9月22日(金) 晴れ時々くもり
昨日から白雲岳避難小屋周辺には、大雪山写真家集団の「重鎮」たちが多数集まっていた。
この時点で、大雪山中で紅葉的な写真を撮れるのがまずここしかないであろうことはわかっているし、
予報どおりだと天気もいいとうことで、皆、鋭い嗅覚で嗅ぎつけてきたのだろう。
この日は滞在中一番安定した天候で、トムラウシがほぼ一日中見え続けた。紅葉のシーズンに
なってから、こういった日が一日もなかったとのことで、せっかくの見事な色づきと天候とが
シンクロしていなかったことがよくわかる。
早朝どこで写真を撮るかOさんと相談して、紅葉的な写真を写せる高根ヶ原へ向かうことにした。
重鎮のひとり、旭川のRさんも一緒だ。Rさんは早朝の高原温泉の風景が気に入っていて、
しばしばここをターゲットにしておられる。
ほぼピーカンながら少しモヤっている感じがして、しかも朝日も平凡、決して条件は良くは
なかったものの、これまで写したことのない風景を撮れたのが何よりだ。
霜の降りた草紅葉が朝日に輝いてきれいだった。
ウラシマツツジなどの草紅葉はほぼ見頃を終えていたが、一部赤い葉も残っていた。
9月21日(木) くもり時々小雨
昨夕、高原温泉駐車場に到着した頃から降り始めた雨はその後雷雨となり、雨脚はさほどでもな
いものの、未明まで断続的に降り続けた。薄明るくなってから行動を開始した頃には雨は
上がったかに思えたが、時々小雨がパラついて、登山意欲を萎えさせた。
このところ同じような状況での登山開始が続いていて、悪天候時には行動を起こさないを
ポリシーとしているのであれば、本来は登山を中止したいところである。しかし限られた日程と、
その後天気がよくなっていくことがわかっている希望がある限り、勇気を持って第一歩を
踏み出さなければならないのだ。
意を決して、上下雨具を着込んで歩き始める。結果的には雨は小雨がたまにパラついた程度で、
ほぼ無傷でテント設営までこぎつけることが出来た。まあでもこれは結果オーライであって、
下手すればびしょ濡れは避けられなかった状況ではあった。
写真は見晴台から。紅葉はここ数日でずいぶん下りていて、昨日の時点で大雪湖周辺も
かなり色づいているのがわかった。
緑岳第一花畑。チングルマの葉っぱが真っ赤に色づいている。ナナカマドは当然葉を散らしていても、
予想していた以上に残っているなという印象だ。
エイコの沢手前の日本庭園を髣髴させる場所。
緑岳ガレ場から。ナナカマドの赤はやはりずいぶん少なくなってしまった。
小屋到着寸前には青空も見え始めた。稜線のナナカマドの葉は、やはりほとんど散ってしまったようだ。
前回同じ構図のものを掲載している。使用前・使用後といった感じでご覧願えたらと思う。
白雲避難小屋に到着したら、昨日から入っていた士別のOさんがテラスで日向ぼっこしていた。
ちょうど日が差し始め、風も穏やかポカポカ陽気であったのだ。昼から一緒に高根ヶ原に出かける
打ち合わせの後、テント設営、昼食などとり休憩する。テントはほかに一張りもなく、一番乗りだった。
午後、出かける頃にはまたガスってしまったが、下見をしておきたいというOさんの希望もあり、
ダメ元で出発した。途中で雨がパラついたときには「やっぱりよせばよかった…」と正直
思ったし、私一人だったらとっくに引き返していたかもしれない。
それでもガスは上がり、また日が差し始めた。高原温泉を見下ろせるところまで到着。
空沼周辺など上部のナナカマドはかなり葉を落としているが、それより下はなかなかの
状態である。写真を撮ろうとセッティングしているうちにまたガスが多くなり、結局ほとんど
写せずじまいであった。
楽しみは明日に持ち越しということでスゴスゴと引き返す。小屋までの道のりはゆるやかながら
登りが続きつらい。
テント泊。6張りのみ。夕方から風が強まって、体感的にとても寒く感じた。ガスはどんどん少なくなり、
風もやがて収まって、夜半、満点の星空となる。
今季から閉館となった層雲峡ユースホステルに立ち寄った。当然ひっそり閑としていて、
しかしとめてある5,6台の車はどこのもの?
今回山で、札幌のIさん、砂川のOさん(旧姓Yさん)、徳島のKさんなどとお会いした。
彼らはユースをベースとしながらも、これまでも避難小屋や大雪高原山荘なども利用していた
方々なので、ユース閉館後もスタイルを少し変えることで山旅を続けられているようだ。
問題は宿泊がほぼユース・オンリーだった人たちの境遇だろう。熊谷のハチマキおじさんは
今季は断念したそうだし、熊本のTさんは紅葉のペースが早まったため旅程そのものを
キャンセルしたということだ。
大阪のH夫妻は、旭岳側の大雪白樺荘ユースとぬかびらユースに宿泊し、秋の大雪山に
訪れていたという。この時点でユース的な宿を利用しての山旅としては、非常に思慮深い
有意義な選択をされたと思う。ただし、いずれも層雲峡を基点とすることに比べると、
少なからずデメリットがあり、苦労されたことであろう。
そう、本来それらの中心となるべき地点の層雲峡に、ベースとなるべき宿がなくなったのは
あまりにも衝撃が大きすぎる。このことは前々からわかっていたことだが、なくなって
なおさらこのユースの存在意義をひしひしと感じるのである。
休館中! とあるからして、いずれまた再開するんじゃあなかろうか?
