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未来を創る最高顧問の問題発言

2023-10-28 22:27:48 | 秋田のいろいろ
10月23日の佐竹敬久秋田県知事による、四国(特に愛媛県と高知県)の食べ物をけなす発言が全国的に問題になって、翌日に謝罪をすることになった。
秋田県民のひとりとして、発言内容には同意できないし、そういう発言をしてしまう人が秋田県知事であることが、情けなく恥ずかしい。四国と四国に関係する皆様に、県民としてお詫びします。
報道やネットでは、「(愛媛の)じゃこ天が貧乏くさい」部分だけが取り沙汰されている感じがするので、もう少し広い視点で雑感。24、25、26日付の秋田魁新報の紙面と電子版も参考にしました。

発言の場は、23日に秋田キャッスルホテルで開かれた、「秋田の未来を創る協議会」なる組織の設立会議。
協議会は、各界の代表者が一丸となって、秋田の活性化を目指す。秋田県商工会連合会会長(注・商工会議所ではなく商工会)が呼びかけ人、その他、県議会議員連盟会長、秋田大学学長、秋田商工会議所会頭(=辻氏)らが共同代表を務める。佐竹知事は最高顧問。
設立会議では、協議会へ期待することをテーマに、佐竹知事の講演が行われた。出席者(聴講者)は、県議会議員や県内の市町村長など、160人ほどいた模様。

四国をこき下ろす前後には、「秋田ほどうまいものあるところはない。」「さまざまな自然、あとは風、水、美人(男女問わず)」も秋田にあると発言。それらの価値を見極めて、伸ばしていかれるよう、秋田県人の思考を変えていくことが、協議会の最終目的である、みたいな内容。

「四国なんかね、もう大変ですよ。」と発言しているが、具体的に挙げたのは、愛媛のじゃこ天と酒のほか、高知県の「どろめ(※知らなかったが、イワシの稚魚)」のみ。【11月1日補足・酒については、あいまい。四国全体について言っているようにも取れるが、「知事会」とつなげているので、じゃこ天と同一の愛媛県の酒とも取れる言い方。】
香川県は「なんとね、普通のね、どこでも食えるようなね。」とあいまい。徳島県には言及はなし。
愛媛と高知に失礼なのは変わらないが、2県だけで「四国」とひとくくりにするのは乱暴。「東北」に置き換えてみれば分かるように。
そして、秋田では「自然、あとは風、水、美人」まで挙げているのに、四国では食べ物にしか触れていないのは、不公平だ。
佐竹知事は謝罪時に、四国には大きな企業があって、売り込みも積極的なので、うらやましさと、強気で来るという思いがあって、今回の発言に至ったと釈明した(食べ物とつながらないじゃないか)。食べ物以外では勝ち目がないから、食べ物だけ槍玉に挙げたととらえていいのでしょうね。

それら以前の話として、複数の報道によれば、10年前に愛媛県で行われた全国知事会では、食事にじゃこ天は出なかったという。じゃあ、自分で飲食店に入って注文したのかもしれないが、だったら、ステーキとじゃこ天を勘違いすることはないだろう。あと、出されたじゃこ天が「300円」とも発言しているが、どうして分かったのか?
この人は何を言ってるんだ? 作り話は「漫談」なら許されるかもしれないが、これは講演。

今回の講演は、食べ物をテーマにしたものではない中、個人の好き嫌いが大きい食べ物のみをネタとするのは、上手な構成ではないと思う。
そして、マスコミが取り上げるとは思わなかったのかもしれないが、だとしても、会場の160人の中に、四国出身者、身内や知人恩人が四国にいる人、四国が大切な土地である人もいるかもしれない。それを【11月1日補足・自分の発言で、聴講者が不快な思いをするかもしれないことを】思えば、うかつに四国をけなすことはできない(けなさないでおくほうが無難な)のは、75年も生きているのに、想像できなかったのだろうか。
【11月1日追記・2022年に問題となった「比内地鶏は硬い」発言は、大雨被害の支援を求める生産者団体との面会の場での発言。柔らかければ被害が生じなかったわけでもなく、ダメージを受けている人たちに対して急いで伝えることではない。相手の気持ちを考えない発言として、今回にも通じると思う。
なお、比内地鶏の硬さをなんとかするということは、新たな需要や販路の拡大としてあってもいいと思う。そうだとしても、農林部、畜産試験場、総合食品研究センター、県立大学など、秋田県側も率先して取り組むことができる課題であって、県知事が一方的に「硬い」と文句をつける立場ではない。】

