでしょうか?
少し難しい情報もあったかもしれませんが、ワクチンを打つかどうかの参考になれば幸いです。