温泉街にある立体駐車場が工事を終え、再利用できるようになったようだ。費用もかかるだろうし、
もう二度と復活することもないだろうと諦めていただけに、この再開は本当に助かる。今回は
たまたま利用せず終わったが、宿無し車中泊人間にとって、この屋根付き駐車場の存在は
これまた相当意義深いものなのだ。
層雲峡ユースの存在価値も同じくらい大きいのだと、町はわかってくれたらいいのだが。
建物はかなり老朽化していたから、取り壊されるのは止むを得まい。いつか再建される
であろう新型は、ぜひ温泉付きであってもらいたい。
ここで業務連絡:
マロへ、砂川のOさんが、帰省がてら大阪の忘年会に参加したいそうだ。なので、
出来るだけ早く開催日時を知らせてほしいとのこと。毎度手数をかけさせてすまないが、
もし今年も開催できそうなら、日程のすり合わせなど、よろしく頼む。
20日(水) 晴れ時々くもりのち雷雨
東川の道の駅で目覚めたらいい天気、青空が広がっていた! これがあるから、
事前にそれなりの用意と覚悟をしておかねばならぬのだろうが、いまさらじたばたしても
どうしようもない。今日は準備しながらの移動日と割り切る。
恒例の上川のあさひ食堂で「しおセット(1030円)」。合わせたのはミニチャーハン。
ここの焼き豚入りチャーハンが気に入っていて、基本これを選択することになる。
塩ラーメンはひき肉に加え、たっぷりというわけではないが野菜も盛られており、
健康志向、やはりこれを選んでしまうことが多い。
北海道は台風一過とはいかず、風雨の強い不安定な天候が続いている。登山や写真撮影を目的に
来ているので、こうなるともうお手上げ、あとはグルメなどに走るしかない。
トリトン旭神店に開店直前に並んですんなり席を確保できた。すぐに待ち客が出て、やがていすに
座れないくらいにあふれたので驚いた。
あきらめかけていた「旬さんま」にありつけたのは幸いだった。味もとてもおいしかった。しかしさんま
だけでなく、ほかのネタも全般に値上がりしていたのが辛かった。イカや鮭など不漁続きで、安い価格で
寿司を供給することが極めて難しくなっているのだろう。状況は理解できても、こちらの財布の中身を
直撃なのはゆゆしき事態だ。
もはやお気軽に回転寿司…ともいかないご時勢みたいで、私としてはそんな頻繁には食べられないな。
でも客離れは起きていないみたいだし、トリトン人気は根強いとみた。
〆はさんまのつみれ汁。
不安定な天気は続き、午後からは一時激しい雷雨となった。稜線や中腹の紅葉は、ほとんど
葉を散らせてしまっただろう。
台風は予想進路を外れることなく一目散に北を目指していて、これをどこでやり過ごすかが課題であったが、
北海洋さんが一夜の宿を快く提供してくださったので、この難題はすぐに解決した。
その上、夕食から翌日の昼ごはんまでご馳走になってしまった、恐縮至極である。しかもほぼすべて彼の
手作り、頭が下がる。私は積極的にできあいのおかずは食べてこなかったので、先のことが思いやられている。
スーパーの惣菜に頼る気がないのならば、料理を覚えねばと前々からわかっていながら、この課題は
先送りしたままなのだ。
夕食はボリュームたっぷりの中華丼と温泉卵とキュウリの和え物と卵&わかめのスープである。
数日間欠落していた生野菜と肉をたらふくいただいた。
朝食は、卵サンドとジャムパンに茄子の中華風和え物と前日のスープの残り。
ジャムは手作りで、素材のイチゴ、それと茄子は、彼の父が家庭菜園でつくったものだ。
昼食はギョウシャにんにくのマヨネーズ和えスパゲティとジャガイモとオニオンのスープ。
ギョウシャにんにくのスパイスが効いて、これが無茶苦茶うまい! 茄子など野菜もたっぷり入って、
お腹いっぱいになった。浅漬けのキュウリも彼の家でとれたものだ。もちろん、ギョウシャにんにくは
山菜取りで得たもので、私からしたら、ハイレベルなワイルドライフである。
ダラダラ長居してすんまへん。避難及び栄養補給完了!
