「人生山あり 谷あり、ここが人生分かれ道」
というのは、その昔テレビで放送されていたタカラの人生ゲームのCM。
サイクリングも同様で平坦なところばかり走っていると脚力も十分につかず甘ったるい体のままということになるのかも知れない。
山や谷を走ることも必要だ。
富田林からの帰り道、泉北ニュータウンの〇〇台なる丘陵をいくつか越えてきた結果しんどい思いをしたものの脚力がつきはじめ、定例の往復になりつつあった実家との往復約40kmがちっとも辛くなくなってきたのだった。
「これなら折りたたみ自転車で橋本から和歌山まで走れそう」
と思ったのは今年の1月。
暖かいと思われる日を狙って朝から折りたたみ自転車DAHON K3を担いで南海電車で和歌山県橋本市へ向かった。
橋本市は高野山の玄関口であり大阪のベッドタウンでもある街で、そこそこ大きな街だ。
ここから紀の川に沿って西に走ると和歌山市へ出る。
サイクリングコースとしては非常に人気のあるところで、和歌山県も税金を投入して道標やコースを整備している。
Google Mapで事前に調べると南海高野線・JR線和歌山線橋本駅からJR阪和線和歌山駅までは約47km。
これまでの経験から走れない距離ではなさそうだ。
いつもの実家往復よりも10km程度長いだけ。
もしも途中で疲れてリタイヤしたければコースがJR和歌山線と平行しているので、どこか近場の駅から電車に乗ればいい。
そこは折りたたみ自転車のメリット。
いつでもどこでも手軽に小さくたたんで輪行袋でハイ電車、なのだ。
また和歌山市を起点にしなかったのにも理由があった。
これもGoogle Mapで調べてみると和歌山市と橋本市には標高差が100mある。
当然海辺の和歌山市のほうが橋本市より低い位置にある。
だから和歌山からだと上り坂になるが橋本市からだときっと下り坂で楽ちんだと思ったのだ。
しかし、これはアホな考えなのであった。
47kmで標高差100mしかない。
ほとんど意味のない標高差で実際は海に向かって走るコースでも甘いことはなく、途中上り坂あり下り坂ありで結構パワーが必要なのであった。
当日の計画では橋本駅を9時にスタートすれば正午前には和歌山駅に到着し、電車に乗ってランチは帰宅後自宅で、と考えていた。
47kmは2時間半ほどで走破できる距離だと思っていたのだ。
ところが、そこは折りたたみ自転車というハンディキャップを考慮に入れていなかった甘さがあった。
平坦な道は楽ちんだ。
しかし少しでも上り坂に差し掛かるとエネルギーが消耗する。
とりわけスタートして数キロメートルから始まる真田幸村ゆかりの九度山付近は上り坂が多く体力を消耗した。
私が「ハッハッハッ」と一生懸命踏み込んでノロノロと登坂している横をロードバイクのグループが力強く追い抜いていく。
高野山に登ろうかというようなツワモノのグループなのであろう。
また反対車線を高野山方面から軽快に下ってきて橋本・五條方面へ走り抜けるサイクリスト達がいる。
見ず知らずの私にもすれ違いの挨拶をしてくれるので私も挨拶を返す。
ハイキングですれ違うと「こんにちわ」といって挨拶するが、サイクリングでも同様であることを知った瞬間なのであった。
でももしかすると見るからにへばっていた私をからかっていたのではないか、と少し疑心暗鬼でもなくない。
それほど私は「ハッハッハッ」状態なのであった。
ということで14インチの折りたたみ自転車には酷であったようでJR和歌山駅に到着したのは正午を15分ほど過ぎたとき。
予定を30分以上もオーバー。
駅前でヘロヘロになってベンチに30分ほど腰掛けてしまったのは大きな計算違いであった。
自転車をすぐに折りたたんで輪行袋へ入れるのも面倒だったが、袋に入れないと帰れないのでゆっくりと折りたたみ自動改札機にぶつけないように担いでホームに向かった。
フラフラになったとはいえ、やはり初めてのコースを走るのは楽しい。
景色が新鮮。
しかもこの付近は自動車でも走るけれども自動車なら京奈和道を走ってしまうのでローカル感あふれる紀の川の土手や周囲の村の中を走るのは気持ちが良かった。
ただ計算違いも少なくなかった。
暖かい日、しかも大阪の南側の暖かいはずの和歌山北部のその日の気温はたったの5℃だった。
寒いのなんの。
少し休憩するとすぐに寒くなるし和歌山市内は猛烈な向かい風もあった。
もしかすると時期を誤ったような感じもなくはなかった。
帰宅後、暖かくなったら同じコースを再挑戦するつもりになったが、ただしK3ではなくクロスバイクを持っていこうと思った。
で、クロスバイクを持っていくくらいなら和歌山まで自走すればいいじゃないか、との思いに至ったのはこのときなのであった。
つづく