まだ休みは少し残っているし、どうやら少なくとも明日土曜日の午前中までは天気も持ちそうだ。
扇ヶ鼻に限ると、夕方、早朝とまだ二回撮影チャンスがあることになる。一方、すでにかなり
お疲れ気味であったことも確かだし、一応やれることはそれなりにやりつくした感もあったので、
そろそろ潮時なのかもなと思った。
ひとまず温泉で汗を流してから身の振り方を決めようと、向かったのが日本一の炭酸泉で有名な
長湯温泉だった。ここは近年道の駅としても登録され、一部狭かった道路も拡張工事が終わり、
周辺は見違えるように整備が進んでいた。立ち寄ったのは日帰り公衆浴場の「御前湯」。
モンベル会員なら、200円割引の300円(別途ロッカー代金として10円必要)とお得感たっぷりに
入浴できる。ここは何度か訪れたことがあるのだが、男湯が三階だったのは今回が初めてだった。
露天風呂が横を流れる川のすぐ近くになる一階のほうが私としては好みかもしれない。
平日でしかもこんな晴天の日に、朝からひとっ風呂浴びている客は少なく、入浴後の休憩室も
ほとんど貸しきり状態だった。川沿いに面した引き戸をすべて開けっ放しているため、開放感は
抜群だ。外はカンカン照りだったが、水面を渡り吹き抜けてくる風は涼しくて、風呂上りの火照った体を
すぐに冷ましてくれた。
対岸の大きな栗の木の新緑がとても美しく飽かずに眺めていた。それから横になって数十分
ウトウトと仮眠した。
ここの休憩室は食堂も兼ねていて、食事はすべて近隣の店から「出前」で運ばれてくる。
前から一度ここで食べてみたかったので、店が開店する11:00を待って注文してみた。
チャンポンをと考えていたら、それを提供している店は休みみたいで、仕方なく「とり天定食・700円」
の出前を頼んだ。
味はそれほどでもなかったが、ボリュームはたっぷりで、下山後の腹ペコ君にもガッツリといただけた。
フロントのお姉さんに「こんな大胆に開けっ放して、虫とか蚊とか入ってこないんですか?」と尋ねたら、
「夕方には閉めますから」とまったく意に介しない返事が返ってきた。実際、虫も蚊もまったくいなかったので
そんなものかなと納得していたのだが、食べ始めてすぐにチョウが飛び込んできて、ポン酢のキャップに
張り付いて嘗め回し始めた。一度追い払ったがすぐにまた引き返してきて吸い始めたので、
よほどお気に入りなのかなとそのままにしてやった。
キャップまでは許すけど、とり天には手を(口を)出すなよ。
6月9日(金) 晴れ時々くもり
【扇ヶ鼻登山・早朝編】
夜中何度か目が醒めた際には、月明かりが煌々と差しているのがわかった。ところが出発の
準備をする頃にはかなり雲が多くなっていて、朧月夜のような状況であった。支度を終え
出発したのが3:35。自分としては余裕をみていたはずが、どうやら今朝も雲が多いために
東の空が焼ける可能性が出てきて、このままでは間に合わない恐れもあると気づいてからは
足どりを早めた。前に「牧歌的な」と述べてもいる登山道は、それでもゆるやかながらずっと
上りが続くことには変わりなく、ハイペースで歩いたため、かなり息を切らしてしまった。
現場に到着して即朝焼けが始まり、ギリギリ撮影には間に合ったが、できたらもうちょっと
余裕を持ちたいところだ。しばらくして、ハーフNDフィルターを用意するのを忘れていることに
気がついた。もうひとつのカメラバックには、携帯用の小さい面積のを常に装備していて、
この度初めて使用した新型のバックには準備し忘れていたのだ。しかし仮にこの小さいサイズの
フィルターがあったとしても、今朝使用した広角レンズはフィルター径82mmの大口径なので、
使い物にならなかったかもしれない。あれだけ準備する時間があったのに、これは明らかに
自分の怠慢だ。空と手前のミヤマキリシマとの明暗差が著しい被写体だったので、
このフィルターが活躍するチャンスを逃したのが残念だ。
扇ヶ鼻への山行で初めて新型カメラバック(50AWⅡ)を使ったので、その使用感をここで少し
述べておく。ハンドル(取っ手)がサイドに配置されたのは、当初思っていた以上に使い勝手が悪く、
ザックからバックを取り出す際に、知らず知らずのうちにハンドルを手がかりに探り、取り出そうと
していることに今更ながら気がついた。ハンドルがサイド(ザックの取り出し口からみて下側)に
移ったため、手探りでこれまで通りに取り出そうとすると、そこには何もなくてツルっとしている
だけなので、引っ掛かりがなくすこぶる具合が悪いのだ。
これは慣れの範疇の問題かもしれないし、そうかといって大型レンズ群を装着しての撮影時には
これからも必ずこのバックのお世話になるのだから、ひとまずは習うより慣れろで、使い続けるしか
ないのである。
とか考えてる暇もなく空は変化し続けるので、限られた機材で懸命に撮影を続けるしかなかった。
欲を言えばもう一段色鮮やかに雲が焼けたらなお良かったのだが、それでも朝焼けとキリシマの
共演ショーをたっぷりと楽しめたとしておこう。
あの熊本の老兵士も近くで撮影していて、彼によると、0:00頃から雲が多くなってしまったが、
それまでは満月に照らされた山並みの撮影を堪能したんだそうだ。
このあと、やはり雲がやや多めだったので朝一番の日差しは弱めで、でもまあ少しだけ追加で撮影を
試みたてから、私は下山を開始した。
阿蘇のカルデラ内には雲海が発生していた。このあと天気はどんどん良くなって、青空が大きく
広がった。このところ朝方だけ雲が多いのは、日和癖なのかな。
この朝は周辺のあちらこちらで雲海が見受けられた。九重連山のすぐ真下まで雲海が押し寄せて
いたとしたら、もっと面白い写真が撮れていたに違いない。
7:35下山。さあ、これからどうしようか?