脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

二刀流のススメ

2019年11月22日 | 報道・出版関係
日本脳神経外科血管内治療学会に来ています。
脳血管障害に対して、1人の術者が開頭手術と血管内手術の両方を行う二刀流に関する書籍を出版しました。
二刀流の利点やトレーニング法、さらには各種疾患に対する二刀流としての攻め方などを解説しました。
執筆者一同の渾身の一冊です。
脳外科の若手の先生方のお役に立てることを願っています。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

同窓会

2019年11月17日 | 学会/研究会
先日、以前当科に国内留学していた三浦和智先生(熊本赤十字病院)と金丸拓也先生(日本医科大学)を招いて同窓会をしました。
二人とも神経内科専門医で、当科でのトレーニング後(三浦先生は2年間、金丸先生は1年間)、日本脳神経血管内治療学会の専門医を取得しました。
地元に戻って大活躍しているとのことで、一同とても嬉しく思いました。
「同じ釜の飯を食った」仲間たちが全国で活躍しているのはとても誇らしいことです。
お互いにより良い医療ができるよう頑張りましょう!
二人のさらなる活躍を祈っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳動脈瘤 その5 動脈瘤は大きくなるのか?

2019年11月15日 | 動脈瘤
脳動脈瘤が見つかった方からよく受ける質問の1つに、「動脈瘤は大きくなりますか?」というものがあります。
その答えは、Yesです。でも全員の動脈瘤が大きくなるわけではありません。どのぐらいの確率なのでしょうか?



ざっくりといえば、年間2%程度です。しかし最近の調査で、患者さんや動脈瘤の条件によってこの確率がかなり変わってくることがわかってきました。
このため、増大率を予知するスコアが提唱されています。
(Backes Dら. Neurology. 201788:1600-1606)
ELAPSSスコアという名前で、過去の10研究における1,507名、1,909個の動脈瘤のデータを元にして作成され、合計点数で3年または5年間の増大率が計算できるというものです。

上の表の左側が条件になっており、最も強く影響するのは動脈瘤のサイズであることがわかります。
合計点数が5点以上の場合には増大率が年間2%以上になるため、最低でも半年に一度はMRIなどを受けると良いでしょう。
とはいっても、3ミリ以上で日本人の場合には5点以上になってしまうので、3ミリ未満の方で他の項目に合致しない人以外は半年ごとの定期検査が勧められることになります。

このスコアの正確性は別の試験ですでに検証されており、かなり信頼できるとされています。
治療の適応や定期検査の間隔を決めるのに参考にすべきだと思います。

また、脳動脈瘤は初めて診断された後、早期に増大することが多いと報告されています。このため、動脈瘤が発見されたら早期(3~6カ月以内)に一度は検査することが推奨されています。






コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳動脈瘤 その4 脳動脈瘤と遺伝

2019年11月09日 | その他
さて、今回は脳動脈瘤と遺伝についてお話しします。
あなたのご家族に脳動脈瘤があると診断されたら、「ひょっとしたら自分も?」とか、「子供に遺伝しないか?」と心配になりますよね。実際、脳動脈瘤と診断された患者さんやそのご家族からよく質問を受けます。
「家族全員がMRIを受けたが、誰も異常はなかった」という患者さんがおられる一方で、これから紹介するようなこともあります。

                    

ある患者さんがくも膜下出血で搬入されてきました。極めて重症でしたが、ご家族の希望があったため緊急手術を行って集中治療を行いました。正直、私たちでさえ「もう助からない」と思うほど重症だったのですが、スタッフの懸命な治療によって奇跡的に一命を取り留め、なんと最終的に社会復帰されました。本当に運の強い方だったと思います。
さて、ある日、その方の弟さんが外来で「私たちは大丈夫でしょうか?」と質問されました。私は「脳動脈瘤は明確な遺伝病ではありません。しかし、脳動脈瘤が診断された家系では、脳動脈瘤の診断率がやや高いと報告されています。一度、MRIを受けてみてはどうでしょうか?」とお話ししました。
このようなお話をしても、検査を受けない人が多いのですが、その方はお兄さんが重症だったためかMRIを予約して帰宅されました。そして後日、外来でMRIを一緒に確認したところ、なんとお兄さんと全く同じ場所に同じようなサイズの動脈瘤があったのです。ご本人は大変驚き、動揺されたご様子で、「先生、すぐに手術してください!」と治療を希望されました。
後日、少し落ち着かれてからご家族とともに再度説明を行いましたが、やはり予定通り手術を行うこととなりました。
幸い治療は無事に終わり、患者さんも私たちも胸をなでおろした、という経過です。