そもそも、「秋田の未来を創る」時に、「他県をけなす」ことが必要だろうか。
そんなことをする人が、「最高顧問」を務める協議会に期待できるのか。辞するか、もしくは「最低顧問」に役職を替えてもらってはどうでしょう。
騒動で始まった「秋田の未来を創る協議会」が、良い成果を出してくれることを祈ります。


さて、言うまでもなく、四国4県にはいいものがたくさんある。3度しか訪れたことがないが、佐竹知事よりはたくさん挙げられそうだ。
温暖な気候、瀬戸内海の島々、雄大な太平洋、松山市を始めとする各県庁所在地のにぎわい、【29日追記・高知県などの南国情緒あふれる町や自然、】山間部の風景や文化、地域独特の農産物、お遍路さんの接待に由来するもてなしの心。
ちなみに、訪問中にイヤな思いをしたのは、高松市で、おそらく生まれて初めて35℃越えの気温を経験して参ったのと、JR予讃線に宇多津(うたづ)駅と多度津(たどつ)駅が近くにあってまぎらわしく、行ったり来たりしていたら高松と松山もこんがらがってしまったことくらい。

日本人ならたいていは知っているであろう「ポンジュース」も、JA系列「えひめ飲料」のブランド。秋田でもスーパーで見かけるが、ほかにJR東日本クロスステーション「acure made」ブランド限定販売のうんしゅうみかん100%ジュース「愛媛みかん」が、2021年から毎年秋冬に発売されている。※acureとPOMのダブルブランド商品。【29日補足・よく見かける「ポンジュース」はオレンジも使われているが、本品はミカンのみ。】
280ml180円、じゃこ天に比べると高いかな。でもおいしい
秋田駅を含むJR東日本の駅などの飲料自動販売機で「POM 愛媛みかん」が買える。
では、JR四国の駅で「秋田」の商品が何か買えるだろうか。

青森にはリンゴジュースなどを作る「JAアオレン」がある。ポンジュースの青森リンゴ版と言えよう。【29日補足・正式名称「青森県農村工業農業協同組合連合会」。】
25年前、弘前大学農学部の農業経済学分野の先生が「愛媛のポンジュースは誰でも知っている。でも(青森県外において)アオレンは… その違いは?」という話をされていた。佐竹知事が釈明した「四国は売り込みが積極的で強気」とかいうのは、間違いではないのかもしれない。
【29日補足・acureのリンゴジュースで、アオレンが製造する商品もあるが、acureのみのブランドになっている。リンゴジュースの加工量・販売量とも、国内トップ級だそうだが、ポンジュースより知名度は低いのが現状。「四国」のように、秋田の枠にこだわらず「東北」全体で未来を創ることも必要では?】

2024年1月には、東北のイオングループ店舗で、愛媛県フェアが開催された

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6 コメント

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25日の四国新聞で発言を知りました (うどん県民)
2023-10-30 22:19:44
新聞記事ではマイクを前にした知事の写真とともに『四国の食事「貧乏くさい」』と見出しがついていました。
こちらのブログによると、我がうどん県は被弾したのかしなかったのか微妙な立場です。でも、白いはんぺんにはない複雑な味わいが好みのじゃこ天を貧乏くさいと言われると、いい気はしません。確かにステーキやお造りのようなご馳走ではありませんが、生で食べても軽く焼いてもおいしいのに。
好意的に解釈すれば、お魚が嫌いなら四国の料理の良さは分からないのかもしれません。じゃこ天やどろめは魚ですし、高知の皿鉢料理は見た目が豪勢で貧乏くささとは対極にありますが、魚がダメだと厳しいでしょう。魚でなく肉を使った名物料理としては、鶏もも肉を使った香川の骨付鳥(鶏でなく鳥と書きます)がありますが、比内地鶏を「硬い」と言った知事だそうなので、骨付鳥の「おや」は硬くて食べられたもんじゃないと言いそうです(骨付鳥の「ひな」なら「おや」より軟らかいのですが)
しかし、じゃこ天を秋田県から注文する人が増えたという話をネットニュースで見て、あんな暴論を信じている人はいないんだと安心しました。

私の生活圏で秋田県産品を見かけたことがあるか考えましたが、あきたこまちが米売り場にあったかなという程度です。海産物も青森のホタテとか、東北地方でも太平洋側のサンマは買ったことがありますが、日本海側のものはなかなかお目にかかりません。正直言って浸透はしていない感じです。
青森県の先代の知事はトップセールスのためうどん県の大型スーパーでの青森フェアに来たことがありますが、秋田県知事も美味しい物の宣伝のために当地に来たらいいのに。でもこんな発言をしたら四国には行きづらくなるかもw
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お恥ずかしい限りです (taic02)
2023-10-31 20:01:58
おいしいかどうかでなく、貧乏くさいかどうかを判断基準にしてしまったことからして、ズレている気もします。食べ物なのだから、まずは味なのに。
そして、まあ味は人の好みだから仕方ないにしても、これはそれを越えた地域の伝統や文化を否定することにつながりかねず、時代遅れの発言と言わなくてはいけません。

香川といえば、讃岐うどんなわけですが、秋田の稲庭うどんと比べるとぐっと庶民的かつ薄味なだけに、この知事ならば何か言ってしまいそうなものですが… 個人的には讃岐うどんも稲庭うどんも、それぞれおいしいと思いますが。
魚や肉、カンキツ以外にも、和三盆やオリーブもありますね。

秋田は米ばかりでしょうね。最近はエダマメやシイタケに力を入れているのですが、出荷先は主に首都圏市場です。東北と四国の間には、大消費地・東京と大阪があって、心理的にも互いに遠い存在なのでしょう。
今日の報道では、首都圏で、秋田県と四国4県の合同物産展を開催する話が出てきました。東京もいいけれど、秋田や四国各県で、互いの特産を紹介しあえるイベントをやったらいいのにと思います。
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さらなるウソとまもるマスコミ (FMEN)
2023-11-02 23:45:59
なんか知事会ではステーキが出たとかいう話が出てきました。
もう格付けチェックでダメなやつ選んで映す価値なしになって浜田に貶されてるお笑い芸人みたい。
下手したら来年元日にステーキとじゃこ天とかネタにされそう。
成型肉偽装事件後に当てさせるクイズ出したことありましたから。

あと、この話題はさきがけとNHK秋田以外は四国や東京の民放がどんどん報じるのに秋田の民放はかなり大人しいですよね。
謝罪した時とかはさすがにやりましたがそこまで報じなかったし、続報も無し。
こうまで忖度しなきゃならないのかと。
バスの問題も市営バスの廃止から検証したり本腰入れて追求してるメディアが無く、除雪やゴミも市長の礼賛ばかりでした。
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その後 (taic02)
2023-11-03 22:23:06
じゃこ天の売り上げが増え、お互いの県民どうしは理解されているようなのは何よりですが。
全国知事会の宴席の費用って、どこから出ているのかと考えると、そんなに豪勢にするべきか、また別の疑問も出てしまいそうです。

魁の記者は、当日終了後に、発言の真意について知事に尋ね、撤回や謝罪の意志がないのを確認できていました(その翌朝に翻意)。
NHKはネットワークを活かして、愛媛の動きをよく拾っている感じです。欲を言えばじゃこ天以外の反応も知りたい気がします。
その他各マスコミは、元々の協議会設立会議自体、本腰を入れて取材できていなかったのかもしれません。最初だけ映して帰ってしまうような感じで。
たしかに、取材依頼があったところへ映しに行っているだけのようなニュースも少なくなく、取材者の人数も能力も足りていないのではないでしょうか。
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Unknown (SK)
2023-11-08 22:10:19
秋田県内には、四国の市町村と友好都市協定を結び、長年の交流をしてきている市町村もあります。
私も、そうした関係で四国の市を交流訪問したことがあります。
県知事には、市町村レベルでの市民交流の足を引っ張らないように、気を付けてもらいたいと思いました。
NHKの全国ネットで、ローカルニュースが放送される番組がありますが、それで知りました。
全国に流れて、"あっちゃー"と思いましたよ。ホント衝撃的でした。
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秋田と四国 (taic02)
2023-11-08 22:57:22
秋田県全体では、四国と活発な交流が盛んとは言えないですが、皆無ではないのは、知事ならば当然分かるはず。
仮に(秋田県民向けの)リップサービスのつもりだったとしても、だいぶ無神経な発言です。

秋田県民の反応や、四国各県の寛大な対応により、今回は、秋田県知事だけが悪者になって終わりそうなのが、せめてもの救いです。
これをきっかけに、四国と東北の交流が増えてほしいです。北海道や沖縄に比べると、四国をよく知らない東北人は多いですから。
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