5月21日(日) 曇りのち晴れ
出航時白波が立っていた北の海域は、西に向かうにつれ徐々に穏やかになっていった。
元々ドック入り期間で間引き運転中、運休日があったところへ、姉妹船「あかしあ」が
どういう事情かは知らぬがドック入りが早まったらしく、臨時休航したことで前後に
出航しない日がさらに増えたので、この日のはまなすに車も人も流れ、混雑することが
予想された。案の定、両者とも多いように思えたが、その割には船内は意外にひっそりと
していて、比較的安穏と過ごすことができた。皆、船室にこもっているのであろうか?
船内ではもっぱら本がお供だが、車での移動中はラジオが旅の道連れだ。市街地を走行中、
あるいは丘での撮影時など短い距離の発車&停車を繰り返す際などは、ラジオを聞きながら
の運転が多い。また、悪天時車内で暇をつぶすときや朝食、夕飯時には(本来登山用途の)
携帯ラジオをつけ、ニュース番組などを聞いている。旅の途上では、ラジオやスマホが
最新情報の源なのだ。
ラジオから流れてくる音楽は、受け身で聞くことになるのだけれど、時にそれがツボに
ハマるとことさら味わい深く、目的地に着いてもすぐにスイッチを切ることができず、
しばらくそのまま聞き続けることもある。私が視聴するのは主にNHKラジオ第一放送
(R1)で、今回も折に触れ、心に染みてくる音楽に巡り合うことができた。
その一部を紹介すると、まず午前中の帯番組「ふんわり」パーソナリティ・六角精児さんが
かけた茶木みやこさんの『まぼろしの人』。ちょうど「迷路荘の惨劇」を読み終えたばかり
だったので「金田一きた~」と思わず叫んでしまった。佐々木好(このみ)さんの『ドライヴ』
も、不思議な歌詞、旋律がいつまでも耳に残った。伍代夏子さんの担当日には、辛島美登里
さんがゲスト出演されていた。
深夜~未明に行動することが多くなる旅行中、ラジオのスイッチをひねるとやっている番組が
「ラジオ深夜便」。「寺尾聡特集」をやっていて、大ヒットアルバム「Reflections」からの
楽曲が多く流れ、今聞くと、やはり『ルビーの指輪』の出来栄えが飛び抜けていると思った。
「別れの歌特集」の一曲目が甲斐バンド『最後の夜汽車』。ものすごく久しぶりのはずなのに、
ほとんどソラで一緒に歌えるのが我ながら不思議だった。完璧にすり込まれているようで、
今度カラオケの持ち歌にとも思ったが、こういう熱唱型のバラード曲は、歌が上手な方だと
拍手喝采で受けても、そうじゃない私などは間が持たず、場がシラケるのが目に見えていて、
やめたほうがいいだろう。
そして水越けいこさんの『東京が好き』。サビにインパクトがあるいいメロディだけど、
これってシングル曲だったかなあ? 『ほほにキスして』がヒット、私はその次の
『TOUCH ME in the memory』がお気に入りだった。水越さんの熱烈なファンだった
クラスメイトにお借りして、デビューから数枚のアルバムを聞いているので、初期の
楽曲のほとんどは知っているつもりだ。そのクラスメイトには部内恋愛の彼女がいて、
その娘がけっこうきれいで、うらやましかったのを覚えている。ふたりは幸せな結末を
迎えられたのだろうか? 『和歌山が好き』になっていなければいいけどな。
♪ だけど和歌山が好き ひとり残されたって
そんな和歌山が好き あなたはもういない
目の前に広がる現実世界に重ね合わせ、思い出に触れる心の旅が同時並行するのが、
ラジオを聞きながらの道行きだ。
5月21日(日) 曇りのち晴れ
出航時白波が立っていた北の海域は、西に向かうにつれ徐々に穏やかになっていった。
元々ドック入り期間で間引き運転中、運休日があったところへ、姉妹船「あかしあ」が
どういう事情かは知らぬがドック入りが早まったらしく、臨時休航したことで前後に
出航しない日がさらに増えたので、この日のはまなすに車も人も流れ、混雑することが
予想された。案の定、両者とも多いように思えたが、その割には船内は意外にひっそりと
していて、比較的安穏と過ごすことができた。皆、船室にこもっているのであろうか?
季節の変わり目であるこの時期は、元来日によっての気温差が大きかったであろうが、
近年そのふり幅の激しさが目立ち、今年の3、4、5月の温度の上がり方は、明らかに
異常だと思える。そして、時折ある寒の戻りとの差が著しいので、温度変化に弱い
私などは、ついていけず、ますます体調に異変をきたしてしまう。
以前は、GW明けの北海道の見どころとして、エゾヤマザクラの開花、エゾエンゴサク、
カタクリなど早春の草花の観察を楽しみにしたものだが、近年それらはほぼGW期間中に
見頃を終えてしまい、その残骸しか見ることができなくなった。畑起こしが始まる
この季節の美瑛周辺の景観も好きだったが、土手化が進むなどし、昔のなだらかで、
うねるような丘の風景は少なくなるばかりだし、雪解けが早まる傾向の十勝連峰や
大雪山の白さは控えめで、メリハリに乏しく、魅力は薄れる一方でなかろうか。
北海道もご多分に洩れず気温の変動激しく、まだ5月なのに夏のような日が降り注ぎ、
環境もますます過酷になるように思える。それでも植物たちは適応するのだろう、渡道時
咲き誇っていたタンポポはいつの間にか綿毛となり、白い穂を大空へまき散らした。
たった二週間、変わらないようでいて、知らぬ間に季節は確実に移ろっていたようだ。
体調不良、体力低下、すっかりヤキがまわった自分自身を棚に上げ、昔は良かったと
愚痴をこぼす。過ぎた昔に戻れるはずもなく、あの頃の感動が薄れるばかりの旅路なら、
そろそろ終わりにしてもと思いつつも、めぐる季節に、もう少しだけ抗ってみる余地は
残されているのだろうか。