                    

このように兄弟や親子で全く同じ場所に動脈瘤を認めることがありますし、家族の中に動脈瘤のある人がいる場合には家族歴のない場合に比べて3-4倍の確率で脳動脈瘤が見つかると言われています。やっぱり、兄弟や親子では顔や形が似るように、血管も似ているのでしょうね。
したがって、親族に脳動脈瘤がある場合には一度MRIを受けると良いと思います。

さて一方で、脳動脈瘤を合併しやすい病気もあります。
有名なのは多発性囊胞腎という病気ですが、それ以外にもいくつかの遺伝病(Ehlers-Danlos IV 型,Marfan症候群,神経線維腫症 1型など)で脳動脈瘤の診断頻度が高いとされています。
ある種の脳腫瘍や脳動脈硬化疾患を有する患者さんも、診断率が高いというデータがあります。

脳動脈瘤と遺伝、家族歴についてお話ししました。
次回は脳動脈瘤の増大についてお話しします。


追記:
まさにこの記事をアップした直後、外来で診察した患者さんのご兄弟が重症のくも膜下出血を起こされてしまった、と聞きました。MRIはまず無害の検査です。ぜひ家族歴のある方は受けていただきたいと思います。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳動脈瘤 その3 脳動脈瘤はなぜできるのか?(臨床研究編)

2019年11月01日 | その他
さて、私たち人間はどんな条件だと脳動脈瘤が出来やすくなるのでしょうか?

当然のことながら、人間で動物に行ったような実験はできません。しかし、定期検査でどのぐらい動脈瘤が新たにできるかを調べて、それらの患者さんの背景因子を調べればある程度のことは分かります。
このような調査結果はすでにいくつか報告されています 。それらを総合すると、脳動脈瘤の新たな形成は、上に示す条件に当てはまる方に多いとされています。また、脳動脈瘤が新たにできる確率は年間0.2~1.8%程度と報告されています。
これらの条件を見てドキッとされた方も多いのではないでしょうか?年齢や性別、多発動脈瘤、家族歴などは自分で変えられません。
しかし自分で調節できるものもあります。それは3)喫煙、4)高血圧です。

さて、前回紹介した実験のことを思い出してみましょう。脳動脈瘤を作るための実験で行われたのは、片方の血管を止めること、高血圧、そして血管を弱くする薬の投与でした。そうすると、上記の条件となんとなく似ていることに気がつきます。

まず喫煙はガンだけでなく、心筋梗塞やその他、血管の病気を増やすことがわかっています。血管を痛めるわけです。
つまり、タバコを吸って血圧が高いまま放置することは、自分の体を脳動脈瘤ができやすい条件にしているようなものなのです。もちろん、心筋梗塞などにもかかりやすくなります。
我が国では喫煙率と飲酒率が低下傾向にあるということですが、それでも多くの方がこれらの条件に当てはまると思いますし、女性で喫煙者が増えているという報告もあります。
私も以前はスモーカーでしたので「日々のストレスを癒すためについ」、というのは良く分かりますが、上記の他の条件に該当する方はできるだけ頑張って禁煙して、血圧をしっかり管理しましょう。

また、多発性脳動脈瘤や脳動脈瘤の家族歴のある人は、血管の弾性板が欠損している確率が高そうですし、年齢とともに脳動脈瘤ができる確率は上がってきます。
したがって、これらに該当する方は定期的にMRIなどを受けるとよいでしょう。

以上、脳動脈瘤が出来やすい条件、おわかりいただけましたでしょうか?
次回は、脳動脈瘤ができやすい病気と遺伝について紹介します。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする