3月24日、獨協大学に出かけてきた。
松原団地駅で降りたのは、これが2回目。上野学園草加キャンパス(現在はもうない)に出かけた時以来だ。獨協大学は駅から歩いてすぐ。以前は駅から見えたように記憶していたのだが、あまりにも景色が変わっていて、ビックリした。
場所はここ
シンポジウムは、獨協大学の全学英語カリキュラム改革について、二つの国立大学(筑波大、茨城大)、国際基督教大学の英語カリキュラム状況発表。その後パネルディスカッションと盛りだくさん。
獨協大学の英語カリキュラム改革について、印象的だったことを書いておこうと思う。
この取り組み、時間がかかっている。獨協大学(以下「獨協」)が、全学英語カリキュラムの改善に着手したのはAY03(2003年度)である。
初年度は一部の学科を対象に、AY04からは外国語学部英語学科を除く全学に導入した。着手から3年目、学生満足度調査を実施したところ、先生たちが予測していたより、評価が低かった。これがさらなる改善へのドライブになっている。
AY06から、学生満足度調査をもとに英語授業の目的を、EGAP(English for General Academic Purposes)として明確化した。文部科学省GP事業指定がAY09である。そしてAY11が完成年度。足かけ9年間である。
高校レベルでもそうだが、授業(講義)は、担当者の知見、教え方により、うまくいく(高評価)場合、ふつう(可もなく不可もなく)の場合、うまくいかない場合、そしてどうにもならない場合がある。また、言うまでもないことだが、授業の正否(善し悪し)は、教える側だけでは決まらないものである。教師は授業を空席に向かい行うわけではない。学生の学習に向かう態度により、どのようにでも変化する。授業は教える方と、学ぶ方の共同作業である。でも、残念ながら、授業(=情報)の送り手と、受け手の枠からでない場合が、まだまだ多い。
授業担当者に、自分が授業で実現しようと考えたことができて、達成感がある。学生からもその授業が、自分の益となるいいものだと評価してもらえる。さらに、学内や第3者評価もそれなりに高い。そうなれば申し分ないが、なかなか世の中そうは問屋がおろさない。
この取り組みの特徴は、先生たちの年齢、経験年数、持っている知識のバックグラウンドすべてが違うことを、きちんと認識し、それを前提に、授業内容の平準化をはかったことである。平準化といっても、低きにあわせるということではもちろんない。学生たちにどうなってほしいか(学習者としてどんなレベルに到達してほしいか)を、Can Do Listという形で与えた上で、それを可能にする授業をめざす。そのための平準化である。少なくとも僕にはそう思えた。そのためには、授業内容の改善。学年進行であれば、引継ぎの改善。教材の統一化(規格化)が避けて通れない。でも、これを行うには、従来どおりの考え方、仕事の回し方ではどうにもならない。授業担当者のアイディアは人それぞれ。縛りをかけられることを、無条件・生理的にに嫌う傾向が教師にはある。間違いなく獨協でもそうだったと思う。だからこそ、改善が必要だったのだ。では、獨協はどうしたのか。
僕の好きな言い方ではないが、獨協の取組の成功要因の一つとしてあげていいものは、学校教育における顧客満足度(生徒アンケートの評価の低さ)という外圧だと思う。それを、授業内容改善、教材の統一化、その他諸々につなげた(使った)ことだ。教材を統一し、繰り返しになるが、学習者に到達してほしいレベルをCan Do Listという形で与える。それを可能にするための授業改善とは何か考え、計画を立て授業を動かす。言うのは(書くのは)簡単だが、できにくいことである。
全学部学科共通の英語授業(という商品)を、従前のように、個々の先生がそれぞれ努力をしてすすめることは、できないという現状認識。学生の達成感、満足感のばらつきを、より満足感が高いものにするという命題。小さな大学ならばともかく、獨協規模の大学では、何かしらの統一的な方針がなければならないという共通認識があると思える。
統一的な目標設置と、運営。それを具体化するには、教える先生たちの上(または、違う立ち位置)から、総合調整をする仕組みが必要になる。横のつながりではなく、総合調整的なポジションを作れるかどうかが、非常に問題であることがわかる。獨協ははそれができた。
よく学校は改革改善に時間がかかる。民間企業ではそうではないなどという、政治家諸先生のご意見を見たり聞いたりする。でも、それは嘘である。ホントにいいものにするには、獨協クラスの歴史と外国語教育の積み重ねがある場合でも、これだけの時間がかかるものなのだ。あるから時間がかかるのだということもあるかもしれない。しかし、過去の蓄積のない大学、学生の学力レベルが獨協ほどない大学では、これほどのカリキュラム改善はできなかっただろう。
時間がかかりすぎということではなく、全学のプロジェクトを動かすには、かくも大変なのことだ。非常に興味深い発表だった。
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地図入替(ほぼBlogzineで表示したものと同位置)
(以上訂正:2014/10/16)