脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

専門医試験:パート1

2008年02月28日 | 閑話休題
 今日から日本脳神経血管内治療学会の専門医試験が始まりました。自分はこの学会の試験委員になっているので、ここ神戸に来ています。
 本学会の専門医制度は極めてよく考えられていて、ペーパーテスト、口頭試問、実技試験からなっています。自分から見てもしっかりとした試験です。これをパスするのですから、この学会の専門医は「脳血管内治療に関する正しい知識と経験を積んでいる医師」と考えていいと思います。
 私は第一回専門医試験を受けました。緊張しましたね!なにしろ第一回でしたので、どんな試験か分からないのです。それまで学会などではちょっと偉そうにしていたので、「これで落ちたらどうしよう!」と直前は不安になりました。何事も謙虚が一番、ということですねー(^^;)。
 普段からこの治療に携わって専門家になりたい先生たちがいい年で試験勉強して受けるわけです。みんな「なんとか通りたい!」と思っているはずです。自分の施設、関連病院からも受験生がいます。みなさん、がんばってください!
 それにしても、つい数年前に自分が受けた試験の試験監督をするのは変な感じですね!
 私はすでに多くの症例を経験させてもらっていたので、専門医となった翌年に指導医になりました。指導医は200例の第一術者、医学雑誌への論文掲載などが条件となっています。厳しい基準です。指導医は専門医の上を行くスペシャリストと考えていいと思います。

ちなみに
http://www.jsnet.umin.jp/
には指導医や専門医のリストが載っていますよ。参考にしてください。
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脳動脈瘤の診断:脳血管撮影(脳血管造影)

2008年02月28日 | 動脈瘤
 さて今回は脳血管撮影です。病院内では血管撮影のことを「アンギオ」といいます。これはドイツ語の「アンギオグラフィー」を略したものです。英語ではangiographyですので「アンジオ」と発音する先生もおられます。
 脳血管のアンギオは、足の付け根の大腿動脈、肘の内側にある上腕動脈、または手首の撓骨(とうこつ)動脈からカテーテルと言われる管を入れて行います。心臓や他の血管領域でも良く行われているので、「カテーテル検査」と言えば、ご存知の方が多いかもしれません。カテーテルを目的の血管、脳の場合には頚動脈や椎骨動脈と言われる血管まで入れて、そこから造影剤(CTAで使うのと同じもの)を注入してレントゲン撮影を行う検査法です。
 実は脳血管撮影は歴史が古く、CTやMRIより以前から行われています。その当時は頚動脈を首で直接刺して造影剤を注入して行うという、かなり怖い検査でした。しかし現在では上記のように足や手の血管からカテーテルを入れて行う方法に変わってきました。このため患者さんの負担はずいぶん少なくなりましたし、安全になりました。脳血管撮影では一般に1000例に数例の割合で合併症がおきるとされています。特に脳梗塞を起こすことが多いと言われており、動脈硬化の強い方、ご高齢の方に多い印象があります。個人的にはこれまでおそらく数千例のアンギオを行ってきましたが、重度の合併症はありません。しかしアンギオの合併症というのはやはり存在しており、明らかに術者の技量に依存します。慣れない術者に検査の合併症が多いわけです。
 脳のアンギオは、以上のようにリスクを伴う検査法ですが、現在もこの方法が最も確実で最終診断法とされています。最近は3D-DSAという3次元撮影ができるようになり、コンピューター画面上で自由に回転させながら目的の血管や病変を詳細に観察することが可能です。もし脳血管撮影を受けるのなら、この3次元撮影のできる機械で受けることをお勧めします。同じドクターが行っても診断の精度が変わってきますから。ただし術者の技量も大事です。脳血管撮影は多くの件数をこなすことで上達します。勇気を持って担当の先生に、これまでどのぐらいの検査を行ってきたが尋ねてみましょう。
 さて脳血管内手術を行う場合には、この「アンギオ」は極めて重要な検査法です。なぜなら、検査に使う管をかえることで治療ができるようになるわけですから。ある意味、脳血管内手術の最初の段階のシミュレーション的な要素があります。つまり血管撮影がすごく難しいケースは脳血管内治療も難しいと考えて差し支えありません。
 以上のように、脳の場合、「脳血管撮影」「アンギオ」「カテーテル検査」はどれも同じ意味です。
 これまで3回にわたって脳の血管の検査法について説明してきました。MRA, CTA, 脳血管撮影。この順に体に与える影響は増えますが、診断の確実性も上がることになります。
 みなさん、お分りいただけましたか?
 さて次から治療法の紹介をしますね!
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脳動脈瘤の診断:CTA

