脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

脳梗塞の治療 発症3時間以降の治療 

2009年04月30日 | 脳梗塞
tPA静注療法は発症から3時間以内しかできない。
では3時間をわずかにすぎた脳梗塞の患者さんはどうしたらいいのでしょうか?
私たちはこれまで、脳の血管が詰まって6時間以内なら脳血管閉塞部に直接カテーテルを挿入してurokinase (ウロキナーゼ)という血栓を溶かす薬を直接注入する治療を行ってきました。
ですから3時間を過ぎても6時間までならカテーテルで血栓を溶かす治療を行っています。
最近では風船のついたカテーテル(バルーンカテーテル)を併用することでさらに高い効果が得られています。
どのぐらい有効かというと、最近のデータでは12名中10名、つまり80%以上の患者さんで血管の再開通が得られていました。
というと、tPA静注療法よりずっと良いじゃないですか!
発症から時間が経っているのにこんなに再開通率が高い...
こっちの方が良いのではないか?ということになります。

自分の感触としてはこれは正しい。
ある程度の血管内治療の経験のあるドクターがいれば、点滴で溶かすより、カテーテルやバルーンカテーテルを併用した方が遥かに再開通率が高いのです。
しかも
1)バルーンはややアンダーサイズにする
2)良い適応を守る(拡散強調画像で広範囲に高信号の症例は手を出さない)
ことさえ守れば、相当いい成績が出ると思っています。
ただし問題は「どこにでも頭蓋内にバルーンを上げられるドクターがいるわけではない」ことです。
逆に、そういったドクターがいる病院で、しかも動脈からの治療ができる体制がとれる時には、なにも点滴で治療しなくても良いのではないか?より有効性の高い治療法を選べば良いのではないかと思います。

先日、富山大学の桑山先生と電話でお話ししている時にこの話題になりました。
桑山先生は今期、日本脳神経血管内治療学会会長で、「急性期血栓溶解療法についてのセッションを設けるので、それを担当して欲しいし、アンケート調査もぜひやろう」ということになりました。

日本の血管内治療のエキスパート達がどの程度、この治療に関わっているか?
tPA静注療法と動注療法の比率は?
再開通率や合併症率は?
いろいろと知りたいことがあります。
私たちの施設は極めて積極的にこの治療に取り組んでいるため、ちょっと特殊なのかもしれません。
ただ我々大学病院より、都市部の脳卒中センターの方が急性期脳梗塞は多いはずです。
その実態を把握して、日本におけるこの治療の更なる発展に少しでも関わりたいと思います。

何でも点滴で良いはずがない。
でも点滴こそが良い患者さんもいるはずです。
その見極めは?
興味は尽きません。

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脳梗塞に関する質問

2009年04月28日 | 学会/研究会
脳梗塞に関する質問がいくつかたまってきました。最近閑話休題ばかりですので、そろそろ本論に戻りますね。
これまでtPAについて紹介してきましたがそれに間に合わなかった場合についてお話します。
お楽しみに(^.^)b
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おめでとうございます!

2009年04月23日 | 閑話休題
うれしいことがありました。
自分が手術したもやもや病の患者さんが、出産して、赤ちゃんを連れてきてくれました。
男の子で、名前は大成くん!
良い名前ですね。

大成くん、君のおかあさんは2回も手術をして大きな病気を乗り越えたんだよ。
手術が心配で心配で、ぎりぎりまで粘って、
年末にとうとう薬では発作が止まらなくなって手術をして、
術後、出血があってICUで年を越しました。
見事な回復で後遺症なく2度目の手術を受けて、
そして今回、もう一つ大きな山を越えて、君を産みました。

産まれるまでいろいろと心配したけど、君が産まれて本当にうれしそうです。
まずは元気に育ってください。
できればご両親の期待に応えて、「大成」してほしいです。
おとうさん、おかあさん、おめでとうございます。

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わらじや

2009年04月20日 | グルメ
そういえば、先週阪大に行った時に、久しぶりに千里中央のおいしいたこ焼き屋に行ってきました。
名前は「わらじや」
写真にあるように、和楽路屋と書きます。
柔らかくてクリーミー。とってもおいしいですよ。
焼きたてだと、外はカリっとして中はふんわり!
千里中央に行った時にはぜひ寄ってみてくださいね。
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コメントありがとうございます。

