旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

2017.06.08  大分県九重町  扇ヶ鼻登山・午後編

2017-06-08 08:01:01 | Weblog




【扇ヶ鼻登山・午後編】

13:30頃牧ノ戸峠着。駐車場にとめきれず車道(の側道)までズラっとあふれた車を尻目に、
はや帰路に着いてすっぽりと空いた登山口近くの好スペースにスッと駐車できたのはラッキーだった。
天気はますます良くなって、抜けるような青空が大きく広がった、これぞ雨上がりの澄み切った空だ。

13:50出発。雨の心配はなくなったが今度は暑さとの戦いだ。沓掛山への急な階段状の道は、
我慢してひたすらスローペースをキープし登るしかない。時間差登山を狙ってはいても、次々下山
してくる登山者とのすれ違いに難儀するのは避けられない事態だ。登山遠足の中学生の団体
ご一行様と、比較的広い登山道で行き違ったのはせめてもの救いか。

写真は沓掛山山頂付近から星生山(ほっしょうさん・左側)や扇ヶ鼻(右側)などこれから向かう方面。
星生山の中腹辺りがかなりピンク色に色付いているのがわかる。沓掛山の岩場を過ぎると、あとは
全般ゆるやかで牧歌的な登山道が多くなるので、ビギナーの方にもミヤマキリシマを鑑賞しやすい
初心者向けのコースとしてもお勧めだ。平治岳のような圧倒的な密度で咲いてはいなくとも、
そこかしこにキリシマの群落が見られるので、花の時期にはとても楽しいルートである。平治岳から
遅れること約1週間後くらいが平年の見頃だと思うが、年によってバラつきがあるので最新情報を
確認されたい。

私自身数年ぶりに来てみたら、登山道の再編成が進んでいて驚いた。以前は「どこでも自由に
歩いてください」的だったのが、ほとんどの箇所にロープが張られて、「植生保護のため立ち入らないで
ください」に変わったからだ。前にも述べたように、九州の山はよく言えば「おおらか」。複数の
登山道が縦横無尽に開かれている印象で、これは悪くとると、「自然保護の観点からはまったく
立ち遅れている」ようにも思えてならなかった。それがここ数年の間で、一気に180度方向転換した
ようで、これが今の世間一般(他の地域の山々)の実情に沿った本来あるべき姿なのだろう。

しかしそうだとわかってはいても、一方我々のような写真好きにとっては由々しき事態であることも確かで、
自由なアングルを探しづらくなったので困ってしまった。撮影ポイントが限られてしまうのは正直つらい。
このあたりの折り合いをどうつけるのかは永遠の課題なのだろうか。



   

ここが登山道再整備の最たる地点。扇ヶ鼻への最短ルート(直進)が閉鎖され、廃道となってしまった!
この道筋にはミヤマキリシマの群落地が沿うようにあって、私の好きな場所のひとつだったのに…
しかし私の手元の古い地図をあらためて見直してみたら、この道は記載されていないことから、
もしかしたらここも正規の登山道ではなく「勝手につくられたルート=私道」だったのだろうか?  
これで本来の姿に戻ったってことなのかもしれない。



   

扇ヶ鼻に広がる台地から山頂部を見上げる。昨年約10年ぶりに大咲きしたというミヤマキリシマ。
今年はそこまでよくなくても、虫の被害がまったくないから、かなりいい状態で花を楽しめそうだ。
やや咲き方にバラつきがあって、この時点で全体では5、6分咲き程度だと思われるが、お気に入りの
山頂近くの尾根筋は意外にきれいに咲きそろっていたのはラッキーで、ここで粘って撮影することにした。

そこへやってきたのが大きなカメラザックを背負った78歳の熊本のおじいさん。年齢を知るまでは
とてもそうは見えないかくしゃくとしたお方で、中判デジタルカメラを取り出して撮影を始めた。
しかも今夜は満月に近い月明かりなので一晩中撮影、明日の朝まで居座るんだそうな! 
いや、驚いたが、この人って、もしかして私の追い求める未来の自分の姿、鏡なのだろうかと
はたと考えた。そら私だって、体力の続く限り山に登って、お金に余裕があれば中判を手に入れたいし、
今時のデジカメの性能を当てにしたら私のレベルでも夜間撮影は可能なので、一晩中手当たり次第に
撮影するとそれなりの写真は撮れるだろうから、そりゃ楽しいだろうし、そこそこの作品は
残せるかもしれない。

こうした本格山岳カメラマン的な姿に憧れのようなものがあるのを否定しないが、一方、私はへそ曲がり
なので、熱くなりきれず醒めた目で自分自身を客観視するのも事実、「そこまで苦労して、それで?」
みたいにすぐに投げやりになるのだ。気まぐれで気分屋なので、そうまでして真摯に写真に向き合っている
人を前にすると、なんだか逆に気持ちが萎えちゃうんだな。そんな自分に甘い姿勢は、残した作品にも
如実に現れていて、どこかしらシャープさに欠ける、ピントのずれたものが圧倒的に多くなってしまう。
実際、フォーカスの甘いものが多いとのご指摘は甘んじてお受けしたい。

とかいいつつ、「ここで一晩中撮影か、面白いかも」と思ってしまったのもまた然りで、私もトライ
しようかなと一瞬考えたりもしたが、このままの装備ではとても寒さに耐えられそうになく、弁当は車内に
残してきたし、若輩者はスゴスゴと撤退することにした。



   

夕方近くには、快晴に近いような安定した天気となった。写真は、扇ヶ鼻から星生山方面を望む。
この時点で、山頂付近には私と熊本のおじいさんしかいなかったはずで、彼を残し私は下山した。
途中、登ってくる二人連れとすれ違った。彼らは月出の写真を狙っていたのではなかろうか。


当初は再び阿蘇まで戻るつもりであったが往復するのももったいない気がしてきて、結局
そのまま牧ノ戸峠の駐車場で車中泊した。チープながらお弁当も買ってあったし、温泉に入れないのが
ネックだが致し方ない。


今日はまあ、いろんなことを考えさせられた一日で、下手な文章が余計に長くなってしまった。
今の私の旅のスタイルは、列車にも乗らなくなって、旅人宿にもあまり泊まらなくなって、
見知らぬ人々との出会いを積極的に求めたものではなくなっている。それでも類は友を呼ぶとでも言うか、
様々な人との(それほど深いものではないとしても)触れ合いがあったりもする。非日常にいることで、
私の普段は鈍い感性がそれなりのレベルで研ぎ澄まされるのだろう、日頃あまり気にならないことが
とても大事なことに思えたり、気づかされたりもする。

でもお酒を飲んで一晩寝たら、たいていのことはどうでもよくなって、またいつもののんびりムードに
身をゆだねる。そんな私の甘っちょろく、ゆる~い旅はまだまだ続くのだ。





   


   

コメント
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