非常事態宣言が出された前日の月曜日。
私はどうしても直接打ち合わせしなければならない微妙な仕事があり大阪から横浜へ向かったのであった。
このままでは首都圏への出張が難しくなるに違いない。
「え〜、こんな時に行くの〜!何考えてるん!」
という家族の心配を振り切って無理矢理の決断だった。
いつもなら飛行機で関空から羽田に飛んで、そこからリムジンバスか京急で移動する。
だがこの日は違った。
相手との打ち合わせ以外に誰とも接触したくない。
だから新横浜駅前で打ち合わせすることにして新幹線で行くことにしたのだ。
最寄りの駅から乗った関空快速はガラガラ。
途中の駅で乗客が乗り込んできたものの大阪駅に到着した時点でも立っている乗客の姿はほとんどいないような状態だった。
大阪駅からJR京都線の長浜行きの新快速に乗り換えた。
流石に神戸、大阪、京都を結ぶ大動脈ということだけあって乗客数は少なくなかった。それでも立っている乗客は数えるほどしかいなかったのだ。
新大阪駅に着くと状況はさらにびっくり。
在来線と新幹線を結ぶ広大なコンコースは人影もまばら。
たくさんある売店の店員さんたちも手持ち無沙汰な感じで数少ない行き交うひとを見ている。
スマホを取り出してエキスプレス予約のサイトに接続。
大阪〜東京は月に何度か移動するのだがいつも飛行機なので新幹線は久しぶり。
パスワードを忘れていて少々慌てた。
ちょこっとばかし手こずったあとやっとのことでサイトに接続して電車を選び、席を確保しようとしたらガラガラなのであった。
15分後ぐらいに発車する列車なのに一両に数人しか乗っていないようなのだ。
実際に乗車してみるとそれよりは多少マシだったが時間的なこともあり1両に10人程度しか乗っておらず、このような新幹線は生まれて初めてであった。
いや、ひかり号のグリーン車にたまたま乗った時以来だったろう。
新横浜駅前での打ち合わせも終わり、帰りの新幹線に乗ったは午後7時頃。
いつもなら名古屋や関西方面に向かう乗客で満員の車内は、やはり来た時と同じように10人ほどしか乗車しておらずガラガラ。
横浜焼売弁当を買っていたら誰が臭いの原因なのか。
すぐに突き止められるような状況なのであった。
列車は岡山行きだったが名古屋から乗ってくる人は殆どおらず、10人程度が乗っている状態のまま新大阪に到着した。
空いていて楽だったがあまりのガラガラさに不気味なものを感じずにはおれなかった。
一昨日の日経新聞にJR東日本が鉄道事業の収益に関して危機的状況に陥っているというようなことが書かれていた。
鉄道は3割乗車率が落ちると事業の収益性に大きな影響が出てくるのだという。
もともと安定したインフラとして事業計画がなされており、いきなり乗降客が減ってしまうということは想定に入っていないそうだ。
そのため首都圏を主な収入源とするJR東日本は都内とその近郊線の極端な落ち込みで苦境に立たされているという。
JR西日本にしても同じ状況で大阪とその近郊路線の落ち込みは大きな経営上の課題を提示するのだろう。
東海道新幹線を運営するJR東海は本州3社のうちでも最も収益率が高い会社ではあるが、その収益の8割は東海道新幹線が担っているという現実があった。
名古屋圏は首都圏や関西圏ほどJRにとっては魅力的な市場ではないのかもしれない。
名鉄と近鉄の市場なのだ。
その優等生なはずなJR東海の大黒柱である東海道新幹線が乗客の激減で大赤字路線となっている。
こんなことは1964年の開業以来初めての出来事に違いない。
JR東海のプロジェクト。
リニア新幹線。
これはJR東海の投資だけで建設すると言っていたほど、その膨大な建設資金を新幹線は稼いでいた。
その資金が絶たれた今、リニアはどうなるのか。
そもそも静岡県内の工事認可が環境問題で下りないばかりかJR東海の強引なやりかたに静岡県知事はJRトップとは会わないし県庁への出入りもお断りというスタンスだという。
工事は途中でできない状態になっていた。
そもそも新幹線の5倍の電力を消費して、アルプスの山々の未知の部分を突き進む。
どのような環境上の影響がでるかわからない状態での工事だった。
また新幹線とはレールの互換性もなく、走行するために発生する強力な地場の人体への影響は負な噂しかまったくなく研究にしても途上だという。
しかもコロナ後に新幹線の利用がもとに戻るとは限らない。
仕事のかなりのパーセンテージがリモートワークで済むとわかった企業の出張移動が減少に向かうことも考えられる。
出張よりも経営の立て直し。
出張よりも研究開発、市場開拓、という方が適切な投資だと知るかも知れない。
リニア新幹線は中止。
五輪以上にあり得る可能性に思えるがどうだろう。