脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

Basic Medical Conference 2011

2011年09月30日 | 学会/研究会
昨日Basic Medical Conference 2011を開催しました。
演者は循環器内科の川崎雅規先生と腫瘍病理学の原 明先生です。

川崎先生には、頚動脈プラークの画像診断や臨床研究の解析について指導して頂いています。先生は新しい超音波検査法であるIB-IVUSの開発者として世界的に有名な先生です。この検査機器は冠動脈のプラークを血管内超音波で解析し、その性状を色分けして表示するものです。YD社と共同開発され、現在はテルモ株式会社に引き継がれ、IB-IVUS「VISIWAVE」として市販されています。
数年前に当科の山田清文先生が頚動脈の超音波解析を行っていたことで共同研究が始まりました。私たちの手に入れたデータが川崎先生の手にかかると、魔法のようにアカデミックな論文として生まれ変わり、何度も海外の著名な雑誌に掲載されてきました。昨日は動脈硬化症のメカニズムから最新の画像診断、そして治療との関連について極めて明快にご講演いただきました。先生と共同研究が出来ることは私たちにとって本当に幸運です。

原先生は私達脳神経外科の先輩です。先生は大学院生として第一病理(現在の腫瘍病理学教室)で勉強され、そこで病理のご経験をつまれたことをきっかけに、脳外科専門医取得後に転向され、現在は教授に就任されています。
昨日のご講演では大学院生のころに病理学教室にあった病理標本台帳をいつも見ていて、そこから気づいたことを次々に仕事にされたというエピソードをご紹介いただきました。例えば動物モデルで証明されている遅発性神経細胞死という現象が「ヒトにも起きているかもしれない」とお考えになり、一時的に脳虚血を呈した方の病理標本をチェックしたところ30年間の記録でそういった患者さんが2名あり、調べたところ小脳の細胞にやはりそういった変化が起きていたということでした。
「パラフィンブロックは宝の山」なので、永久保存が可能な病理標本がたくさんあるので何か発想があればいつもで相談してくださいということでした。私は「何か目的を持って物事を見ること」、つまり前述のエピソードのように「こういう変化が起きているかもしれない」という前向きな探究心こそが良い研究をするきっかけなのだということを学びました。

私たちが普段お世話になっている2名の先生のご講演で、昨日は多くの聴衆でにぎわいました。最近は日本の医療界は大学病院でさえ臨床に傾きがちです。予算も以前ほど潤沢ではありません。しかし、日本が先進医療を維持発展させるためには、一歩先を見ること、そして難治疾患の治療法開発や治療や検査法を改善しようとする努力が必須です。そのためには、現状の解析と新たな試みが必要で、それこそが医学研究なのではないかと思います。医学生をはじめ若手の先生にはぜひとも先進医療の担い手になってほしいと思います。昨日の講演会がそういったきっかけになればと願っています。

昨日の講演会にご協力いただいた大塚製薬はじめ、関係者の皆さんに心から感謝申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

利尿薬

2011年09月25日 | 脳卒中
血圧を下げる薬(降圧剤)の続きです。今回は利尿薬を紹介します。
血圧を下げるのになぜ利尿(尿を出すこと)が関係するのでしょうか。
外来で利尿剤を処方すると、次の外来で「薬局で利尿剤は尿を出す薬だと聞きました。私は尿は普通に出ているのでこの薬はいりません」と言われたりします。
そこでまず、この利尿剤の作用機序について説明します。

「塩分の取りすぎで血圧が上がる」ということは聞かれたことがあると思います。これはどういう仕組みなのでしょうか?
塩っからいものを食べると、喉が渇いて水を飲まないといられなくなりますよね。これはとりすぎた塩分によって体内の塩分濃度が上がるのを防ぐため、私たちの体が通常よりも多くの水分を取り込んで薄めようとしているのです。体内の塩分濃度はこのようにして一定に保たれているので、普段から塩分を多めにとる人は慢性的に体液量(血液量)が多い状態が続きます。
体液量(血液量)が増えると血管はその分だけ圧迫され、血圧が上がります。ちょうど風船が膨らんだ状態と同じです。

利尿薬は腎臓に作用して、体内の塩分(ナトリウム)と水分の排泄を促し、体液量(血液量)を減らすことによって血圧を下げる薬なのです。塩分とともに水分を排出する作用があるのです。日本人は塩分を多く取りますから、減塩が効果的ですし、この薬も有効なことが多いのです。

種類
サイアザイド系:フルイトランなど
ループ系:ラシックスなど
抗アルドステロン薬:アルダクトンAなど

主な副作用

1) 低カリウム血症(サイアザイド系、ループ系利尿薬)
2) 高尿酸血症、脂質代謝異常、糖代謝異常
3) 女性様乳房、月経異常、高カリウム血症(抗アルドステロン薬)
4) 血液粘度の上昇
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋桜

2011年09月20日 | 閑話休題
今日は一日雨ですね。台風が心配です。
昨日は休日でしたし久ぶりに自転車通勤してみました。とても暑かったのですが、道ばたにコスモスを見つけました。
秋が近いんですねー。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Neurovascular Forum 2011

