脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

脳梗塞の治療 はじめに

2009年02月27日 | 脳梗塞
いよいよ脳梗塞の治療です。
脳梗塞の治療は以下のように時期によって分けられます。
1)超急性期:3時間以内
2)超急性期:6時間以内
3)急性期
4)慢性期
この順に紹介していきたいと思います。

脳梗塞といってもいろいろな治療法があるんです。
お楽しみに(^^)v

ちなみに右の写真はうちのチームの山田清文先生です。
脳梗塞の原因である頸動脈狭窄症の診断や治療、臨床研究を熱心にやっています。
脳外科5年目でもう既に英語の原著論文を2つも書いているんですよ!
手術や血管内手術の方も最近メキメキと力をつけています。
彼なしでは、頸動脈狭窄症は語れない。
この章で皆さんにも分かるはずです。乞うご期待。
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脳梗塞の診断 脳血流検査

2009年02月25日 | 脳梗塞
いよいよ診断編の最後です。

脳梗塞を起こしそうなとき、脳の血のめぐり(脳血流)を測定します。
脳血流が極度に悪いと短時間で脳がやられて脳梗塞になってしまいます。
軽度であればそのまま様子を見ることができます。中等度だとある程度の時間はもちますが、その後は脳梗塞になってしまいます。
すなわち脳血流はどのぐらいの時間で脳梗塞になるかの非常に良い目安となるのです。

脳血流を測定する方法にはいろいろあります。
1)PET (Positron Emission CT)
2)SPECT (Single Photon Emission CT)
3)Xe-CT
4)Perfusion CT
5)Perfusion MRI
多すぎて嫌になりますね(^^;)

我々はこれらのどの検査も用いますが、1)2)は一般的に測定に時間がかかるので、急性期脳梗塞の時には主に4)5)が行われます。なぜなら非常に短時間(10分以内)に検査が可能だからです。
急性期脳梗塞はその後、血栓溶解療法を行いますから、なるべく時間をロスしたくないんですね!

最近ではMRIの拡散強調画像(diffusion image)と灌流画像(perfusion image)を比較して、「脳血流は低下しているがまだ脳梗塞になっていない部分」の範囲によって治療の適応が決められます。この範囲のことをDiffusion-perfusion mismatchと言い、これが広いほど治療の良い適応となります。

また脳のバイパス術の適応決定には2)のSPECTが用いられます。
これについてもまた詳しく説明しますね (^^)b

さあ、次回からいよいよ脳梗塞の治療ですよ。
乞うご期待!

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脳梗塞の診断 脳血管撮影

2009年02月23日 | 脳梗塞
脳血管の診断で最も信頼性の高いもの、それがこの脳血管撮影です。
脳血管撮影は腕や足の付け根の動脈から細い管(カテーテル)を入れて、頸の辺りの血管まで誘導し、そこから造影剤という液体を注入しながらレントゲン撮影を行う方法です。
脳血管を画像として写し出すもっとも原始的な方法でありながら、今なおスタンダードとされる方法です。

脳には心臓のような大きな動きがないため、最近はMRAやCTAに診断の大部分を譲りはじめていますが、やはり細かな診断においては今も最も精密な画像が得られる方法です。
ただしカテーテルを誘導することによるリスクもあります。報告によって違いますが、多いものでは5-6%、少ない報告でも0.5%ぐらいといわれています。
しかし私自身はこれまで何千という患者さんの検査を行ってきましたが、一度も合併症を出していません。
それは非常に多くの症例に検査を行って慣れているからだと思います。
たかが検査とあなどることなかれ。カテーテルやワイヤーの選択や色んな使い方の習得が必要で、それなりのコツがあるのです。「巧みの技」ともいうべきテクニックもあります。

これまで自分自身が最も多く脳の血管撮影を行ったのは国立循環器病センターに在籍していた頃です。
毎日、非常に多くの症例の検査を行っていました。というかそれしか仕事がない時もありました。
血管撮影という仕事は、スタッフの先生たちからすれば、治療の前段階であり、「雑用」という捉え方をされていたように思います。
ですから進んでカテーテル検査をする自分に「じゃあこの症例もやってくれ!」と徐々に頼まれるようになりました。
「雑用」かもしれなかったこの検査を頼まれて一日何件もこなして行くと、そのうちに「カテーテルが入らない血管」がなくなってきて、自信がついてきました。そして他のレジデントがカテーテルが入らない時には、技師さんたちに検査室に呼ばれるようになりました。
近くの病院にアルバイトにいった時にもカテーテル検査を頼まれるようになり、一日10件もやることがありました。ちなみに無償でしたが...(;;)
そうするうち、スタッフがやっても入らない血管にカテーテルが入れられるようになりました。
「雑用」であったはずのこの検査ですが、当時の国循の脳血管撮影の半分以上を自分がやっているということに気づき、ちょっと誇らしく思いました。もちろんその後にチャンスが巡ってきた脳血管内手術にいかに役に立ったかは言うまでもありません。カテーテル検査がうまい人はカテーテル治療もすぐにうまくなります。当たり前ですね。

