ここ数日和歌山市でも真冬並みの寒さが続きました。ちらついた程度ではありましたが
初雪も観測されました。今日は強い風が収まり、いくぶん寒さが和らいだようです。
和歌山市民図書館で「横溝正史 ミステリ短編コレクション」を全6巻お借りしました。
いっぺんに6冊も読めないのはわかっていたんですが、ぜひともこの艶めかしくそそられる
表紙絵をまとめて撮影したく思い、それだけの理由で一気借りしてしまったのです。
いかにも横溝らしいというか、この装丁だけとってみても、素晴らしい出来栄えの
コレクションです。もう10年くらい前に刊行されていたら、間違いなく自身で購入していた
でしょうけど、現況私のありさまでは、極力こうした出費は避けなければならないのです。
一見するとたいそう色っぽいこの女人、よく観察すると目が完全にいっちゃってて、
けっこう怖いです。
第6巻表題になっている『空蝉処女(うつせみおとめ)』って作品を私は読んだことない
のだけど、そのイメージなのかもなあと勝手に想像しております。
現在横溝本は、新刊は一部の金田一モノ以外手に入りにくい状況なので、それ以外の短編~
中編を読み損ねている方(私を含めた)にはうってつけの本シリーズと言えるでしょう。
シリーズ第1巻収録作は、角川文庫版では『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』
『山名耕作の不思議な生活』の表題で出版された2冊分にあたり、それらは自身で所有していて、
読んだことがあるので後回し、ひとまず第2巻『鬼火』から読み始めています。ただし第1巻も、
角川版では校閲が行き届かず、文章の脱落などが見受けられるのを、本書では可能な限り校訂が
施されているとのことなので、いずれ読み直すつもりでいます。
表題作鬼火は弟子屈町の図書館で角川文庫版を発見し、小躍りして初めて読んで以来の再読で、
横溝の初期の傑作とされる怪奇&耽美ムード漂う一品。初出時校閲で削除されるなどしたためいくつか
バージョンがあり、のち改訂版として出版され、著者自身で差し替えられた部分のみを抜粋したものを
付録として収録。また、2014年になって発見された自筆原稿をもとにしたオリジナル版も別掲で
収録されるなど、ファンの所有欲を十分満たすだけの重厚なつくりとなっています。
デジタル、デジタルと叫ばれ、もてはやされ、デジタル推進が加速するばかりの今日この頃、
違和感を感じ、息苦しさを覚える昭和世代の面々には、完全アナログ世界に逆行、いわば異世界に、
たまにどっぷり浸かってみるもの一興なのでは。
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