2011年09月19日 | 学会/研究会
一昨日、Neurovascular Forum 2011に参加してきました。
私は超急性期脳梗塞治療についてお話ししました。
数百名の参加があったということでしたし、この会では参加された先生方のご意見が、ボタンを押すことですぐに画面に示されるので、面白かったと思います。
坂井信幸先生はじめ、お招きいただいた関係者の方々に御礼申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リニアモーターカー

2011年09月12日 | 閑話休題
上海の学会の帰りに、宿泊したホテルの近くから空港までリニアモーターカーに乗りました。
愛地球博でもリニアに乗りましたが、今回は高速で運行しているということ。値段は当日の航空券があれば2割引で40元(約500円)。
乗っている時間はわずか7分でしたが、確かに速い。
表示はなんと431km/hでした。これが正確かどうかは分かりませんが、普段の新幹線の最高速より1.5倍ぐらいは速い感じがしました。
先日の中国新幹線の事故があったので何となく不安でしたが、それでも中国の急速な技術の進歩を感じさせられました。
またこの短区間でも実際に運行して、それを曲がりなりにも商業ベースにしてしまったことがすごい。上海を訪れた多くの外国人がこのリニアに乗って中国の進歩を実感するわけです。
日本もがんばらないといけませんね。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

EACoN/OCIN

2011年09月09日 | 学会/研究会
学会はかなり盛況でした。
規模は大きくないので、ディスカッションが多く出来て、面白かったと思います。
私が報告した段階的血管形成術に関しても、その変法が報告されており、賛否両論でホットディスカッションになってしまいました(^^;)
座長をしていたのですが、時間が全体に長引き、反省です。
(写真は坂井信幸先生が発表されているところです)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

上海

2011年09月08日 | 学会/研究会
学会で上海に来ています。
中国ははじめてなのですが、大都会で驚いています。写真は宿泊したホテルから見た世紀公園です。総投資額10億元(約120億円)の都市型公園で中国国内最大ということです。とにかく大きい。真ん中に湖があって、人工とは思えないほどです。この近くにあるケリーホテルというところで会をやっています。

学会場となったこのケリーホテルはすごく立派ですが、私のホテルは楽天で予約した安いところです(上海麗悦酒店:YUE SHANGHAI HOTEL)。でもこのホテルは結構きれいで、目の前は写真の世紀公園ですし、地下鉄の駅(世紀公園駅)に直結していて便利でした。中心街からはちょっと離れていますけど、地下鉄で市街まですぐですよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)

2011年09月06日 | 脳卒中
8月17日の続きです。
最近、注目されている降圧剤があります。
これは前回お話ししたアンギオテンシンIIという物質の作用をブロックする薬剤です。正式にはアンギオテンシンII受容体ブロッカー(Angiotension II Receptor Blocker: ARB)といいます。

上の図を見てください。アンギオテンシンIIは血圧を上げる働きがあるのですが、それは血管などの細胞表面にあるアンギオテンシンII受容体というカギ穴にアンギオテンシンIIがくっつくことによって起こります。
ARBはこの穴にくっつくことで、アンギオテンシンIIの作用をブロックするわけです。

このARBという薬剤は血圧を下げる作用以外にも動脈硬化を和らげる作用や、各臓器を保護する作用があることが報告されていて、「血圧を下げるだけでなく全身の臓器を守る」ことが知られています。

代表的な薬品名
ブロプレス(カンデサルタン)
ディオバン(バルサルタン)
ニューロタン(ロサルタン)
ミカルディス(テルミサルタン)
オルメテック(オルメサルタン)

主な副作用
頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、ほてり
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京脳卒中の血管内治療セミナー

2011年09月05日 | 学会/研究会
昨日TSNETSに参加しました。
今回は「徹底症例検討」ということで、レクチャーでなく、実際の症例についてディスカッションする形式でした。
かなり深い議論が出来て、私としてはとても面白かったと思います。(参加された方はどうだったのでしょうか?)
特に、個人的には動脈瘤のセッションが大変刺激になりました。
和歌山労災病院の寺田先生の積極的な治療方針に関するご発表がとてもインパクトがありました。
お招きいただいた根本繁先生、松丸祐司先生に感謝申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第3回Acute Strokeセミナー

2011年09月03日 | 学会/研究会
第3回Acute Strokeセミナーを開催しました。
弘前脳卒中センターの目時先生と埼玉国際医療センターの伝法先生にご講演いただきました。お二人とも現場で脳卒中診療をされているだけあって、臨場感のある、大変納得できるご発表を頂きました。
またパネルディスカッションとして岐阜地区の脳卒中センターの先生方にも現状を紹介してもらいました。tPAの有効性とその限界、メルシーの功罪について現場から生の声が聞けました。各地域での急性期脳梗塞の対応の現状が分かり、大変参考になりました。
とても興味深いこのセミナー、今後も継続して行きたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする