今回は脳動脈瘤と女性ホルモンの関係についてお話ししたいと思います。
Q: 私は脳動脈瘤があって、定期検査を受けているのですが、医師からホルモン補充療法を勧められています。受けても良いのでしょうか?
このような質問を受けることがあります。ホルモンと脳動脈瘤の関係についての論文は多くありませんが、今回、調べてみた結果について紹介します。
過去の論文を集めて解析した論文(Desai M. et al, Neurosurg Focus 47 (1):E8, 2019)の中にホルモンと脳動脈瘤の発生などに関する論文がありましたので、そのうちの2つを上のテーブルにまとめました。
まず上のDingらの論文では閉経が遅かった人と、ホルモン補充療法を受けたことがある人は脳動脈瘤が少ないと報告しています。
次に、Chenらは脳動脈瘤を保有する患者では経口ホルモン薬の使用とホルモン補充療法の経験が少なかったと報告しています。
さて、3つ目の論文はStrokeという雑誌に掲載されているものです。オーストラリアとニュージーランドからの報告で、唯一前向きに登録調査したものです。症例数も最も多いので、信頼性が高いと思います。その結果、統計学的には有意ではないもののホルモン補充療法は脳動脈瘤を減らす傾向にあることがわかりました。
3つの論文に共通するのは、女性ホルモンであるエストロゲンが少ない場合に動脈瘤が増え、補充した人では動脈瘤が少なくなっているということです。
これらの論文だけでは科学的に決定的なことは言えませんが、ホルモン補充療法は動脈瘤を減らす方向に働くと考えられますので、医師に勧められた場合には受けても良いと考えられます。
ホルモン補充療法を受けるかどうか、迷っておられる方の参考となれば幸いです。