夏休み期間に入り、「角川映画祭」で「時をかける少女」を取り上げた。8月27日(土)、やっと見ることが出来た。場所は角川シネマ新宿である。 ・・・まさかフィナーレ回になるなんて。 |
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思いつくまま、感想録
僕はこの作品を劇場で見た記憶はない。最後に見てから、おそらく20年以上経過している。今回初めて劇場で見た。自分の気持ちが揺れた。すぐにでも感想を書きたいと思ったが、おかしなことを書くといけないので、アップするのをちょっと待つことにした。
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記憶は曖昧だ。
本作を複数回レンタルビデオとTV放送で見ているはず。それなりにストーリーも入っているつもりでいた。でも、違った。
『こんなにモノクロのシーンが多かったか?
『こんなにペースのゆったりした作品だったか?
モノクロのシーンについてはかなり印象が強い作品だったが、それはあくまでもOPの雪山のシーンだった。でも、そうではなかった。
ゆったり感は、以前「エデンの東」を見た時と同じ。決して退屈なのではなく、スクリーンの中の登場人物と一緒に時間を過ごす感じだ。
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本作が公開時、僕はすでに学校の先生をしていた。
『こんなに男女が仲のいい学校があるかな?
そんなふうに感じたことを覚えている。
主人公の芳山和子(原田知世さん)のような無垢で古風な学生は、現在はもちろん、当時でも存在し(え)なかった。存在そのものがファンタジーかもしれない。舞台が尾道だからこそなのかもしれない。でも... そんなことを感じたのだ。
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原田知世さん
今回あらためてスクリーンの中の芳山和子を見た。和子は原田さんだと思った。ここ数年「1000年に1人」さんや「岡山の奇跡」さんが話題である。でも、芳山和子の原田知世さんの破壊力は、それらに勝るとも劣らない。
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ものがたり
本作は原田さんの第1回主演作。彼女の中学卒業から、高校入学までのおおよそ1ヵ月(1983年3月~4月)に撮影された。彼女のその時間を切り取った作品である。
正直に言えば、彼女の本作での演技はつたない感じもする。ものがたりも、和子をめぐる堀川吾朗・深町一夫の関係性は、当時でも現在でもなかなかないものだろう。もはや死語に近いがプラトニックな感じであり、現在の学園ドラマではあり得なそうだ。学校も家族も、出てくる人もみんないい人たちばかり。でも、いい作品である。彼女の演技は、はかなさを表し、彼女の何か未完成なものの美しさが際立っている。ストーリー展開も暖かみを感じる。
・・・不思議な映画である。
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覚えていたこと、忘れていたこと。
深町一夫の祖父役で上原謙さんがでている。
もう、知らない人も多いだろうが、加山雄三さんのお父さん。往年の二枚目スターである。これは覚えていた。
国語教師福島利男役で岸部一徳さんがでている。
30代半ばだろう。申し訳ないが、全然覚えていなかった。
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トリビアかな
本作の芳山和子は、1966(昭和41)年4月2日以降の生まれ。
1983(昭和58)年4月に高校2年生に進級。前年’82年4月高校入学。
・・・原田知世さんの実年齢よりも一つ上ということになる。
本作は芳山和子の1年生3学期(3月)のスキー合宿から、2年生に進級直後の4月16日(土)~18日(月)の間の、おおよそ1ヵ月を時間軸とした作品である。
ラストシーンで和子が深町一夫と再会したのは、11年後の1994(平成6)年のことになる。
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やっぱり名作だ。
僕は印象に残る映画とは、全編覚えているのではなく、何か特定のシーンの連続の形で記憶残るものだと思っている。だが、それ以上の要素が映画にはある。スクリーンの誰かが、時代を象徴することがあるのだ。
その人が意図しようとすまいと、場の空気感をガラッと変える。その人がものがたりにかかわると、何か「化学変化」が起きる。名作が生まれる最後で絶対不可欠の要素。本作ではそれが原田さんである。
劇場でもう見ることはできないのかな。