「T&A master」2011年3月28日号(ロータス21)に,郡谷大輔「会社法雑話『第2回 震災と会社法』」があり,非常時における会社法上の問題について論じられている。
cf.
平成23年3月26日付「定時株主総会の開催時期について(2)」
上記の点に関しては,
「3か月以内に開催する旨の定款規定については,典型的にみられる平時には無意味で,有事には有害にしか機能しない定款規定の1つであるが,この定款規定に違反することとなるのは致し方ないとあきらめるしかない」とあり,もっともである。しかし,
「当該規定に違反して開催された株主総会について決議取消事由があると解したところで,定款期限よりも後れて決議されたものを取り消し,さらにその後に開催される総会で決議すべきという結論にはならないため,決議取消事由との関係では考慮する必要のない事情である」とある点は,当該株主総会の決議に基づく登記の申請は,決議の日から3か月を経過しないと受理されないという問題(商業登記法第25条第1項)が看過されている。
「こうした無益な定款規定は,将来の危機管理も含めて削除等所要の措置を検討すべき」とある点は,現実的にはなかなか受容され難いと思うが,個人的には同感するところである。
また,「組織再編行為等の延期」の項において,「株式の募集手続については,残念ながら効力発生日の変更の手続が盛り込まれていない」とあるが,登記実務上は,払込期日等の変更が許容される取扱いである。ただし,登記実務は,いわゆる善解理論に立っているので,会社法が正面から許容していない事項については,登記が受理されているからといって,有効であることが確定しているわけではないことは,留意すべきである。
「事態に直面している当事者においては,社会通念上あるべき姿,利害関係者にとって実質的に合理的な運営を心掛けて各種の処理を行っていただきたい」という言葉で結ばれている。肝に銘ずべきであろう。