今日12月20日は伊丹十三の9回目の命日になる。
伊丹十三について書かねばならない。彼はいつ死んでもいいように諦観はしていたから、いまさら書かなくても、女房がよく知っているからと天界から聞こえてくる。
が、けじめはつけねばならぬ。警察の正式発表は飛び降り自殺の断定であった。
証拠は、遺書が残されていたこと、飛び降りたビルの屋上はきれいで争ったあとが無かった。
他に他殺と見られる証拠が無い。
怠慢というべきか。9年前の師走に起きたどさくさに、他殺の明確な証拠が無いから自殺になるのか。
殺し屋は最初から自殺と見せかける計画を練っているから自殺の証拠だけを残していく。
遺書? 脅かされて時間稼ぎに書いたとしたら。 あるいは、強要されたとしても、緊迫の状況から客観的に殺人劇を楽しむように諦観して書いたとしたら。 その遺書には必ず妻にしか分からぬ暗号が書いてあったはずである。伊丹は、身の危険が及ぶことを察知しており、妻には何かあった場合の暗号を漏らしていたはずである。
プロの法医学者は言う。
自殺する時にお酒を飲んでから決行する人はいますが、飲む量はわずかですね。
ブランデーのような強い酒をボトル1本飲んで、したたかに酔ってから自殺する人はいません。このデータは多数の自殺例から分析されたものです。
伊丹は、司法解剖の結果、すきっ腹にヘネシーをボトル1本、体内に注入されている。
血液中におけるアルコール濃度の分析の結果、短時間で体内に入ったと推定される。ブランデー1本(度数40°)を短時間で開け、したたかに酩酊した人間が、一人で階段を登り、<争った跡が無く> さもしらふのように静かにフェンスを乗り越え落下したのである。
実際には、酩酊ではなくて短時間で多量のアルコールを摂取したことによる昏睡状態であったと推定される。
殺しの動機は? 憎しみと恨み。ミンボーの女で893の筋は怒髪天をついたといわれる。
結果、伊丹はナイフで襲われ、俳優の顔に重傷を負った。犯人グループは後に逮捕されたが、その後、伊丹にはマル暴の刑事がつくようになった。
邪魔者は消せ? 伊丹の次回作はカルト宗教がテーマであった。白日にさらされるのを嫌う闇の勢力。
さて、当時の、最後に伊丹がいた麻布の秀和マンション伊丹事務所に入ってみよう。
パソコンのデイスプレーが節電モードで暗くなっている。パソコンをクリックする。
突然、画面に宮本信子の笑顔の写真が現れた。犯行グループは組織的計画に従って決行された。
12月も押し詰まってきた頃、麻布の秀和マンション伊丹事務所に伊丹が一人いた。
佐川急便の偽装配達人によってベルが鳴らされ、伊丹がドアを開けたところ、他に隠れていた男2名(計3名)が押し入り、身を縛られ、殺気を感じた伊丹は、話をして相手を鎮めようとしたが、犯人グループには氷の意志があり、非人間的な冷酷さを直感した伊丹は、既にその時点で、死を覚悟した。
最後の時間稼ぎに遺書を書く提案をした。 犯人グループもその方が都合が良いと許した。
<噂の女性との身の潔白を、死んで証明します>という手書きの遺書が残された。
伊丹は当時写真週刊誌から女性スキャンダルを追いかけられており、近く週刊誌ネタになる予定であった。その身の潔白を証明するための自殺だとする遺書が残され、後日、警察からそのように公表説明された。
この遺書の内容が、どう読んでも一流のインテリの伊丹らしからぬ、三文歌詞であり、その文句の裏に隠すように陰湿的殺人を訴えるものであった。
女性スキャンダル問題は伊丹夫婦の間で既に話題になっており、伊丹は、芸能界だからね、少しは映画の宣伝になるかなと笑っていただけだったが、話の流れで、虫の知らせか、もし自分が殺されるようなことになったら、死をもって身の潔白を証明する、という遺書を残すシナリオを妻に伝えた。 それは、実際にはありえない話だから、そのような遺書が出てきたら、自分は自殺ではなく殺されたのだというメッセージ暗号であることを妻に示唆した。
これは良くできたシナリオだと自分でも気に入っていた、煙のような少しの不安と共に。
縛られた伊丹は、じょうごで口を割られ、ヘネシー(40°)を胃の中に流し込まれ、急速に昏睡状態に陥った。それからサーフボードバッグに入れられ、何食わぬ顔で部屋から出てきた犯人グループから屋上のフェンス越しに落とされ僅かな時間空中をさまよった。
遺書を書いたときに、パソコンに写し出し最後の別れをした妻、宮本信子の顔が寂しく笑っていた。
伊丹十三について書かねばならない。彼はいつ死んでもいいように諦観はしていたから、いまさら書かなくても、女房がよく知っているからと天界から聞こえてくる。
が、けじめはつけねばならぬ。警察の正式発表は飛び降り自殺の断定であった。
証拠は、遺書が残されていたこと、飛び降りたビルの屋上はきれいで争ったあとが無かった。
他に他殺と見られる証拠が無い。
怠慢というべきか。9年前の師走に起きたどさくさに、他殺の明確な証拠が無いから自殺になるのか。
殺し屋は最初から自殺と見せかける計画を練っているから自殺の証拠だけを残していく。
遺書? 脅かされて時間稼ぎに書いたとしたら。 あるいは、強要されたとしても、緊迫の状況から客観的に殺人劇を楽しむように諦観して書いたとしたら。 その遺書には必ず妻にしか分からぬ暗号が書いてあったはずである。伊丹は、身の危険が及ぶことを察知しており、妻には何かあった場合の暗号を漏らしていたはずである。
プロの法医学者は言う。
自殺する時にお酒を飲んでから決行する人はいますが、飲む量はわずかですね。
ブランデーのような強い酒をボトル1本飲んで、したたかに酔ってから自殺する人はいません。このデータは多数の自殺例から分析されたものです。
伊丹は、司法解剖の結果、すきっ腹にヘネシーをボトル1本、体内に注入されている。
血液中におけるアルコール濃度の分析の結果、短時間で体内に入ったと推定される。ブランデー1本(度数40°)を短時間で開け、したたかに酩酊した人間が、一人で階段を登り、<争った跡が無く> さもしらふのように静かにフェンスを乗り越え落下したのである。
実際には、酩酊ではなくて短時間で多量のアルコールを摂取したことによる昏睡状態であったと推定される。
殺しの動機は? 憎しみと恨み。ミンボーの女で893の筋は怒髪天をついたといわれる。
結果、伊丹はナイフで襲われ、俳優の顔に重傷を負った。犯人グループは後に逮捕されたが、その後、伊丹にはマル暴の刑事がつくようになった。
邪魔者は消せ? 伊丹の次回作はカルト宗教がテーマであった。白日にさらされるのを嫌う闇の勢力。
さて、当時の、最後に伊丹がいた麻布の秀和マンション伊丹事務所に入ってみよう。
パソコンのデイスプレーが節電モードで暗くなっている。パソコンをクリックする。
突然、画面に宮本信子の笑顔の写真が現れた。犯行グループは組織的計画に従って決行された。
12月も押し詰まってきた頃、麻布の秀和マンション伊丹事務所に伊丹が一人いた。
佐川急便の偽装配達人によってベルが鳴らされ、伊丹がドアを開けたところ、他に隠れていた男2名(計3名)が押し入り、身を縛られ、殺気を感じた伊丹は、話をして相手を鎮めようとしたが、犯人グループには氷の意志があり、非人間的な冷酷さを直感した伊丹は、既にその時点で、死を覚悟した。
最後の時間稼ぎに遺書を書く提案をした。 犯人グループもその方が都合が良いと許した。
<噂の女性との身の潔白を、死んで証明します>という手書きの遺書が残された。
伊丹は当時写真週刊誌から女性スキャンダルを追いかけられており、近く週刊誌ネタになる予定であった。その身の潔白を証明するための自殺だとする遺書が残され、後日、警察からそのように公表説明された。
この遺書の内容が、どう読んでも一流のインテリの伊丹らしからぬ、三文歌詞であり、その文句の裏に隠すように陰湿的殺人を訴えるものであった。
女性スキャンダル問題は伊丹夫婦の間で既に話題になっており、伊丹は、芸能界だからね、少しは映画の宣伝になるかなと笑っていただけだったが、話の流れで、虫の知らせか、もし自分が殺されるようなことになったら、死をもって身の潔白を証明する、という遺書を残すシナリオを妻に伝えた。 それは、実際にはありえない話だから、そのような遺書が出てきたら、自分は自殺ではなく殺されたのだというメッセージ暗号であることを妻に示唆した。
これは良くできたシナリオだと自分でも気に入っていた、煙のような少しの不安と共に。
縛られた伊丹は、じょうごで口を割られ、ヘネシー(40°)を胃の中に流し込まれ、急速に昏睡状態に陥った。それからサーフボードバッグに入れられ、何食わぬ顔で部屋から出てきた犯人グループから屋上のフェンス越しに落とされ僅かな時間空中をさまよった。
遺書を書いたときに、パソコンに写し出し最後の別れをした妻、宮本信子の顔が寂しく笑っていた。