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脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

脳神経外科速報での対談

2020年01月28日 | 報道・出版関係
脳神経外科速報に私と榎本由貴子先生の対談が掲載されました。
お時間があればぜひ読んでみてくださいね。
(Amazonでも購入可能です)

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ABC WIN seminar in Val d'Isère

2020年01月19日 | 学会/研究会
今年もABC WIN seminarに参加してきました。
Geneva空港からバスで3−4時間かかる山奥にある、フランスのスキーリゾートVal d'Isèreで40年以上開催されている最も歴史ある脳血管内治療の学会です。
今回の目玉はなんといってもカナダ・トロント大学のVitor M Pereira先生のロボット手術のプレゼンでした。写真右上がそのロボットで、コントロールパネルを操作することでステントやコイルを挿入することが可能です。実際の脳動脈瘤患者さんの治療を行う動画が示され、間違いなく歴史的な発表であったと思います。まだかなり手作業の補助が必要ですが、今後このようなロボットによる脳血管内治療は遠隔医療としても発展していくものと思います。
それ以外にも新しい機器を使った先進的な発表が目白押しでした。同行した金城先生、千田先生とともにプログラムの合間にスキーも楽しめましたし、国内外の先生たちと交流を深めることもできました。
今後も世界の最新治療に関する知識を常にブラッシュアップし、今後の医療の展開に生かしていければと思います。

We attended ABC WIN seminar!
It was held in Val d'Isère ski resort, deep mountain in France, and this neuroendovascular meeting has the longest history in the world.
This years biggest topic was the world first Robot neuroendovascular therapy by Prof. Vitor M Pereira in University of Tronto.
Upper right panel was the picture of the Robot. Stent and coils were inserted by operating the control panel.
The real procedure for human cerebral aneurysm was shown, and that was an undoubtedly historical presentation. I think that this kind of robotic surgery would be progressing as a telemedicine although it required many manual assistances in the current version.
Other than this presentation, I learned from many interesting presentations with advanced new technologies.
We enjoyed international friendship with Dr. Kinjo and Dr. Chida.
I hope to advance our future treatment of cerebrovascular diseases by continuous learning of newest treatments in the world.
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脳動脈瘤 その7 脳動脈瘤の種類(成因による分類) 解離性動脈瘤

2020年01月13日 | 動脈瘤
みなさん、ご無沙汰しています。
前回は、脳動脈瘤の種類のうち、形による分類について紹介しました。今回は、原因(成因)についてお話ししようと思います。
通常、脳動脈瘤は血管の壁に弱いところがあって、そこにストレスがかかって徐々に膨らむことをお話ししました。しかし、これとは違った機序で動脈瘤ができることがあります。そのうちの1つが、解離性動脈瘤です。昨年、ジャニー喜多川さんがこの病気になられたことでこの病名を知った方も多いと思います。解離性動脈瘤によるくも膜下出血は比較的稀ですが、脳動脈解離自体は頻度が高いとされていますので、少し詳しく解説したいと思います。

脳動脈解離の発生機序と症状
動脈の壁の中に内弾性板という血管の壁を保つ構造があることを紹介しましたが、それに何らかのきっかけで裂け目ができて、中膜の中に血流が進入することによって生じるとされています(図)。裂けた部分に流入した血液が外膜を破るとくも膜下出血になります。一方で、壁の割れた部分から出ている細い血管が詰まったり、流入した血液で壁が内側にせり出して詰まったり、血栓(血のかたまり)を形成すると、脳梗塞を起こします。もちろん、程度が軽ければ頭痛だけで済んだり、無症状のこともあります。解離のうち、ふくらんだ形のものを解離性脳動脈瘤と呼んでいます。
ではなぜ解離が生じるのでしょうか?交通事故や重症のけが(外傷)で脳動脈の解離が生じることがありますが、軽微な外傷(スポーツや運転中に首をひねった時など)でも解離をきたすことがあります。比較的有名なのは首をポキポキと鳴らす動作やカイロプラクティックでボキボキっと骨を鳴らしたあとに椎骨動脈に解離を生じることです。私も以前は首の骨をならすことがあったのですが、このことを知った後からは一切やめました(笑)。あと、カイロプラクティックは広く行われていますので、血管解離が起きる頻度はかなり低いと考えらえます。しかし、稀ながらこのような事例があることは知っておいた方が良いかもしれません。

脳動脈解離の場所
解離ができる場所は椎骨動脈という首の後ろを走る血管が最も多く(80-90%)、頚動脈や前大脳動脈など、他の血管にも生じることが知られています。ではなぜ椎骨動脈に多いのか?椎骨動脈は頚椎という首の骨の中を走るため、首をひねると血管がねじれたり引っ張られるためではないかとされています。同様に、頭部外傷の時に脳を包む膜などの硬い構造に当たるため脳内の血管が解離することが知られていますが、そういった硬い構造から離れた場所で、運動でも動かない位置の血管にも生じるため、血管がねじれたり、硬いものが当たらなくても起きるようです。

脳動脈解離の症状
解離が椎骨動脈に多いことから、痛みも椎骨動脈の近く、つまり首や後頭部のあたりに生じることが多いとされています。痛みが生じて少したってから(多くは数日以内)脳梗塞やくも膜下出血になることが知られています。つまり、痛みが生じてすぐに検査を受ければ症状が出る前に診断ができる可能性があるわけです。
さてそれでは痛み以外にはどんな症状が出るのでしょうか?
くも膜下出血を来たした場合には突然の激しい頭痛や嘔吐、重症では意識障害を生じます。これは通常の動脈瘤と同じです。一方、脳梗塞を起こした場合には、しびれやふらつき、重症では麻痺や意識障害を生じます。特に椎骨動脈解離の場合には脳幹という脳の中心部に血液を送っているので、顔面や半身のしびれ、嚥下障害(ものを飲み込みにくい)などの症状が生じやすいことが知られています。
またまれではありますが、一旦脳梗塞で発症して、その後にくも膜下出血を起こすことがあることも報告されています。

次回は、その頻度や診断法、そして治療法などについて紹介します。
コメント (2)
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