論文執筆でちょっと遅くなってしまいました。
さて、前回紹介した皮膚切開について「もっと小さい傷ではできないのですか?」と質問を受けました。
そんなことが可能なのでしょうか?
その答えは、Yesです。
上の図をご覧ください。
眉毛の近くや髪の毛の生え際を切れば、もっと小さな傷で手術はできるのです。
これは、実際の手術は点線で示した部分を中心に行うので、その部分が見えるようになれば良いからです。
小さい傷での低侵襲な手術、とてもよさそうですね!
しかし実際にはこの方法はそれほど普及していません。なぜなのでしょうか?
それはこの方法には少し問題があるからです。
まず、小さな傷から手術を行うと、普段の手術よりも狭い分だけ操作がしにくくなります。
脳動脈瘤の手術の場合には裏側や周囲の確認が大切なのですが、小さな傷から覗き込む方法では、それらが十分にできないケースが存在します。さらに、ひとたび動脈瘤から出血をきたすと狭い視野では止血がしにいのです。
あと、生え際を切る方法は良いのですが、眉毛の近くを切る方法は小さいながら傷が見えてしまいます。
したがってこの小さな手術法を選択する場合には、動脈瘤のサイズや向きなどがこの方法に向いた患者さんを選ぶ’眼’と、小さな傷から綺麗に治療する’技術’が必要です。
さて、個人的にはこの治療の経験があり、特に髪の毛が少なくなっている男性に適応することがあります。もちろん、前述のように動脈瘤がこの治療に向いていると判断した場合です。
以上、小さな傷から行うクリッピング手術について紹介しました。