旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

横溝正史ミステリ短編コレクション~いよいよ最終巻

2021-02-08 19:18:18 | 図書館はどこですか


第四集、五集と順調に読み進め、いよいよ最終巻へたどり着いた横溝正史ミステリ
短編コレクションです。第六集「空蝉処女(うつせみおとめ)」は、昭和10年代の
短編作品中心に収められ、むろん読むのはすべて初めてのものばかりです。

ここまで読んでみて、探偵小説(推理小説)というジャンルのくくりの中ではあっても、
実にさまざまなアプローチで作品を発表されていることに改めて感心させられました。
本格、耽美、怪奇、幻想、冒険、スパイ小説風などなど、振り幅が非常に大きく、多彩、
読み手を飽きさせないのがすごいです。初期作品の中には、一部出来不出来に多少差があり、
さすがに見劣りするものが含まれてはいるものの、これだけ多作であるにもかかわらず
全体的には優れた完成度、高い水準を維持し、目を見張るばかりです。また文章そのものも
非常に格調高く美しいものが随所にみられ、純文学と何ら変わらない品の良さに満ち満ちた
作品もあるほどです(その上質の語り口調で、淡々と残忍な犯罪が綴られていたりします)。

現在入手困難になりつつある横溝作品を補う形で発刊されたこのシリーズは、先発の短編集
全六巻と後発の由利・三津木探偵小説集四巻を合わせると、かなり充実したコレクションに
なるにせよ、まだまだこれですべてを網羅できたわけではありません。金田一、由利
両探偵が登場しない中編、長編が抜け落ちているし、金田一ものでもマイナーな作品は
すでに廃刊となっているものが多いので、それらを復刻し、シリーズ化するとなると
埋没しているさらなる膨大な作品群がサルベージされることでしょう。また、人形佐七捕物帳
などの時代劇物や青少年向け小説などを新たにまとめるとするならば、さらに一連の
シリーズは充実したものとなるはずです。

ここまで編集を担当された日下三蔵氏には、お骨折りをねぎらいつつ、もう一肌脱いで
いただかなければならないようです。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 三か月がかりでようやくフダ... | トップ | チンゲンサイ最終形態&コマ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

図書館はどこですか」カテゴリの最新記事