2009年04月19日 | 学会/研究会
TTさん、AYさん、コメントありがとうございます。
自分が診察したり手術して喜んでいただけたら、そんなに嬉しいことはありません。いつでも相談して下さい。
研究については今は指導が中心で実際には池亀先生達がやっています。研究を発展させ、実際の臨床で役に立つように橋渡しするのが自分の役目と思っています。こちらはまだまだ長い道のりで、今は事務的なことが中心ですが、地道にやって行きたいです。
臨床も研究も患者さんのお役に立てるように頑張ります。みなさん、応援ありがとうございます。
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手術を受けるには

2009年04月17日 | 閑話休題
毛玉ボールさん、コメントありがとうございます。
もやもや病ですか、心配ですよね。
最近、遠方から相談に来られる方が増えています。
もやもや病も他の病気と同じで、もちろん全員が手術を受ける必要はありません。これまで相談に来られた方で再検査によって手術の必要なしと判断したことも何度かありますので、あまり心配しないでください。
今の病院から紹介状を書いてもらえれば一番いいのですが、それを言いにくい場合もあると思います。いずれにしろ遠方の方は前もってメールを頂きたいと思います。stroke_buster@mail.goo.ne.jp
事前にどんな検査がしてあるかお聞きして、うちの病院にこられた日にできるだけ必要な検査ができるよう手配しますよ。
検査の結果を直接説明しますから、一緒に考えましょう。
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脂肪組織由来幹細胞

2009年04月16日 | 閑話休題
今日は大阪大学に研究のことで出張してきました。
うちの教室の山下先生や池亀由香先生がやってきた「脂肪組織由来幹細胞」に関する研究を発展させるのが目的です。
難しい名前ですが、簡単に言えば「皮下脂肪から神経幹細胞を取り出し移植する研究」です。

「皮下脂肪から幹細胞がとれるのでしょうか?」
とれるのです。実は美容外科でも盛んに皮下脂肪から幹細胞を取り出して自分の体に戻す治療が行われています。
おなかの脂肪がとれて胸の脂肪を増やせる!と聞けば、つい治療を受けたくなる女性がいてもおかしくはありません。
男性ならおかしいですけどね。
もちろんこの治療を本当にちゃんとやっているかどうかあやしい美容外科クリニックもあるとは聞きます。
しかしいろいろな倫理の規制を受けない状況で、美容目的であれ、すでに日本で幹細胞治療がヒトに行われているという実態に驚きます。
ただしこれは「脂肪組織から脂肪幹細胞を取り出し、自家移植して脂肪を作る」治療です。

一方、「幹細胞」は全ての細胞のもとなのですから、条件次第でいろいろな細胞に成長します。
我々はそれを「分化する」といいます。
現在研究しているのは「患者さんの皮下脂肪を1グラムとって、そこから幹細胞を取り出して増やし、神経やいろいろな組織にして戻す」というものです。こういった夢のような治療が徐々に現実味を帯びてきているのです。
すごいと思いませんか?
私たちは現在この研究をヒトの脂肪細胞で行うために、倫理審査委員会に申請中です。

しかし物事は何でもそんなに簡単ではありません。
例えば現在、池亀先生は脳梗塞モデルで研究していますが、
「皮下脂肪から取り出した幹細胞が移植するのに十分な量に増えるまでの時間」と
「脳梗塞に陥った患者さんが移植を受けるのに最も適した時期」があり、
この2つの間でうまくバランスを取らなければなりません。

また、どういう投与方法がいいのか?
どういう薬を併用するといいのか?
いろいろと疑問はつきません。

さらには「本当に神経細胞に分化しているのか?」
「分化してもちゃんとネットワークを作るのか?」
「神経ではなく他の細胞に分化してそこから栄養因子を分泌してくれた方がいいのではないのか?」
考えれば考えるほど、証明しなければならない課題があります。

それでもこの治療法は魅力的です。
私たちが必死になって再開通を試みても、血管が開通しなかった患者さん、
治療に間に合わなかった患者さん、
リハビリをしても後遺症が残った患者さん
こういった人たちの症状が、少しでも改善するのならそんな素晴らしいことはないからです。