以前なら下山中、日帰り登山者をそこのけそこのけといった風に追い抜いたものであったが、今じゃ落ちぶれ
マッポの手先の不倫騒動、「お急ぎの皆さま、どうぞお先に」である。好天の休日、予想通りたくさんの登山客で
にぎわっていて、赤岳山頂には40人くらいはいたか。
それでも途中から登ってくる人は少なくなって、すれ違いは思ったよりは楽であった。日帰り下山者に紛れ込むように、
私も疲れた体に鞭打って、先に足を進めた。
ナナカマドの紅葉はこの数日でさらに落下速度を早め、第四雪渓はもう終焉。第三は美しかった
面影を残しつつも、やはりピークは過ぎていた。
第三雪渓を下から見上げる。
東峰斜面の紅葉がきれいだ。
奥の平。ややピークは過ぎつつもまだまだ美しい。
そしてやはりこれも予想通り、いまは銀泉台(第一花園)が一番の見頃であった。今年はとにかく状態がよく、
特にナナカマドの赤色が見事で、壁一面まっ赤である。意外にカメラマンが少なかったので、
私も撮ろうかと迷ったが結局一眼レフは出さなかった。この時間では光の加減で赤色が飛んでしまい、
撮影が難しい。やはりここは早朝写したい場所だ。
このブログの12月号の表紙に昨年度の同じ場所の写真が登場する予定だが、苦労して無理やり
望遠レンズで切り取った工夫を痛々しく思われるだろう。今年の条件なら、広角で全面真っ赤な写真が
撮れたに違いない。しかしながらせっかくのこの美しい紅葉も、もったいないことに台風と共に去りぬだろう。
今回はタイミングが合わず残念、また別の機会に持ち越しだ。
9月16日(土) 晴れ時々くもり
この日も未明から緑岳山頂へ出かける。先行した北海洋さんに追いつき、さらにしばらくしてOさん合流。
放射冷却で厳しく冷え込み、霜がすごかった。遠く高根ヶ原稜線で広範囲に白く輝いているのがすべて霜だと
わかり驚いた。あんなのいままで見たことなかった。
草に霜がびっちり。
この朝はトムラウシも見えていたが、薄いベールに包まれているようでくっきりとはいかない。
朝日も平凡。あとはもう、構図などで工夫するしかない。
真っ赤なウラシマツツジに白い霜が付いてきれいだった。
小屋近くのクモイリンドウの名残。これはこれでたたずまいが美しい。
戻ったら、あれだけあったテントのほとんどがすでに撤退済みだった。台風の接近を皆知っているので、連泊者は
おそらくゼロなのだ。
休憩後我々もテント撤収。北海洋さんとは別々の登山口に向け同時に出発。下山時刻に約一時間差がついた。
これがそのまんま体力差なのだ。
9月16日(土) 晴れ時々くもり
星空の下、緑岳山頂へ向かう。予想通り深い雲海が出ていた。少し遅れてOさん合流。
さらに深夜夜駆けして高原温泉から登ってきた旭川の北海洋さん合流。泊まり装備でこの速度。
一体どんな体力の持ち主なのだ、君は。
周辺のガスが多すぎてトムラウシは見えない。緑岳山麓のナナカマドの赤は見頃でとてもきれい。
ただダケカンバの黄色は少し遅れ気味。高原温泉沼めぐりコースの紅葉の見頃は少し先のようだ。
小屋直下の紅葉と白雲岳。ナナカマドはピークを過ぎて葉を落とし始めていた。
テントで休憩、朝食。北海洋さんはテント設営。
しばらくしてからOさん、北海洋さんと共に高根ヶ原方面へ散策に出かける。
今年は草紅葉の色付きが異常に早く、ウラシマツツジのほとんどがすでに黒ずんでいた。
ヤンベタップ源流部のナナカマドが見頃できれい。
「旅にしあれば・9月号」の表紙と同じ構図。この場所の草紅葉の色付きは、今年はやや精彩を欠いていた。
ヤンベタップ源頭部のナナカマドの赤がきれいで見頃だった。昨年度版の写真は、このあとこのブログ
10月号の表紙として登場する予定だ。
散策から帰ったら、覚悟していたとはいえ、テントサイトはご覧のような有様だった。三連休の初日、
しかも最終日は悪天候が予想され、まさに「この日しかない」状況なのだから止むを得まい。
最終的に66張りあったと聞いている。小屋も満員、トイレにも列ができ、できれば避けたい状況では
あったが、紅葉の見頃と天候を考えると、誰しもが今日を逃すわけにはいかなかったのだ。
【霧と紅葉~大雪山系緑岳から/2016.09.24撮影】
山際近くまで押し寄せていた雲海が、日の出直前からみるみる少なくなって、その引き際を望遠レンズで
捉えたのがこれらの写真だ。
上の写真、雲海から飛び出た三角形の小山のすぐ右が空沼で、その奥が高原沼付近である。
もしこの時点でその周辺で撮影できていたならば、すごく幻想的な場面に出会えていたことだろう
(ヒグマとの遭遇を避けるため規制され、入山時間が限られているので、早朝沼付近にいることは
不可能なのだが。でもガスに巻かれて撃沈の可能性も…)。 いずれにせよこの辺りにまで朝霧に
煙ることは滅多になく、やや精彩を欠く緑岳周辺の紅葉も、この部分のナナカマドはよく色づいて
いたので、いいところだけ望遠で切り取れたかもしれない。
下の写真は同じ頃の第二花畑方面。地味な写真ながら、自分では気に入っている一枚。