2008年02月28日 | 動脈瘤
前回はMRIとMRAについて説明しました。
今回はCTA (CT angiography)について説明します。
外来でMRを受け、動脈瘤が見つかった場合、多くは次にこの検査を受けることになります。
CTAは造影剤を点滴しながらCTを受けるだけで脳の血管が立体的に描出される検査法です(上の写真)。
カテーテルを体に入れることなく、極めて低いリスクで脳血管の精密検査ができるのです。
ここで「極めて低いリスク」と言った理由は、造影剤は何十万人に一人の割合で重度のアレルギーを起こすことがあるためです。ですのでアレルギーに関する問診が必要ですし、喘息や造影剤アレルギーのある人は検査を行うかどうか医師と良く相談する必要があります。軽度の造影剤アレルギーや一般のアレルギー歴のある人で検査を希望される場合には、ステロイド(副腎皮質モルモン剤)を注射してから検査を行うこともあります。
さてCTAに話題を戻します。最近はCTの性能が良くなり、この検査だけで治療の適応を決定することすらあります。
上の写真を見てください。カテーテルを入れなくてもここまで鮮明に分かるようになったのです!
しかしこの検査にも弱点はあります。脳動脈瘤の治療を行う場合には、頭の中だけでなく頚部の内頚動脈や椎骨動脈に異常がないかどうかチェックしておく必要があります。しかしこのCTAでは一回の検査では頭の中だけしか検査ができません。頚部の血管をチェックしないで治療を行うのは安全性の面で問題があります。今後さらに機械が改良されると、一回の検査で全身の血管のチェックができるようになる可能性があるそうですが、現状ではまだ無理です。ですので私自身は治療法決定前、あるいは直前に脳血管撮影を行って最終確認をしています。
CTAのもう一つの弱点としては、頭蓋底部、つまり頭の骨に接するような動脈瘤が見逃される可能性があることです。上の写真でも骨が写っていますね。
以上のように弱点はあるものの、CTAはMRAと比べて、より鮮明な情報が得られる良い検査法です。
動脈瘤の大きさ、形、ネックのサイズ、周辺の血管との関係などがはっきりと分かります。これらは動脈瘤の治療法選択に際して重要な情報です。周辺の骨や血管との関係については脳血管撮影より情報量が多いほどです。

MRI, MRA, CTA区別がつくようになりましたか?
次回は脳血管撮影について述べたいと思います。
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脳動脈瘤の診断:MRA

2008年02月26日 | 動脈瘤
「あなたの頭の中には動脈瘤があります...」と聞いたらだれでも不安になりますよね。
前回は動脈瘤がどんなものか?その破裂率などについてお話ししました。
今回はその診断についてです。

動脈瘤が診断される機会が最も多いのは、脳のMRI検査です。
MRIはmagnetic resonance imagingの略で、磁石の原理を使って脳の断層撮影を行う検査のことです。
非常に強力な磁石を使っているので、ペースメーカーなどの機械が体に埋め込んである方は検査が出来ません。
また、体内に金属の入っている方の中で、強力な磁場で発熱するタイプの金属が埋め込んである方も検査が出来ません。
しかし最近ではMRIを行うことが非常に一般的になっているため、手術などにチタンなどのMRIが出来る金属が使われることが多くなっています。
脳動脈瘤の治療に用いるクリップもチタンが主流ですし、動脈瘤塞栓術に使われるコイルは白金(プラチナ)ですので、問題なく検査が出来ます。
もし体内金属が入っている方は、必ず一度手術を受けた施設に自分はMRIが出来るかどうか、確かめておきましょう。

     

さて、動脈瘤の診断です。以前はMRIというのは脳の断面図しかとれなかったので、よほど大きな動脈瘤でなければ診断できなかったのですが、最近はMRAという検査法が一般的になりました。
これはMagnetic resonance angiographyの略で、MRIを使って脳の血管を画像化する検査法です。最近は画質が極めて良くなって、造影剤を体に入れなくても、検査台の上で横になっているだけで、脳血管の立体画像まで得られるようになってきました。
いいMRIが日本中の病院に普及し始めてから、未破裂脳動脈瘤の診断数が増えたと実感しています。
MRIにも色々あり、一般的に超伝導磁石を用いた(1.5テスラなどの)MRIは画質が良いとされています。
逆に永久磁石を用いた(0.5テスラなどの)MRIは一般に画質が劣ることが多くなります。
何テスラのMRIかが分かれば、ある程度そのMRIの画質を予測することが出来ます。
脳ドックやMRIを受けるときにはこれを確認すると良いでしょう。
いくら名医でも元の画像が悪ければ、診断率が悪くなるからです。
しかし0.5テスラでも技師さんや企業の努力で良い画質のMRIもありますけどね!
また、MRは体に侵襲が極めて少ない良い検査法ですが、CTを使った血管撮影や通常のカテーテル法による血管撮影には、未だ画質で及びません(これについては次回説明します。)
ですので、まず外来でスクリーニング(ざっと調べること)に用いられることが多いのです。
MRIとMRAの違い、分かりましたか?

     

ちなみに私も何度かMRIを受けたことがあります。たしかに横になるだけですが、「ガー!」「カンカンカン!」とけたたましい音がします。これが難点の一つで、技師さんに「もっと静かな機械ないの?」と尋ねたら「そんなMRIはないですよ!」と、笑われてしまいました。
でも本当はあると良いですよね。誰か開発してくれないかな?
皆さんはMRIを受けたことがありますか?
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