脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
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脳動脈瘤 その28 外科手術が難しい動脈瘤:大型・巨大動脈瘤 治療の工夫3

2021年03月28日 | 動脈瘤
前回の続きです。
大型脳動脈瘤のクリッピングには時間がかかることがあります。
周辺の血管や神経との癒着を剥がしたり、複数のクリップを使用するためです。
この間に脳に血流が途絶えるのを防ぐためにどうするか?
そう、先にバイパスをしておくのです。

その26で紹介した動画でも先に血管をつないでいたと思います。
それは上の図のように、血流を止めている間にバイパスから脳に血流が流れるため、じっくりと動脈瘤の処置を行うことができるからです。
このひと工夫が治療の安全性を大きく高めるのです。

しかしまだ問題があります。
動脈瘤が巨大な場合や、深い場所にある場合、クリップができない場合があるのです。
できるとしても大きなリスクを伴うこともあります。
そのような場合にどうするか?
次回紹介します。
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脳動脈瘤 その27 外科手術が難しい動脈瘤:大型・巨大動脈瘤 治療の工夫2

2021年03月22日 | 動脈瘤
前回、大型、巨大脳動脈瘤のクリッピングが難しい理由を説明しましたが、それでも治療しなければならない場合があります。
そのような場合に、前回の動画のように動脈瘤を針でさしてしぼませる以外に、風船のついたカテーテル(バルーンカテーテル)を用いる方法もあります。
上の図をご覧ください。
クリップするのが困難な大型動脈瘤であっても(図左)、一時的なクリップとバルーンカテーテルで血流を遮断し、カテーテルから血液を吸引すると動脈瘤はしぼみます(図中央)。
この状態であれば動脈瘤に癒着した周囲の神経や血管などを外して、クリップをかけることができるようになります。
クリップ後は血流遮断を解除すれば完成です(図右)。
いかがでしょうか。私はこれまで大型動脈瘤に対してこのような治療法を行なってきて、治療成績は良好です。
ただし、この方法にも弱点があります。
それは処置時間が長くなると、脳に血が足りない状態(低血流状態)が続くことになり、動脈瘤の処置がうまくいっても脳梗塞などが形成されて障害が残る可能性があるのです。
ではどうすれば良いのか?
次回紹介します。
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脳動脈瘤 その26 外科手術が難しい動脈瘤:大型・巨大動脈瘤 治療の工夫

2021年03月14日 | 動脈瘤
大型・巨大動脈瘤の手術が難しい理由を前回紹介しました。
それではどう対応すればいいのでしょうか?

1)血流の一時遮断:動脈瘤内の圧力を下げることができます
2)血液吸引:動脈瘤がしぼむため、クリップがかけやすくなります
3)バイパス術の併用:遮断している間、脳に血流を保つことができます

1)は普段の手術でも行われますが、それに加えて2)3)を行うことで、大きな動脈瘤にもクリップがかけやすくなります。

実際の手術をご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=iTLWR0umkpc
この手術では動脈瘤自体を針で刺して吸引しています。そうすると動脈瘤がしぼむ様子がわかると思います。

一方、最近では動脈瘤ではなく、動脈瘤ができている血管から吸引することの方が多いです。
この方法はハイブリッド手術室で行なっています。
次回紹介しますね。
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