この間、幸運にも合併症は経験していません。最近になり、他の先生達の検査をアドバイスするようになりましたが、それを見ていて合併症を起こす人の手技がどんなものかがある程度分かるようになりました。高等な「技」を覚えればいいというものではなく、合併症を起こさないための安全かつ合理的な方法があるのです。
ですから最近は、「いかに合併症を起こさない検査法を確立するか」、あるいは「どうやったら安全に後輩に検査をさせられるか」、ということを常に考えています。

検査や手術はある意味スポーツみたいなものです。良い方法を学んだら、毎日のように数多くやっているとだんだんうまくなるんですね!
この血管撮影における合併症ゼロ記録は今も続いていますよ(^^)v
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札幌での講演

2009年02月21日 | 学会/研究会
先週末のもう一つの講演の紹介です。
脳梗塞の原因として増加している頸動脈狭窄症。
これに対する治療として頸動脈ステント留置術という方法があります。
頸動脈の細い部分を風船とステントで開く「切らない治療」です。

この治療法は昨年4月から認められました。
「切る治療」である「頸動脈内膜はくり術」の難しい患者さんに対して適応がとれたのです。
その後、急速な勢いで普及し始めています。
我々脳外科ではこの2つの治療と薬剤治療の全てが可能でり、それぞれの患者さんの状態に応じて使い分けられています。
しかし最近このステント留置術が循環器内科や放射線科、神経内科のドクターによっても行われ始めました。
「切らない治療」ですから内科系でもできるのです。
もともと神経内科は神経の専門家ですし、放射線科にも脳を専門とするドクターがいます。
ですから、しかるべきトレーニングを受ければこの治療が可能と考えます。
しかし循環器内科だけは心臓の専門家ですので全く状況が違います。
「脳に関連する手術は初めて」という方が多いのです。
カテーテル治療で頸動脈を開くことができても、トラブルがあった場合の対処法が限られることが危惧されます。
しかし循環器内科のドクターにはカテーテル治療に熱心な方が多く、海外でも頸動脈ステントは循環器内科でも多く手がけられているため、「日本でも保険が通ったので頸動脈ステントを集中的に勉強して治療しよう」という動きがあります。
ステント治療前後に心臓のトラブルが起きた時や、将来的に全身動脈硬化の管理をする時に循環器内科は有利ではあります。
私の個人的な見解は、「循環器内科で治療されるのであれば、患者さんたちのためにぜひ安全な治療を行ってほしい」ということです。
こんな状況の中で、私はこれまで循環器内科医向けの講演を何度か依頼されており、今回は札幌に呼んで頂いたのです。

実際には札幌では脳外科医と一緒に治療を行っている循環器内科医がほとんどとのことでちょっと安心しましたが、全国的には循環器内科だけで独自に治療を行っている施設もあります。
循環器の先生方に講演を依頼された場合には、神経系の学会とはちょっと違う側面からお話しさせていただいています。
1)脳血管の解剖とその特異性
2)頸動脈ステント留置術のハイリスク患者
3)術中トラブルの対処法
4)他の治療を選択すべき症例
などです。

動脈硬化は全身病です。ですから循環器内科のドクターが頸動脈狭窄症にも興味を持つのは無理からぬことです。
しかし脳の特異性というものがあり、非常に細い血管が詰まるというちょっとしたトラブルも患者さんの人生を左右します。
頸動脈は開いたが、細かい栓子が飛んで脳の血管が詰まっているのに、脳の血管に不慣れで気づかなかった、
脳血管が詰まったのには気づいたが、十分な対処がとれず後遺症が残った、
といったことがないように注意を喚起し、その対処法を広め、安全な頸動脈ステント留置術の普及に尽力したいと思います。
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試験監督

2009年02月20日 | 閑話休題
みなさんこんにちは!
今日は日本脳神経血管内治療学会の専門医試験で神戸に来ています。
自分の担当は実技審査の試験監督です。
みんな緊張していますが、こっちはこっちで一日中、放射線のでる部屋でたちっぱなし。結構大変です(;;)
今年はみんな出来がいいかな?
がんばれー(^^)/~

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tPA静注療法後の救済療法について

2009年02月18日 | 閑話休題
先週末に名古屋で講演したことについてちょっと紹介します。

2005年10月に点滴による急性期脳梗塞の血栓溶解療法が日本で認可されました。
この薬は組織プラスミノーゲンアクチベーター(英語ではtPA: tissue plasminogen activator)といい、点滴するだけで脳の血管の詰まったところを再開通させられるすばらしい薬です。
ただし発症から3時間以内という制限がある上、CTやMRIですでに脳梗塞が完成していたり出血や動脈瘤がある場合等は使ってはいけないとされています。
では3時間をわずかにすぎた脳梗塞の患者さんはどうしたらいいのでしょうか?
私たちはこれまで、脳の血管が詰まって6時間以内なら脳血管閉塞部に直接カテーテルを挿入して血栓を溶かす薬を直接注入する治療を行ってきました。
ですから3時間を過ぎても6時間までならカテーテルで血栓を溶かす治療を行っています。
最近では風船のついたカテーテル(バルーンカテーテル)を併用することでさらに高い効果が得られています。

しかしtPAが使用できるようになったおかげで劇的に変わったことがあります。
それは救急隊が脳卒中を判定し、tPA治療がすぐに可能な病院を選んで搬送してくれるようになったことです。
これはtPAがもたらした最大の産物です。
ただし3時間以内にtPAを点滴しても詰まった血管が再開通しない場合があります。
これまで調べたところでは点滴直後(点滴開始後1時間)の時点で、20-30%しか開通しません。
つまったまま様子を見ていると、やはり翌日には大きな脳梗塞になってしまいます。
これでは患者さんに申し訳ない。以前はカテーテルで70-80%の再開通率を得ていたのですから。
そこで私たちは点滴が終わっても血管が開通していない患者さんに対して、すぐにカテーテル治療を追加し、閉塞部で風船を広げることで血栓を破砕し再開通させる治療を試みています。
この治療で少なくとも半数の患者さんに再開通が得られて劇的に症状が改善することが分かってきました。

この経験をこれまでいくつかの国内学会で発表したり各地で講演をしてきましたが、今回名古屋で講演してほしいと依頼されました。
名古屋の脳外科医と神経内科医の合同の会だったので、会場には100名を超える脳卒中を専門とするドクターが集まっており、大変反響が大きく驚いています。
自分たちがこれまで行った範囲ではこの方法は非常に有効で、多くの患者さんを救うことができました。
今後はその科学的検証のため、多施設で前向きの調査をしたいと考えています。
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お気に入りのスープ

2009年02月15日 | グルメ
この週末は金曜日の夜に名古屋脳卒中セミナー、土曜日には北海道頸動脈ステントセミナーで講演してきました。
土曜日の昼、セントレアで昼食をとったのですが、自分のお気に入りのスープを食べました。
Soup Stock Tokyoの「オマール海老のビスク」。
これがうまい。本当にうまい。自分が最高に好きなスープの一つです。
名古屋駅にもあるんですねー。今ホームページ見て気づきました。
http://www.soup-stock-tokyo.com/index.php

もう一つ、セントレアでの自分のお気に入りはBAGEL & BAGEL
日本で売っているベーグルは日本人向けにアレンジしたものが多いのですが、ここのベーグルは本物です。
ボストンで食べていたものと同じで懐かしい。
特にシナモン&レーズンが好きです。
http://www.dreamcorp.co.jp/bb/bb_menu.htm

いまはベーグルは楽天とかでも買えますけど、セントレアではこの二つの店が並んでいて素通りできないのです(^^)
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英語と統計

2009年02月09日 | 閑話休題
先週はファイザー製薬のリピトールという薬の講演会に行ってきました。
血液のコレステロールを下げる薬です。
脳梗塞の大きな原因の一つは動脈硬化であり、私たちはこの薬を使うことで動脈硬化が安定するかどうかを検討しています。
だから動脈硬化の治療に関する勉強も必要です。

今回はデューク大学のGoldstein先生が高脂血症治療と脳卒中に関する講演を行い、それについてディスカッションを行うという趣旨でした。
私はその会でディスカッションの部分での座長を依頼されました。
「英語で」ということで。
実は最近英語の勉強をさぼっていて、「やばい」と思いましたが、でもまあ、いい経験と思い引き受けました。
当日は脳卒中だけでなく、内科や循環器内科領域の講演もあり多領域からドクターが集まっていました。

脳卒中のパートではGoldstein先生が講演されましたが、彼の論文の多いこと! 
こんなに論文って書けるものなんだと感心しました。
彼らの仕事は「多くの患者さんを登録して、ある薬を飲む群と飲まない群に無作為に分けて統計学的に解析する」、いわゆる「ランダム化試験」という手法の研究が多いのですが、これは今もっとも評価の高い臨床研究の方法です。
そう統計がカギ、これも自分は苦手で...
いつか勉強しなくてはと思いつつ、時が過ぎています。
世は統計が花盛りです。勉強しなくては!
「切った張った」ばかりでなく、こういった科学的検証も大事なのです。

当のディスカッションは、意外にも出席者から積極的な質疑応答が多く盛り上がりました。
やっぱり内科の先生は薬に関する知識が多く勉強熱心ですね。
刺激になりましたし、座長は助かりました。

ちょっと英語も統計も勉強しないと(^^;)
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ISLSコースに参加して

2009年02月02日 | 学会/研究会


昨日はISLSに参加してきました!といっても何のことか分かりませんね。ISLSはImmediate Stroke Life Supportの略で、「脳卒中初期診療コース」のことです。


なぜ今になってそんなコースを受けるのか?実は自分は数年前にACLSコースをうけて大変勉強になった経験があるからです。また略語が出ましたが、ACLSはAdvanced Cardiovascular Life Supportの略です。


2000年にアメリカ心臓協会(American Heart Association: AHA)が「心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン」を公表し、それを日本医師会が取り入れて行ったのがACLSです。それまで、きちっとした心肺蘇生のトレーニングを受けていなかった自分にはとても新鮮で役に立つ講習でした。このACLSは一度講習を受けると、次からはインストラクターとして参加するというのもユニークなところです。しかし自分は一度講習を受けたきりになっていました。


最近このACLSの脳卒中版ができたと聞いて、以前から受けたいと思っていました。このコースは、脳梗塞の超急性期治療をはじめ、脳卒中の患者さんが病院に運ばれた最初の時点での診療手順を学ぶコースです。私自身は毎日のようにこの業務に携わってきましたが、日本救急医学会の考える「脳卒中初期診療」がどんなものか知りたかったのです。


さて「参加したい」と表明しましたが、救急部の先生たちからはちょっと抵抗されました。そうですよねー。自分が行くとちょっとやりにくいかもしれません。そこで救急部の小倉教授に「救急部の現場の指導要領を勉強したいので」と説明すると、すぐにオーケーが出ました。実はこのような状況で恥をかいてはと思い、ISLSコースガイドブックは隅から隅まで読んでいきました。当日は救急部の豊田先生、山田先生をはじめ、うちの脳外科の同門の先生方(山川先生、山田実貴人先生、加藤先生、石黒先生)がインストラクターとして人形を使ったり、模擬患者さんをもちいて丁寧に教えてくれました。中には自分が知らないこともあり大変勉強になりました。皆さんありがとうございました。


脳卒中の治療のためには、救急隊の人たち、看護師さん、そして医師が密に連携することが非常に重要です。こういった多業種の人たちを分け隔てなくトレーニングするこのコースはとてもすばらしい。今後はにわかインストラクターとして協力したいと思います(^^)V

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脳梗塞の診断 頸部MRA

2009年02月01日 | 脳梗塞
ここまでの頭部CT, 頭部MRIに加えて、最近は頸部MRAが行われるようになりました。
以前は画質がイマイチだったので脳血管撮影を追加することが多かったのですが、最近はこの頸部MRAの質が良くなったため血管撮影を省略できることが多くなってきました。
造影剤なしで検査ができるため、造影剤アレルギーやカテーテル操作に伴うわずかなリスクを回避できます。
脳梗塞の急性期診断としては、ここまでやれば十分と言えるほどです。

最近、日本でも食事の欧米化によって動脈硬化による脳梗塞が増えてきています。
以前お話しした脳梗塞の原因のうち、「頸(クビ)」が増えているということです。
ですから頸部血管の検査は必須です。

頸動脈エコーでこの部分を検査することもできます。
しかし検査の範囲が広く、上の図のように大動脈から頭の中まで一気に検査ができることを考えると、この頸部MRAは非常に有用です。
もちろん新しい良い機種でないとこんな画像はできませんけど、患者さんにやさしいすばらしい検査法です。
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