すでに国内でもこういった試みをしている施設がありますが、我々が行おうとしているこの「脂肪組織由来幹細胞の移植」はとりわけ有望なのです。
忙しい毎日ですが、池亀先生や他の先生たちとともにがんばって行きたいです。
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第2回東海若手脳血管外科勉強会

2009年04月12日 | 学会/研究会
今日は藤田保健衛生大学主催の勉強会に参加してきました。
頸動脈内膜はくり術(CEA)のセッションでミニレクチャーをしました。
CASもCEAも両方をひとつのチームが手がけることが理想像と考えています。でないとどうしてもそれぞれの術者の技量や人間関係とかに影響されてしまいます。
これが自分の現在の頸動脈狭窄症の理想像ですが、両方の技術レベルを一定以上に保つことが条件になります。
私たちのチームでは最近はCEAの比率が増えていますが、これはその時々の治療のデバイスや治療経験によって変わっていくと思います。
最新のプラーク診断によってCASとCEAを振り分けていますが、これを続けながら、少しでもよい頸動脈治療を求めていきたいと思っています。

ところで、自分がはじめてこのCEAという手術を見たのは国立循環器病センターの1年目、レジデントの時です。
当時の部長の米川先生は、小さな傷で短時間でシンプルにきれいな手術を行っておられました。
我々は以前、その方法を踏襲してきましたが、最近は安全第一ということで内シャントという血流を確保するためのチューブを挿入して、じっくりと治療を行っています。
少し傷が大きめになりますが、丁寧にきれいに縫うことで対処しています。

今日は長崎大学の永田教授、富山大学の遠藤教授、当大学の岩間教授をはじめ、多くの経験を持つ先生方が自身の手術法をレクチャーされました。同じ手術といっても道具も方法も実にいろいろで、大変勉強になりました。
外科医として多くの方法やトラブル対処法を知っていることは重要なことですからね。

と書いていたら、一宮市の病院に急患が入ったと今連絡がありました。
現在20:13ですが、がんばって行ってきます!

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虚血の治療

2009年04月11日 | 脳梗塞
今日はもやもや病の患者さんのバイパス術と緊急の頸動脈内膜はくり術(CEA)の2件を行いました。
これらのどちらもうまく行き、ほっとしています。
(CEAが夜スタートだったので、すでに午前一時ですが...)
今日は国立循環器病センターから戻ってきた江頭先生が大活躍してくれました。
もちろん、これまで通り山田先生と、新たに入局してくれた船津先生(女医さん!)もです。

脳梗塞の患者さんは多いのですが、こういった治療を受けてよくなられる人はどのぐらいいるのでしょうか?
ここ岐阜でもスタンダードな治療として広まるよう、若手と一緒に頑張っていこうと思います。
(学会の世話人の中では「若手」と呼ばれていますが、大学ではとても「若手」とは呼んでもらえないのです...)


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救済療法で合併症を出さない秘訣

2009年04月09日 | 脳梗塞
WINE娘さんから救済療法で合併症を出さない秘訣を聞かれました。
そうですねー。以下の点が大切です。

1 適応を良く考えること
2 テクニックを確立すること
3 薬の使い方を良く考えること
等でしょうか?

適応は最も大切です。この治療自体が新しくて教科書には載っていませんが、常識的なラインはあります。MRI拡散強調画像で広範な脳梗塞がないこと、これが重要です。あたりまえのようですが、最重要ポイントだと思っています。
次にテクニックですが、以下の要領で行っています。
#1 Shuttle 6FR/Launcher 6FrをICまたはCCAに上げる
#2 マイクロカテーテルをM2-3に上げる
#3 0.010のロングワイヤーでGatewayに入れ替える
という手順です。簡単でしょう。
ポイントは#1です。Shuttle 6FR/Launcher 6Frのダブルサポートにすることが重要です。またICの遠位に入れすぎるとスパスムが来るので注意してください。
薬の件ですが、救済療法を始めるときに、ヘパリンを投与しています。
動注はよほど必要と判断した時に限って行っています。

いずれにしろ倫理委員会にきちんとかけて承認を得てから行ってくださいね。通常のtPA静注のプロトコルを明らかに逸脱しますから。また当然ですが同じ部署内での同意や協力が必須です。
わからないことがあればいつでもいいので電話してください。
健闘を祈ります(^O^)/
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