大阪中之島にある国立新国際美術館で開催中の「バベルの塔展」を鑑賞してきた。
この春先にここを訪れた時にポスターを見て、是非訪れてみたいと思っていた展覧会なのであった。
バベルの塔展といっても、バベルの塔関連の作品ばかりが集められているわけではなく、バベルの塔はたった一枚だけ。
今回の展覧会の最大の見ものであるブリューゲルのバベルの塔が展示されているだけで「バベルの塔」展という名称が付けられた商売上手な展覧会なのであった。
最近の文化施設はアミューズメントパークと同様、商売のセンスを求められているようだ。
一方、バベルの塔以外の大部分の作品は宗教画の数々で埋め尽くされていた。
宗教画は正直なところ苦手だ。
宗教画があると気が滅入ることが少なくなく、いくら技巧が優れていても、そこはファンタジーの世界と同じなので感動はほとんどない。
但し、その中に精神的なものを見ると俄然楽しくなるのだが、そういう宗教画は少ない。
さて、バベルの塔。
実際にあったのかどうかは分からないが、天にも届くような高い建築物を作ろうとしたため人類は神様の怒りをかって「言葉はバラバラにされる(=外国語の誕生)」「衝突は起こる」「結局完成しない」といった大変な災厄が降り掛かったという。
この物語のモデルになったという建物の遺構は現在も残っており、実際に失敗した建築プロジェクトに妙な「お話」が付け足されたというのがバベルの塔なのだろうと思った。
先日読んだ高層建築の本でも高さが数十メートルに及ぶ建物は紀元前からも作られていたことが書かれていて、例えばアリストテレスが生きていたギリシャ時代のギリシャの街は3階建ての木造のビルディングが建ち並んでいたそうだ。
我が日本でも1000年前に建てられた出雲大社の本殿は高さ50m以上であったことが分かっており、一説には100m弱であったとも言われている。
現存する日本の古代高層建築物は奈良東大寺の大仏殿で高さ49.1m。
天平時代に建てられた初代大仏殿は90m弱あったというのだから、科学技術の発達したイラクではバベルの塔のようなものも可能であったのかもわかない。
展覧会ではこのフリューゲルのバベルの塔展ではその絵から想定された高さが記されていた。
高さ510m。
東京スカイツリーやアラブ首長国連邦のブルジュ・ハリファと比べると低いものだが、それでもその高さはなかなかである。
人々の想像を掻き立てるバベルの塔。
殆どが宗教画の展示であってもそのイメージの基本形となっているフリューゲル作「バベルの塔」の現物が見られるだけでもかなりの価値のある展覧会であることが間違いない。
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