脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

脳動脈瘤 その19 外科手術 1. クリッピング術 「脳の表面はどうなっている?」

2020年10月26日 | 動脈瘤
頭蓋骨を開けた後はどうするのでしょうか?
脳を包んでいる膜、硬膜(こうまく)を切って開きます。
そうすると脳の表面が見えます(上図)。
脳の表面には太い静脈(青色)と細い動脈(赤色)が走っています。
そして、脳と脳の隙間(すきま)も見えます。
ここは前頭葉と側頭葉の間にある隙間で、医学的にはシルビウス裂、解剖学的には側溝と呼ばれます。
この隙間から手術を進めていくのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳動脈瘤 その18 外科手術 1. クリッピング術 「骨はどうするのか?」

2020年10月08日 | 動脈瘤
開頭手術の紹介の続きです。
皮膚を切った後、次に行うのは骨を開けることです。
どうやって硬い頭蓋骨を開けるのでしょうか?

まず、頭蓋骨にドリルで穴を開けます(図1)。
というと、ドリルで脳を傷つけてしまうのではないかと不安になりますよね?
でも、ここで使うドリルは工事現場のものとは違います。
開頭手術専用のドリルで、骨を通り抜けるとクラッチのような原理でドリルの先端が回らなくなり、脳を傷つけない安全システムが備わっているのです。
すごいですね!

さて、骨に何カ所かドリルで穴を開けたら、その穴をつなぐように切ります(図2)。
この器具も途中の棒状の部分だけが回転して骨を切るようになっており、先端は下の膜を傷つけないようになっています。

さて、骨の穴と穴をつないで切ったら骨は簡単に外れます(図3)。

そして、手術が終わったら、薄い板状のチタンプレートというものをネジで止めて骨を固定します(図4)。
なぜこのような形をしているかというと、最初にドリルで開けた穴をふさぎ、そして骨同士を固定することができるようになっているのです。
このプレートは非常に薄いので術後に出っぱりがほとんどありません。
しかも、チタンという金属でできているので、固定後にずれるようなことはありません。また、骨を切る時に出来た溝は、骨の粉や人工骨でふさぎ、そこさえも手術後にへこみが出来ないように配慮します。

このように、頭の骨を開けるという一つの操作にも、周りの構造を傷つけないような様々な工夫が凝らされています。
また、徹底的に美容的な配慮をすることで、術後に傷が分かりにくくなります。
自分の患者さんにも、「どちら側の手術でしたか?」とお尋ねすることがあるほどです。
安全かつ美容的な手術を目指して、開頭手術も日々進歩しています。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする