北鎮岳の白鳥、千鳥の雪渓もくっきり。これだけ気温が上がっているのに靄ることなく、
空気がクリアーなのがとても不思議だった。
熱々のポカリスエットを携えて、今度は赤石川方面へ散策に出かけた。
イワギキョウの群落。
コバイケイソウとポン黒岳。
雪解けに咲く高山植物がきれいであったが、分散して咲いているので撮影は難しく、写真的な成果は
ほとんど得られなかった。
赤石川の源流付近でゆっくり休憩するつもりだったのに、この付近はまだ大きな雪渓に埋まっていて
予定変更を余儀なくされた。今年は雪の解け方、残雪の残り方が例年とはかなり違っているようだ。
それで、ひとつ手前の沢(源流からの下流)で顔を洗ったりうがいしたりして、少しでも体温が下がるように
抵抗を試みた。
雪解け水は手をつけていられないほど冷たく、外気温とのギャップにたじろいだ。ここに熱湯ポカリを
しばらく浸し、飲める程度まで温度を下げることに成功した。
7月29日(日) 晴れ時々曇り
昨夜テン場は混雑したので、私のテントのすぐ横に彼ら二人組みが設営したのは致し方なく、また
スペースに窮したのでフライの前室を広げられなかったもやむを得ないとしても、せめてそれを固定して
ほしかった。夜間風が出てくると、放置された前室が私の耳元でバタバタ大きな音を立てはためいて、
いったん目が開くと気になり、そのあとはなかなか寝付くことができなかった。二日続けてこれでは
体が持たない。
目覚ましをかけていたわけではなかったが早くに目が覚めたので、準備して2:00過ぎに歩き始めた。
やや雲が多かったものの、満月が煌々と周囲を照らして映し出し、明るい月夜散歩であった。
あわよくばチングルマの群落を月光で写してみようかとの目論見は、風が強いのですぐにあきらめ
歩き続け、北鎮岳分岐付近で夜明けを待った。全面焼けそうな気配も、そうはならず、どちらかというと
平凡な夜明けにとどまった。
雲に隠れる寸前の満月を旭岳と一緒に写し込んだ。今日が月食だと勘違い、実際は昨日だったようだ。
いずれにせよ、北海道では皆既になる前に沈んでしまうと聞いていた。内地では台風襲来と
重なってしまったので、皆既月食を観察できたところは少なかったのかもしれない。
中岳温泉。流されてしまったか看板など何もなく、スコップと小さな湯船がふたつあるだけだった。
手をつけてみたら、かなりぬるかった。
そしてこの日の目的地、裾合平到着。チングルマの群落は、いい時と比べるとかなり少なめであった。
おまけに周囲は基本「晴れ」ているのに、ちょうど太陽の方角だけに暑い雲があって湧いていて、
いっこうに日差しが来る気配がなく、ほとんど撮影できないまま立ち去った。いったいこんなに
遠くまで何しに来たのやら、くたびれもうけである。せかっく旭岳上空にきれいな雲が出ていたというのに。
しかも昨日つくったポカリ(1.3リットル=1リットル用の粉末を計1.3倍に希釈した)を、この道中で
飲み干してしまった。帰ったらまた飲料水づくりが待っている。
中岳温泉付近ののキュウリンカ。
北鎮岳上空にもきれいな雲が流れていた。このあたりから天気はどんどん安定し、これだけ高温なのに
不思議なくらい山頂部に雲がかからない状況がその後ほぼ一日中続いた。
翳らないのでテント内は蒸し風呂状態、おそらく35℃以上になっていただろう。外の気温も30℃くらいまで
上がっていたと思われる。この日下界の東川では35℃あったと聞いた。灼熱の関西から逃げ出した
はずなのに、まさか北でもこの暑さに見舞われるとは。
山に登って、これだけ太陽に「翳ってくれ!」と懇願した記憶は、これまでそう多くはない。風景写真の
撮影には、基本日差しがあることが条件なので、太陽が顔を出すことを願い、待ち続けるのが普通だ。
まさに先ほどの裾合平とは真逆で、結局自分本位なのだと、あきれた話で恐縮だが、この暑さの前には、
写真撮影は二の次、体調を優先せざるを得ない。
とにかく飲み水を確保しないことには命にかかわる。テントに戻ったら、すぐにまた1リットルの水を
煮沸した。