脳卒中をやっつけろ!

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You tube 第25弾 抗血栓薬の中止について

2025年02月16日 | その他

みなさんこんにちは!

血液サラサラの薬(抗血栓薬)を内服している人が手術などを受ける際、担当医から薬を中止して欲しいと言われることがあります。では、その場合にはやめてしまっていいのでしょうか?

実はそう簡単ではありません。薬を中止すれば、手術などの際の出血を減らすことはできますが、一方で脳梗塞を起こすリスクが増えてしまうのです。

ではどうしたらいいのでしょうか?

今回はこの疑問にお答えするため、手術などの際に血液サラサラの薬を止めるタイミングなどについてお話ししたいと思います。

 

最初に結論を言うと、「各薬剤の特性や、手術の種類、個々の患者さんの状態に合わせてお薬をやめるタイミングを決定する」ということになります。

まず血液サラサラの薬には大きく分けて2種類あります。( )内は商品名です。

1)抗血小板薬:アスピリン(バイアスピリン)、シロスタゾール(プレタール)、クロピドグレル(プラビックス)、プラスグレル(エフィエント)など。

 血液の中を流れる血小板という成分の働きを抑えることで、血栓の形成を防ぐ薬です。

2)抗凝固薬:ワルファリン(ワーファリン)、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、 エドキサバン(リクシアナ)

 ワルファリンや直接経口抗凝固薬(Direct Oral Anticoagulant: DOAC)は血液が固まる(凝固する)のを防ぐ薬です。

 これらの薬をどのタイミングでやめるか?薬によって推奨が変わってきます。

 抗血小板薬について、ざっくりと言えばマイルドな薬(アスピリンやシロスタゾール)は継続が可能なことが多く、強めの薬(クロピドグレルやプラスグレル)は1週間前後前から中止することが多いです。

 一方、抗凝固薬はワルファリンはその効き具合が数値でわかるので(PT-INR)、その数値によって出血リスクが変わります。またDOACの場合には当日朝からの中止で良いとされています。

 今回の動画で詳しく解説していますのでぜひご覧ください!

    https://www.youtube.com/watch?v=0IDv-CEzZOQ

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ISC 2025速報: MeVO shock!末梢血管閉塞に対する血栓回収療法の有効性証明されず

2025年02月07日 | トピックス

Los Angelesで開催されているISC 2025に参加しています。

最も注目していたのは、末梢血管に対するカテーテル治療(血栓回収療法)の有効性に関するランダム化比較試験の結果です。

これまでの臨床試験では主幹動脈(Large vessel)の閉塞が対象となっていました。しかし現場ではやや末梢の血管(MeVO)に対しても治療が行われており、その有効性と安全性確認のための試験が進行中でした。

今回の学会ではそのうちの3つが報告され(DISTAL, ESCAPE-MeVO, DISCOUNT(中間解析))、なんと3つとも有効性が示されませんでした。

しかもESCAPE-MeVO試験では血管内治療群で出血合併症が多く、死亡率も高いという結果となっています。

(3試験中2つについては発表と同時にNew England Journal of Medicineに出版されています)。

厳密に実施された臨床試験ですのでこれらの結果は尊重すべきです。ただ、臨床現場で行っている治療の有効性が示されなかったため、私たちにとっては、「MeVO shock !」と呼ぶべき事態です。

 

なぜ有効性が示されなかったのかについて、さまざまな意見が交わされていますが、個人的には以下を考えています。

1)比較的軽症が対象となっていた

2)出血合併症が多かった

3)血流検査が登録の選択基準となっていなかった

4)使用した治療器具が適切ではなかった

5)判定したmRSスコアが適切でなかった

などです。

3つも否定的な結果が出ると、臨床現場でも治療を差し控える必要が生じます。しかし、一定の患者さんに対する有効性はあるはずですので、全ての治療をやめてしまうと、「助けられる人を助けられない」、といったことが起こりえます。

このようなことを防ぐためには、治療が有効な患者さんを選び出し、その効果を科学的に示さなければなりません。

私たちは今回の結果をある程度予想していたため臨床試験を検討中でした。今後、迅速に対応を講じたいと思います。

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You tube 第24弾 W-EB留置術

2025年02月04日 | 動脈瘤

脳動脈瘤の新しい治療器具として、W-EBというものがあります。

みかんのネットのような形のものなのですが、これが血管の分かれ目にあるネックの広い動脈瘤に非常に有効なのです。

どういうことかというと、上の図のように、ステントを併用すると血管をメッシュが横切ることになるため、血液サラサラの薬が長期間必要なのですが、W-EBの場合には術後の長期内服が不要なのです。

もちろん全ての動脈瘤に応用できるわけではありません。

サイズは直径3mm以上〜10mmぐらいまでですし、動脈瘤の向きなども影響します。

しかし、これまでの50例以上の経験で徐々に適応が広がり、多くの動脈瘤に使用できるようになってきました。

今回のYoutubeではこのW-EBについて動画も交えて詳しく説明しています。

ぜひご覧ください!

You tube 第24弾 W-EB留置術

https://www.youtube.com/watch?v=MnRgsVmfE8o

 

 

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